発表年:2016年
ez的ジャンル:先鋭ジャズ・ユニット系R&B/Hip-Hop
気分は... :豪華ゲストは無用!
今回はRobert Glasper Experiment、待望の新作『ArtScience』です。
"今ジャズ"をリードするピアニストRobert Glasper率いる先鋭ジャズ・ユニットRobert Glasper Experiment(RGE)に関して、これまで当ブログで紹介した作品は以下の4枚。
『Double Booked』(2009年)
『Black Radio』(2012年)
『Black Radio Recovered: The Remix EP』(2012年) ※リミックスEP
『Black Radio 2』(2013年)
さらに、Robert Glasper、Derrick Hodgeの以下の3枚のアルバムも紹介済みです。
Derrick Hodge『Live Today』(2013年)
Robert Glasper『Covered』(2015年)
Miles Davis & Robert Glasper『Everything's Beautiful』(2016年)
今年に入り、Miles Davisとの共同名義によるMiles Davis & Robert Glasper『Everything's Beautiful』、本作と同時期にRobert Glasperが音楽を手掛けたDon Cheadle監督・主演のMiles Davisの伝記映画『Miles Ahead 』のサントラ、そして本作とほぼ同時期にリリースされたDerrick Hodgeの2ndソロ
『The Second』と各メンバーの活動が活発化していたRGE。
Original Soundtrack『Miles Ahead 』(2016年)
『The Second』(2016年)
そんな中で、いよいよ本隊RGEの最新アルバムが届けられました。本作のメンバーは前作『Black Radio 2』と同じくRobert Glasper(p、key、vo)、Derrick Hodge(b、vo)、Casey Benjamin(vocoder、key、vo、sax)、Mark Colenburg(ds、vo)という4名。
メンバー以外の参加はジャズ・サックス奏者Oliver Lakeの息子でRGE作品の常連Jahi Sundance(turntables)、Mike Severson(g)のみです。
豪華ゲスト陣が話題となった『Black Radio』、『Black Radio 2』とは対照的です。
『Black Radio』シリーズでジャズ界のトップ・ランナーに躍り出た先鋭的ジャズ・ユニットRGEですが、ゲストに頼らない本作こそRGEの真価が問われる1枚かもしれませんね。
内容自体は『Black Radio』シリーズと同じく、ジャズ・リスナーではなく、R&B/Hip-Hopリスナー向けの1枚だと思います。
僕の場合、豪華ゲストなしでも十分楽しめました。Mark ColenburgのドラミングでRGEらしさ、今ジャズらしさを実感しています。あとはCasey Benjaminのヴォコーダーにもホッとします。
『ArtScience』Album Trailer
https://www.youtube.com/watch?v=Ju8tswtmTvg
『Black Radio』ほどのインパクトはありませんが、Robert Glasper Experimentの本質に迫ることができる1枚なのでは?
全曲紹介しときやす。
「This Is Not Fear」
Casey Benjamin/Mark Colenburg/Robert Glasper/Derrick Hodge作。王道ジャズ・ユニットのようなスリリングな演奏で始まりますが、途中からJahi Sundanceのターンテーブルも交えたHip-Hop経由ジャズ・ユニットらしいサウンドに様変わりします。タイトルには全米各地で頻発している人種問題への問題提起が込められている模様です。
「Thinkin Bout You」
Robert Glasper/Derrick Hodge/M.Ayers作。ここではGlasper自らがヴォーカルをとる家族愛を歌ったラブ・ソング。ColenburgのドラミングがRGEらしくていいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=uUf28dg1yNQ
「Day To Day」
Casey Benjamin作。Casey Benjaminがヴォーカルをとる『Black Radio』路線のディスコ・ファンク。キャッチーさでいえば、アルバムで一番かもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=YjQxpPkeQRI
「No One Like You」
Casey Benjamin/Robert Glasper作。Caseyのヴォコーダー・ヴォーカルが栄えるRGEならではのアーバンなR&Bに仕上がっています。Caseyはヴォーカルのみならずサックスでも盛り上げてくれます。こういう演奏でも僕の耳はまずColenburgのドラミングを追ってしまうのですが(笑)
「You And Me」
Casey Benjamin/Mark Colenburg/Robert Glasper/Derrick Hodge作。Caseyのヴォコーダー・ヴォーカルがリードするメロウ・バラード。
「Tell Me A Bedtime Story」
Herbie Hancock作。オリジナルは当ブログでも紹介した『Fat Albert Rotunda』>(1969年)に収録されています。やはりGlasperはHerbie Hancockからの影響が大きいのでしょうね。本作を聴いた後にHancockの『Sunlight』(1978年)あたりを聴きたくなります。
「Find You」
Casey Benjamin/Mark Colenburg/Robert Glasper/Derrick Hodge作。この曲ではDerrick Hodgeがヴォーカルを務めます。デジタル・ワールドのジャズ・サウンドって雰囲気です。Mike Seversonのギターも炸裂します。ラストはGlasperの愛息Rilley君のおしゃべりで締め括ってくれます。
「In My Mind」
Mark Colenburg/Robert Glasper作。先鋭ジャズ・ユニットらしいセッションを楽しめます。ある意味、こういうのが一番RGEらしいのでは?
「Hurry Slowly」
Casey Benjamin作。Benjaminのヴォーカル&サックスが主役です。『Black Radio 2』収録の「Lovely Day」(Bill Withersの名曲カヴァー)あたりと一緒に聴きたくなりますね。
「Written In Stone」
Casey Benjamin/Robert Glasper/Jahi Sundance/R.Coleman作。『Black Radio』からの進化を感じるファンク・ロック調の骨太な仕上がり。Mike Seversonのギターが効いています。
「Let's Fall In Love」
Derrick Hodge/Matt Vorzimer/Aaliyah Niambi作。Glasperがエフェクト・ヴォーカルが深遠なエレクトリック・ソウルへ誘ってくれます。
「Human」
Jimmy Jam/Terry Lewis作。The Human League、Jam & Lewisプロデュースによる1986年の大ヒット曲をカヴァー。オリジナルはアルバム『Crash』(1986年)に収録されています。てっきり僕は当ブログで『Crash』を紹介済みだと思っていたのですが勘違いでした。この曲自体がRGE向きですよね。選曲の妙だと思います。Benjaminのヴォコーダー・ヴォーカルが栄えます。
「Summer Breeze」
国内盤ボーナス・トラックとして、Seals & Croftsのヒット曲(James Seals/Dash Crofts作)のカヴァーが追加収録されています。RGEは当ブログでも紹介したIsley Brothersヴァージョン(アルバム『3+3』収録)を意識しているのでは?
Robert Glasper Experimentやメンバーの過去記事もご参照ください。
Robert Glasper『Double Booked』(2009年)
Robert Glasper Experiment『Black Radio』(2012年)
Robert Glasper Experiment『Black Radio Recovered: The Remix EP』(2012年)
Derrick Hodge『Live Today』(2013年)
Robert Glasper Experiment『Black Radio 2』(2013年)
Robert Glasper『Covered』(2015年)
Miles Davis & Robert Glasper『Everything's Beautiful』(2016年)