2016年11月03日

Till Bronner『Rio』

"現代のChet Baker"によるボサノヴァ作品☆Till Bronner『Rio』
Rio
発表年:2008年
ez的ジャンル:イケメン・ジャズ・トランペッター系ボサノヴァ
気分は... :クールなボサノヴァの誘惑・・・

今回は"現代のChet Baker"、ドイツ人イケメン・ジャズ・トランペッターTill Bronnerが2008年にリリースした『Rio』です。

1971年ドイツ、フィーアゼン生まれのジャズ・トランペット奏者Till Bronnerの紹介は、『Blue Eyed Soul』(2002年)に続き2回目となります。

本作『Rio』は、タイトルの通り、ブラジル、リオと米国L.A.でレコーディングされたボサノヴァ・アルバムです。取り上げた楽曲はすべてブラジル人アーティストの作品です。

タイトルを考慮すると、リオ五輪の前後に紹介すると良かったのかもしれませんが、本作は夏という秋が似合う気がしたので・・・

プロデュースは、かつてはJoni Mitchellの公私のパートナーであり、現在は当ブログでお馴染みのブラジル出身の女性ジャズ・シンガーLuciana Souzaの旦那様であるLarry Klein

Larry KleinがLuciana Souzaが結婚したのが本作の前年の2007年であり、彼の関心がブラジルへ向かっていたのも、本作『Rio』に大きく影響しています。

アルバムにはMilton NascimentoAnnie LennoxVanessa Da MataAimee MannLuciana SouzaSergio MendesMelody GardotKurt Ellingといったアーティストがフィーチャリングされています。

レコーディングにはTill Bronner(tp、vo)以下、Fabio Torres(p)、Marco Pereira(g)、Nelson Faria(g)、Larry Goldings(org)、Marcelo Mariano(b)、Edu Ribeiro(ds)、Marcos Suzano(per)、Paulinho Da Costa(per)、Paulinho Da Costa(per)が参加しています。

特にブラジル人アーティストの参加には、ボサノヴァの偉大なアーティストWalter Santosを父に持つLuciana Souzaの人脈が役立った模様です。

Till自身は本作を有名なブラジル人アーティストとの共演によるありきたりなボサノヴァ名曲集にはしたくなかった模様です。その意味では、偉大なボサノヴァDNAを受け継ぎつつ、ジャズ・アーティストとして活躍するLuciana Souzaをパートナーに持つLarry Kleinと組んだのは正解でしたね。

Annie LennoxAimee MannMelody GardotKurt Ellingといったフィーチャリング・アーティストの起用にも本作の狙いが窺えます。

自身がヴォーカルをとる曲やインスト曲以外は、自身のトランペットも控えめで、あくまで演奏の一部に徹し、全体のバランス重視のスタンスも好感が持てます。

アルバム全編充実していますが、「O Que Sera」「Once I Loved (Amor Em Paz)」「Evening (Tarde)」「Ela E Carioca」「High Night(Alta Notie)」「Sim Ou Nao」「Bonita」「Aquelas Coisas Todas」あたりが特にオススメです。

Till Bronnerの美学が貫かれた、素敵なボサノヴァ・アルバムです。

全曲紹介しときやす。

「Misterios (Mysteries)」
Joyce/Mauricio Maestro作。Milton NascimentoAnnie Lennoxをフィーチャー。Lennoxのパンチの効いたヴォーカルとMiltonの憂いを帯びたヴォーカルのコントラストが面白いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=VKpVdMU0fKs

「O Que Sera」
Chico Buarque作。ブラジル人女性SSWのVanessa Da Mataをフィーチャー。ボッサ好きの人が安心して聴ける1曲。Tillのトランペットもクールでいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=-8zZJIxEiMg

「So Danco Samba」
Antonio Carlos Jobim/Vinicius de Moraes作。お馴染みのボサノヴァ名曲をTill自身が歌い上げます。"現代のChet Baker"、Tillの線の細い歌声は確かにボサノヴァ向きかもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=NvmqDD5he-c

「Once I Loved (Amor Em Paz)」
Antonio Carlos Jobim/Vinicius de Moraes作。Aimee Mannをフィーチャー。彼女はかつて'Til Tuesdayのメンバーでもあった女性ロック・シンガー/ギタリスト/ベーシスト。ボサノヴァのイメージが湧かない彼女のようなアーティストの起用も本作の狙いの1つかもしれません。その狙いは的中し、少しコケティッシュにボサノヴァ名曲を抑えたトーンで歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=XS7P3BAogds

「Evening (Tarde)」
Milton Nascimento/Marcio Hilton Fragoso Borges作。Milton NascimentoLuciana Souzaをフィーチャー。Luciana Souzaが参加していることもあり、Larry Kleinプロデュースらしいボッサ・ジャズを楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=Tmx1Fm00t6Q

「Ela E Carioca」
Antonio Carlos Jobim/Vinicius de Moraes作。Sergio Mendesをフィーチャー。さり気ないですが、実にスマートな仕上がりです。ジャケでポーズをキメるTillのスタイリッシュな雰囲気にマッチした1曲だと思います。

「High Night(Alta Notie)」
ブラジリアン・ロック・バンドTitasの元メンバーであり、Marisa MonteCarlinhos Brownとのスーパー・トリオTribalistasでも知られるArnaldo Antunesの作品です。当ブログでも取り上げたMarisa Monte『Verde Anil Amarelo Cor de Rosa e Carvao(英題:Rose and Charcoal)』(1994年)で有名になった楽曲です。ここではUS女性ジャズ・シンガーMelody Gardotをフィーチャー。ボサノヴァ感は全くない演奏ですが、Melody Gardotの魅力が栄える素敵なフォーキー・ジャズに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=FJXL9H93UUI

「Cafe Com Pao」
Joao Donato/Lysias Enio de Oliveira作。Till自身がヴォーカルをとります。Marcos SuzanoとPaulinho Da Costaの2人が活躍するパーカッシヴな演奏でアルバムにアクセントをつけています。

「Ligia」
Antonio Carlos Jobim作。Tillのトランペットを堪能できるインスト・バラード。
https://www.youtube.com/watch?v=E3cDE3RYeko

「Sim Ou Nao」
Djavan作。US男性ジャズ・シンガーKurt Ellingをフィーチャー。Kurtの少し憂いを帯びた語り口がDjavan作品とよくマッチしています。
https://www.youtube.com/watch?v=xjK78JnroJo

「A Ra」
Joao Donato作。Donatoの名曲を軽やかに演奏します。Larry & Luciana夫妻がバック・コーラスを務めています。
https://www.youtube.com/watch?v=jDElJZqGPrQ

「Bonita」
Antonio Carlos Jobim作。"現代のChet Baker"、Tillのヴォーカルの魅力を楽しめるボッサ・バラード。
https://www.youtube.com/watch?v=1aoU3dEdADE

「Aquelas Coisas Todas」
Toninho Horta作。オリジナルは当ブログでも紹介した『Terra dos Passaros』(1979年)に収録されています。Luciana Souzaをフィーチャー。本編のラストはクラブジャズ好きの人もグッとくるであろうダンサブルなブラジリアン・グルーヴに仕上がっています。

僕が保有する国内盤には「I'll Never Fall In Love Again」「This Guy's In Love With You」という2曲のBurt Bacharach/Hal David作品がボーナス・トラックとして追加収録されています。本編とは全く異なる雰囲気ですが、コレはコレで楽しめます。

他のTill Bronner作品もチェックを!

『Generations of Jazz』(1993年)
Generations of Jazz

『My Secret Love』(1995年)
My Secret Love

『German Songs』(1996年)
German Songs

『Midnight』(1997年)
Midnight

『Love』(1998年)
Love

『Chattin with Chet』(2000年)
チャッティン・ウィズ・チェット

『Jazz Seen』(2001年)
Music from 'jazz Seen'/Vrv

『Blue Eyed Soul』(2002年)
Blue Eyed Soul

『That Summer』(2004年)
ザット・サマー

『Oceana』(2006年)
Oceana - New Edition

『At The End Of The Day』(2010年)
At the End of the Day

『Till Bronner』(2012年)
Till Bronner

『The Movie Album』(2014年)
The Movie Album

『Best Of The Verve Years』(2015年)
Best Of The Verve Years

『The Good Life』(2016年)
GOOD LIFE
posted by ez at 03:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック