発表年:2016年
ez的ジャンル:新世代ジャズ・トロンボーン奏者/シンガー・ソングライター
気分は... :ジャズよりロック強めで・・・
今回は新作から新世代ジャズ・トロンボーン奏者/シンガー・ソングライターCorey Kingの初ソロ作品『Lashes』です。
Corey Kingはテキサス州ヒューストン出身。
2004年にN.Y.のニュースクール大学に入学し、気鋭の日本人トランペッター黒田卓也らと交流を持つようになります。
これまで今ジャズからR&B、Hip-Hopまで幅広いジャンルのアーティストと共演したり、レコーディングに参加しています。
例えば、当ブログで紹介した以下の作品にCorey Kingの名がクレジットされています。
Erimaj『Conflict Of A Man』(2012年)
Jose James『No Beginning No End』(2013年)
Derrick Hodge『Live Today』(2013年)
Christian Scott『Stretch Music』(2015年)
Esperanza Spalding『Emily's D+Evolution』(2016年)
この5枚のリストを見ただけで、Corey Kingに興味を持つ人も多いのでは?
そんなCorey Kingの初ソロ作品が『Lashes』です。全8曲35。フル・アルバムと呼ぶには少し尺が短い感じもしますが・・・
本作ではジャズ・トロンボーン奏者としての顔ではなく、シンガー・ソングライターCorey Kingとしての顔を前面に打ち出した作品になっています。
レコーディング・メンバーが強力です。Corey King(vp、el-p、programming、syn、tb)、Matthew Stevens(g)、Alan Hampton(b)、Vicente Archer (b)、Jamire Williams(ds)、Justin Tyson(ds)という今ジャズ好きならば、グッとくるミュージシャンの名が連なります。
Alan HamptonやJamire Williams(Erimaj)は作品を当ブログでも紹介済みのアーティストです。
Matthew StevensはJamire Williams、Kris Bowers、Ben Williamsらも参加する若手ジャズメンのオールスター・ユニットNEXT Collectiveのメンバーとしてお馴染みですね。最近ではEsperanza Spalding『Emily's D+Evolution』でのプレイが印象的でした。
Vicente Archer はRobert Glasperの『Canvas』(2005年)、『In My Element』、『Double Booked』(2009年)、『Covered』(2015年)への参加で知られるベーシストですね。
期待の新進ジャズ・ドラマーJustin TysonはCorey King、Matthew Stevensと共にEsperanza Spalding『Emily's D+Evolution』に参加していました。
そんな強力メンバーたちが生み出した音は、ジャズというよりインディー・ロック的な印象の作品に仕上がっています。哀愁ヴォーカル&サウンドが印象的ですね。
このあたりはCorey KingがNirvana、Radioheadといったロック・アーティストを聴いて育ってきたようですし、そうしたエッセンスを取り入れるのは自然の流れなのでしょうね。特にRadioheadやThom Yorkeからの影響は大きい感じです。
ミニ・アルバム的な感覚で聴くと楽しめるオルタナティブ作品だと思います。
全曲紹介しときやす。
「Ibaraki」
哀愁メロディと歯切れのいいビートのロック・チューンがオープニング。タイトルは日本の茨城からとったものです。Jamire WilliamsのドラミングやMatthew Stevensのギターをはじめ、今ジャズ・ミュージシャンによるロック・チューンという感じがします。
https://www.youtube.com/watch?v=_naMeGqX2lU
「IF」
哀愁モードの中にミステリアスな雰囲気を醸し出す1曲。Corey Kingの憂いをヴォーカルが印象的です。
「Midnight Chris」
アンビエントな小曲。
「Botched Farewell」
プログラミングを駆使したエレクトロニカな哀愁のオルタナティブ・ソウルといった雰囲気です。
「Parisian Leaves」
この曲もプログラミングを駆使したエレクトロニカ・サウンドと幻想なヴォーカルで哀愁ワールドへ誘ってくれます。
「Uncle Richie」
Corey Kingの哀愁ヴォーカルとJustin Tysonのドラミングが織り成す音世界が面白いです。
「Climb」
Justin Tysonのドラミングが牽引する本作で最もビート感のある演奏です。ついついTysonのドラミングを追ってしまいます。
「Lucky Grey」
トイ・ピアノ的なイントロが印象的な哀愁ミディアムで締め括ってくれます。Radiohead好きの人は気に入りそうな曲です。
次はトロンボーン演奏も存分に聴けるジャズ・サイドな作品も出してほしいです。