発表年:2011年
ez的ジャンル:Brainfeeder系天才ジャズ・ピアニスト
気分は... :彼が生きていれば・・・
今回は22歳の若さで逝去した天才ピアニストAustin Peraltaの遺作『Endless Planets』(2011年)です。
Austin Peralta(1990-2012年)はL.A.出身のジャズ・ピアニスト。
彼の父は70年代に活躍した伝説のスケートボーダーStacy Peralta。Stacyは90年代以降はドキュメンタリー・フィルム作家となっています。
そんな父を持ち、L.A.の自由な空気の下で育ったPeraltaは、6歳でピアノを弾き始めます。2006年には15歳の若さでデビュー・アルバム『Maiden Voyage』をリリースし、天才ピアニストとして注目されます。さらに同年に2ndアルバム『Mantra』もリリースしています。
この若き天才に惚れ込んだのが、Brainfeederを主宰するL.A.ビートミュージックの雄Flying Lotus。
故John Coltraneの妻であり、ジャズ・ミュージシャンとしても活躍したAlice Coltraneを叔母に持つという"ジャズDNA"を持つFlying LotusがPeraltaをBrainfeederに迎え入れます。
そしてBrainfeederからリリースされたPeraltaのリーダー作が本作『Endless Planets』(2011年)です。しかしながら、本作リリースの翌年11月21日、Peraltaは22歳の若さで急逝してしまいます。結果として、『Endless Planets』はPeraltaの遺作となってしまいました。
プロデュースはAustin PeraltaとPaul Pesco。また、Flying Lotusもエグゼクティブ・プロデューサーとして名を連ねています。
レコーディングにはAustin Peralta(p、el-p、ss)以下、Zane Musa(as)、Ben Wendel(ss)、Hamilton Price(b)、Zach Harmon(ds、tabla)、Strangeloop(electronics)、Heidi Vogel(vo)、The Cinematic Orchestra(electronics)が参加しています。
ラストの「Epilogue: Renaissance Bubbles」以外はライブ・レコーディングであり、Brainfeederだからといってビートミュージックしている訳ではなく、しっかりジャズしています。その意味ではBrainfeederにとっても、ビートミュージック以外の方向を示したエポック・メイキングな1枚と言えるかもしれません。
ただし、エレクトロニクス・マニピュレーターとしてStrangeloopを起用しているように、曲間にエレクトロニクスなエッセンスを散りばめている点も興味深いです。ちなみにジャケのアートワークもStrangeloopによるものです。
本作を聴けば聴くほど、彼が生きていてFlying Lotus、Thundercat、Kamasi Washingtonらと共に、BrainfeederやL.A.ジャズを牽引していたならば・・・と思うと残念でなりません。
この若き天才のプレイを忘れないためにも、ぜひ聴いて欲しい1枚です。
全曲紹介しときやす。
「Introduction: The Lotus Flower」
美しいイントロダクション。ここでのPeraltaはピアノに加えて、ソプラノサックスもプレイしています。
https://www.youtube.com/watch?v=pbGI4a2ZpUQ
「Capricornus」
Peralta自身がその影響を認めているMcCoy Tynerばりのピアノタッチが印象的な1曲。Zane Musaのサックスをはじめ、他メンバーの演奏も実にスリリングでハイ・テンションです。
https://www.youtube.com/watch?v=6E3WyWiWnUM
「The Underwater Mountain Odyssey」
モーダルなスピード感で一気に駆け抜けます。ここでもPeraltaとZane Musaのプレイが聴く者を圧倒します。
https://www.youtube.com/watch?v=xiQSjq7ZtzQ
「Ode To Love」
ミステリアスな美しさを持ったPeraltaのピアノを存分に楽しめる1曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=Tmi97Qkt4cQ
「Interlude」
小粋なインタールード。
「Algiers」
本作のハイライトはこの演奏かもしれません。タブラも加わった神秘的なエスニック感には、L.A.ジャズの首領Carlos Ninoあたりとの接点も妄想してしまいます。
https://www.youtube.com/watch?v=DipaQNHewXw
「Epilogue: Renaissance Bubbles」
ラストはPeraltaのフェンダー・ローズに、Heidi Vogelのヴォーカル、The Cinematic Orchestraによるエレクトロニクスが加わった幻想的な演奏で締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=wO61gg1xnoQ
『Maiden Voyage』(2006年)
『Mantra』(2006年)