発表年:2002年
ez的ジャンル:ブラジル新世代サウンド
気分は... :+ α…
今回はMoreno Veloso、Alexandre Kassin、Domenico Lancellottiというブラジル新世代ミュージシャン3名によるユニット作品の第1弾Moreno + 2『Maquina de Escrever Musica(USタイトル:Music Typewriter)』です。
Moreno、Kassin、Domenicoという、新世代ブラジル音楽の才能あるミュージシャン3名が一堂に会した本ユニットは、これまでMoreno + 2名義の『Maquina de Escrever Musica』(2000年)、Domenico + 2名義の『Sincerely Hot』(2002年)、Kassin + 2名義の『Futurismo』(2006年)、+2 Moreno Domenico Kassin名義の『Ima』(2009年)といったアルバムをリリースしています。このうち、当ブログではDomenico + 2『Sincerely Hot』を紹介済みです。
ブラジルを代表するミュージシャンCaetano Velosoの息子であるMoreno Velosoは、1972年生まれ。90年代から音楽活動を始め、父Caetano Velosoの作品に楽曲提供したり、レコーディングに参加するようになります。さらにはArto Lindsayのバンドのサポート・メンバーなども務めています。
その後2000年代に入ると、Kassin、Domenicoとユニットを組み、+ 2として作品をリリースするようになります。さらに父Caetano VelosoやGal Costa等のプロデュースも手掛けています。また、2014年にはソロ・アルバム『Coisa Boa』をリリースしています。
+ 2ユニットの第1弾となる作品がMoreno + 2名義の本作『Maquina de Escrever Musica』です。
プロデュースはMoreno VelosoとKassin Kamal。また、アディショナル・プロダクションでAndres Levin、歌詞の翻訳でArto Lindsayの名がクレジットされています。
レコーディングにはMoreno、Kassin、Domenico以外に、父Caetano Veloso(violao)、Antonio Carlos Jobimの息子Daniel Jobim(p)、Pedro Sa(g)、Mauricio Pacheco(g)、Orquestra Imperialのメンバーであり、KassinとはMonoauralというプロダクション・ユニットも組むことになるBerna Ceppas(syn)、Joao Donato(el-p)、80年代に大活躍したブラジルのポストパンク・ユニットLegiao UrbanaのメンバーであったDado Villa-Lobos(programming)、Marcos Suzano(tabla、tambourine)、サンパウロのロック・バンドTitasのメンバーBranco Mello(back vo)、Arto Lindsay、Marisa Monte作品でお馴染みのMelvin Gibbs(b)、アフロ・ラテン・フュージョン・バンドBarantaにも参加していたPhil Dawson(b)等も参加しています。
エレクトロニカなエッセンスを生演奏に融合させたミクスチャー感覚の新世代ブラジル音楽らしい演奏はもちろんのこと、優しいメロウ・ボッサ、ロマンティックなボレロ、アフロ・バイーアなリズミックな演奏、寂しげでサウダージな演奏、シンプルな弾き語りなど1枚の中に様々なブラジル音楽のエッセンスが詰まった濃密な1枚に仕上がっています。
聴くときの気分で、刺さる曲が異なってくる飽きのこない1枚だと思います。
こういったブラジル音楽をもっと聴きたいですね。
全曲紹介しときやす。
「Sertao」
Moreno Veloso/Caetano Veloso作。親子共作がオープニング。Daniel Jobimがピアノで参加しています。シンプルながらも美しい演奏とMorenoの繊細なヴォーカルによる静寂の音世界が心の奥までジワジワ沁みてきます。
「Deusa Do Amor」
Adailton Poesia/Valter Farias作。Olodumのヒット曲をカヴァー。パーカッシヴなオリジナルに対して、メロウ・ボッサな雰囲気で聴かせてくれます。終盤のDomenicoのトイ・ピアノがいいアクセントになっています。
https://www.youtube.com/watch?v=kg4whLcBJEE
「Enquanto Isso」
Moreno Veloso/Quito Ribeiro作。 + 2らしい生演奏+エレクトロニカなサウダージ・サウンドを楽しめます。後半はPedro Saのギター・ソロで楽しませてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=7kMsPyh9ZFs
「Eu Sou Melhor Que Voce」
Mauricio Pacheco作。ヴィオランの弾き語りでシンプルに聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=ATjmsqDjN2k
「Das Partes」
Pedro Sa/Domenico作。Andres Levinによるサウンド・エフェクトが加わり、新世代ブラジル音楽らしい雰囲気に仕上がっています。
「Arrivederci」
Moreno Veloso作。Mauricio Pacheco(g)、Berna Ceppas(syn)が参加したダンサブルなブラジリアン・ファンク調の仕上がり。
https://www.youtube.com/watch?v=EoevJWNMPAE
「Assim」
Moreno Veloso作。新世代ブラジル音楽らしいミクスチャー感覚を楽しめる仕上がり。アヴァンギャルドなのにキャッチーです。終盤にはGilberto Gilの楽曲の引用も登場します。
https://www.youtube.com/watch?v=Zeb23k00XBk
「Para Xo」
Moreno Veloso作。Joao Donato(el-p)、Marcos Suzano(tabla、tambourine)が参加しているロマンティックなボレロ。DonatoのエレピとMorenoの優しいスパニッシュ・ヴォーカル、そして隠し味のSuzanoのタブラがよくマッチしています。
https://www.youtube.com/watch?v=AY-b2G4dmm0
「Esfinge」
Djavan作。Djavanのオリジナルは『Luz』に収録されています。ここでは憂いを帯びたヴィオランの弾き語りで聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=j9uyhYFZMB0
「Rio Longe」
Moreno Veloso作。アフロ・バイーア色の強いリズミックで力強い仕上がり。TitasのBranco Melloがバック・コーラスで参加しています。
https://www.youtube.com/watch?v=PZzUcRbvPb8
「O Livro & O Beijo」
Moreno Veloso作。Melvin Gibb(b)、Phil Dawso(g)が参加したアフロ・バイーアなダンサブル・チューン。かなり僕好みです。Melvin Gibbが参加し、Andres Levinのサウンド・プロダクションも加わっているのでArto Lindsay好きの人はグッとくるはず。
https://www.youtube.com/watch?v=mlr94_FRfy0
「Nenhuma」
Moreno Veloso作。Moreno、Kassin、Domenicoの3名が寂しげなサウダージ感たっぷりのサウンドを奏でます。
https://www.youtube.com/watch?v=-k3C9CebYqk
「So Vendo Que Beleza」
Rubens Campos/Henricao作。父Caetanoのヴィオランをバックに、Morenoが優しい歌声を聴かせてくれる親子共演に注目です。
「I'm Wishing」
Morey e Churchill作。ディズニー・アニメ『白雪姫』の挿入歌をDaniel Jobimのピアノをバックに、子守歌のように優しく歌い、本編のエンディングを迎えます。
https://www.youtube.com/watch?v=1lgwmbr3dNs
「Montes Claros」
Moreno Veloso作。国内盤ボーナス・トラック。ヴィオランとチェロが織り成す美しいインストです。
ご興味がある方は一昨年にリリースされたMoreno Velosoのソロ・アルバム『Coisa Boa』もチェックを!
『Coisa Boa』(2014年)
Domenico + 2、Kassin + 2のアルバムもチェックを!
Domenico + 2『Sincerely Hot』(2002年)
Kassin + 2『Futurismo』(2006年)