発表年:1973年
ez的ジャンル:ニューオリンズ・ファンク
気分は... :ダミ声がたまらん!
ニューオリンズを代表するミュージシャンDr. Johnの代表作の1つ『In The Right Place』(1973年)です。
Dr. JohnことMac Rebennackは1940年ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれのミュージシャン。Dr. Johnというアーティスト名は19世紀のニューオーリンズにいたブードゥー教の司祭の名からとったものです。
ニューオリンズR&Bの巨人Professor Longhairの影響を受けたMac Rebennackは、拠点をL.A.に移すと同時に、Dr. Johnとして、ブードゥー教の影響を受けたサイケデリック・サウンドとニューオリンズR&Bを融合させたユニークな音楽スタイルを志向するようになります。
1968年にデビュー・アルバム『Gris-Gris』をリリース。1972年にはニューオリンズR&Bをカヴァーした名盤『Dr. John's Gumbo』で評価を高めます。同年にはThe Rolling Stones『Exile on Main St.』への参加でも注目を集めました。
1973年にはニューオリンズ・ファンク色を強めた本作『In The Right Place』をリリースし、シングル「Right Place Wrong Time」は全米ヒット・チャート第9位のヒットとなりました。
その後もコンスタントに作品をリリースし、グラミーも6度受賞しています。最近では『Locked Down』(2012年)が2013年のグラミーBest Blues Albumを獲得していましたね。
今回取り上げた『In The Right Place』(1973年)は、Allen Toussaintがプロデュースし、The Metersがバックアップしたニューオリンズ・ファンク作品です。
ニューオリンズR&Bをカヴァーした前作『Dr. John's Gumbo』でニューオリンズR&Bの素晴らしさを伝え、その土台を踏まえて本作『In The Right Place』で最新ニューオリンズ・ファンク・サウンドを示した、といった流れでしょうか。
レコーディングには、Dr. John(vo、p、org、per)、Allen Toussaint(p、el-p、g、conga、tamb、back vo)Leo Nocentelli(g)、Art Neville(org)、George Porter, Jr.(b)、Joseph Modeliste(ds)というThe Metersのメンバー、さらにはRalph MacDonald(per)、David Spinozza(g)、Gary Brown(sax)、The Bonaroo Horn Section(horns)、Robbie Montgomery(back vo)、Jessie Smith(back vo)等が参加しています。
シングル・ヒットした「Right Place Wrong Time」がハイライトですが、それ以外にもDr. Johnのダミ声がよく似合う曲がズラリと並びます。それ以外にも『The Last Waltz』でも演奏された「Such a Night」、ニューオリンズ・ファンクを楽しめる「Shoo Fly Marches On」、ブードゥーな雰囲気を醸し出す「I Been Hoodood」や「Same Old Same Old」、ソウル・フィーリングに溢れた「Peace Brother Peace」、The Rolling Stones/Mick Jaggerっぽい雰囲気の「Cold Cold Cold」、小粋なピアノのニューオリンズR&B「Qualified」あたりが僕のオススメです。
Dr. John、Allen Toussaint、The Metersががっぷり組んだ濃厚ニューオリンズ・ファンクを楽しみましょう。
全曲紹介しときやす。
「Right Place Wrong Time」
Dr. John作。前述のように、全米ヒット・チャート第9位のヒットとなったオープニング。本作の魅力がこの1曲に凝縮されています。Dr. Johnのダミ声と本作らしいThe Metersのファンキー・グルーヴが嚙み合った中毒性の高い1曲に仕上がっています。David Spinozzaがギター・ソロで盛り上げてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=G5zPqgQ67yo
Ray J.、Tom Jones、Bonnie Raitt & B.B. King、The Jon Spencer Blues Explosion等がカヴァーしています。また、Bobby Jimmy and the Critters「Rite Place Wrong Time」、7A3「That's How We're Livin'」 、Steady B feat. KRS-One「Serious (Ceereeus BDP Remix)」、The Rapzologist Dee Nice「Dee Hardest Hard」 、Ice Cube「Dead Homiez」、Isis「The Wizard of Optics」、Queen Mother Rage「Key Testimony」、AW1「Raised Like a Pitbull」、 Michie Mee & L.A. Luv「Jamaican Funk−Canadian Style」 、Jewell「Love or Lust」、The Goats「Aaah D Yaaa」 、Luscious Jackson「Let Yourself Get Down」等のサンプリング・ソースとなっています。
Ray J.「Right Place Wrong Time」
https://www.youtube.com/watch?v=BhHKQQkQ8oU
The Jon Spencer Blues Explosion「Right Place Wrong Time」
https://www.youtube.com/watch?v=Aqlb5esapTs
Bobby Jimmy & the Critters「Rite Place Wrong Time」
https://www.youtube.com/watch?v=ePYdlm7yoaA
7A3「That's How We're Livin'」
https://www.youtube.com/watch?v=3LHb24UZMG0
Steady B feat. KRS-One「Serious (Ceereeus BDP Remix)」
https://www.youtube.com/watch?v=KyJacx3vMC8
AW1「Raised Like a Pitbull」
https://www.youtube.com/watch?v=_OopYFq19es
Luscious Jackson「Let Yourself Get Down」
https://www.youtube.com/watch?v=M481wPvwmVg
「Same Old Same Old」
Dr. John作。Toussaintのピアノとコンガのリズムが印象的な1曲。ブードゥー的な覚醒感も加わった不気味さが僕好み。
https://www.youtube.com/watch?v=1rlHuqGrrD4
「Just the Same」
Dr. John作。しっとりとしたバラードをしみじみと歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=X1gy-fDlWCQ
「Qualified」
Jessie Hill/Dr. John作。「Ooh Poo Pah Do」のヒットで知られるニューオリンズのR&B/ブルース・シンガーJessie Hillとの共作です。ここでのDr. JohnのヴォーカルはMick Jaggerっぽいですね。Jessie HillらしいR&Bフィーリングが反映された1曲に仕上がっているのでは?小粋なピアノも印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=Nthlnd-LRsU
「Traveling Mood」
James Wayne(Wee Willie Wayne)のカヴァー。ノスタルジックな開放感のあるニューオリンズ・サウンドで楽しませてくれる。少し能天気なDr. Johnがサウンドによくフィットしています。
https://www.youtube.com/watch?v=iPaYjf6QFJ8
「Peace Brother Peace」
Dr. John作。ソウル・フィーリングたっぷりのファンキー・チューンはかなり好きです。ホーン隊も大いに盛り上げてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=IHeKj5hZ_no
「Life」
Allen Toussaint作。無骨さと小粋なセンスが融合したToussaintらしいファンキー・チューンに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=GG8Vlct_lKo
「Such a Night」
Dr. John作。この曲もシングルになりました。映画『The Last Waltz』でThe Bandと演奏していた楽曲としても知られています。酔いどれダメ男モードのDr. Johnのヴォーカルとノスタルジックなジャズ・フィーリングがよくマッチしています。
https://www.youtube.com/watch?v=cb8E20-ZYW4
「Shoo Fly Marches On」
Dr. John作。The Metersらしいニューオリンズ・ファンクを楽しめる1曲。Dr. Johnのダミ声と粘りのあるグルーヴの組み合わせがサイコーです。
https://www.youtube.com/watch?v=ToJH_BOV1N8
「I Been Hoodood」
Dr. John作。コンガとベースがブードゥーの怪しげな雰囲気を醸し出す覚醒的なファンキー・グルーヴ。
https://www.youtube.com/watch?v=iSdlq1ar9rM
「Cold Cold Cold」
Alvin Robinson/Jessie Hill/Dr. John作。ラストは骨太のファンキー・チューンで締め括ってくれます。ここでのヴォーカルもMick Jaggerっぽいです。The Rolling Stones『Exile on Main St.』あたりと一緒に聴いてもマッチしそうです。
https://www.youtube.com/watch?v=_sigtpyVPRA
Dr. Johnの他作品をチェックを!
『Gris-Gris』(1968年)
『Babylon』(1969年)
『Remedies』(1970年)
『The Sun, Moon & Herbs』(1971年)
『Dr. John's Gumbo』(1972年)
Mike Bloomfield, John Hammond, Jr. & Dr. John『Triumvirate』(1973年)
『Desitively Bonnaroo』(1974年)
『Hollywood Be Thy Name』(1975年)
『City Lights』(1978年)
『Tango Palace』(1979年)
『Dr. John Plays Mac Rebennack』(1981年)
Chris Barber & Dr. John『Take Me Back to New Orleans』(1981年)
『The Brightest Smile in Town』(1983年)
『Such a Night! Live in London』(1984年)
『In a Sentimental Mood』(1989年)
『Funky New Orleans』(1991年)
『Goin' Back to New Orleans』(1992年)
『Television』(1994年)
『Afterglow』(1995年)
『Anutha Zone』(1998年)
『Duke Elegant:Performing The Music Of Duke Ellington』(2000年)
『Creole Moon』(2001年)
『N'awlinz Dis Dat or d'Udda』(2004年)
『Mercernary』(2006年)
Dr. John & The Lower 911 『City That Care Forgot』(2008年)
Dr. John & The Lower 911『Tribal』(2010年)
『Locked Down』(2012年)
『Ske-Dat-De-Dat: The Spirit of Satch』(2014年)