発表年:2007年
ez的ジャンル:新世代男性ジャズ・シンガー
気分は... :魅力を再発見!
今回は新世代男性ジャズ・シンガーの代表格Jose Jamesのデビュー作『The Dreamer』(2007年)です。
1978年ミネアポリス生まれの男性ジャズ・シンガーJose Jamesについて、これまで当ブログで紹介した作品は以下の4枚。
『Blackmagic』(2010年)
『No Beginning No End』(2013年)
『While You Were Sleeping』(2014年)
『Yesterday I Had The Blues』(2015年)
Gilles Petersonに認められ、彼のレーベルBrownswood Recordingsからデビュー作である本作『The Dreamer』(2007年)、2ndアルバム『Blackmagic』(2010年)をリリースしたJose James。
その後、名門Blue Noteへ移籍し、新世代ジャズを代表する男性シンガーとしての地位を確立していくわけですが、Brownswood時代のJoseは僕の中ではクラブジャズ寄りのジャズ・シンガーというイメージが強く、自ずとそういった楽曲を求めていた傾向があったように思います。その意味でリアルタイムで本作を聴いていた時には、偏ったフィルターを通して聴いており、純粋にJose Jamesの世界を楽しむ耳になっていなかったかもしれません。
Billie Holidayへのトリビュート『Yesterday I Had The Blues』(2015年)といった正統派アルバムを聴いた後に、本作を聴くことで、ようやくこのデビュー作の本当の面白さに気づかされた気がします。
プロデュースはJose James自身。
レコーディングにはSteve Lyman(ds)、Luke Damrosch(ds)、Alexi David(b)、Nori Ochiai(p)、Junior Mance(p)、Ryan Blum(key)、Gal Ben Haim(g)、Omar Abdulkarim(tp)といったミュージシャンが参加しています。
アルバム全体はJohn Coltraneを敬愛する一方で、Hip-Hopも聴いて育ってきたJose Jamesの原点に、Gilles PetersonのBrownswoodらしいクラブミュージックのエッセンスが少しだけ加わった新世代ジャズ作品に仕上がっています。
リアルタイムで聴いていた時には、ドラムンベース調の「Love」や「Nola」、ソウル・フィーリングの「Blackeyedsusan」あたりが好きですが、改めて聴き直すとJohn Coltrane的フィーリングをHip-Hop的手法で表現した「Red」、「Velvet」あたりにも惹かれます。
また、『Yesterday I Had The Blues』が大好きだったので、その耳で「The Dreamer」、「Moanin'」を聴き直すと魅力が大幅アップしています。
改めて、Jose Jamesの原点を感じると同時に、本作の面白さを再発見できました。
全曲紹介しときやす。
※僕が保有する国内盤の曲順・構成です。
輸入盤のオリジナルは曲順・構成が異なるのでご注意を!
「Love」
Jose James/Ryan Blum作。オープニングはいきなりドラムンベース調。Gilles PetersonのBrownswoodらしいですし、新世代ジャズ・シンガーを印象づける1曲に仕上がっています。憂いを帯びたJoseのクール・ヴォーカルと人力ドラムンベースのバッキングがよくマッチしています。
https://www.youtube.com/watch?v=xl4n57LH0_g
「Spirits Up Above」
盲目のジャズ・サックス奏者Rashaan Roland Kirk(1935-77年)の作品をカヴァー。Charles Mingus風のアレンジを施したブルージーな仕上がりが、新世代でありながら古き良きジャズもリスペクトする正統派ジャズ・シンガーであることを印象づけてくれます。中盤以降のバックのアンサンブルも素晴らしいです。
https://www.youtube.com/watch?v=sApit4tWdQo
「Moanin'」
国内盤ボーナス・トラック1。Art Blakey & The Jazz Messengersでお馴染み、ファンキー・ジャズを代表するBobby Timmons作の名曲をカヴァー。当ブログではJon Hendricksが歌詞をつけたLambert, Hendricks & Rossのヴァージョンも紹介済みです。JoseのカヴァーはLambert, Hendricks & Rossのヴァージョンをお手本にした仕上がりです。『Yesterday I Had The Blues』を聴いた後に本カヴァーを聴くと、実にしっくりきます。
https://www.youtube.com/watch?v=cZ9XnEDvQl0
「Park Bench People」
90年代に活躍したL.A.のHip-HopグループFreestyle Fellowshipのカヴァー。オリジナルはアルバム『Innercity Griots』(1993年)に収録されています。Jose本人のリクエストと思いきや、Gilles Petersonの勧めによりレコーディングしたようです。ギターを加えた演奏は、Hip-Hopカヴァーとは思えないジャジー・グルーヴに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=mo3hzUmoi_s
「Blackeyedsusan」
Jose James作。Marvin Gayeを意識したJoseのソウル・フィーリングにグッとくる1曲。あくまでジャズ・サイドからのソウル・フィーリングって感じがグッド!後の『No Beginning No End』を予感させます。
https://www.youtube.com/watch?v=Qln33JzZODA
「Nola」
映画監督Spike Leeの父親Bill Leeの作品をカヴァー。Spike Leeの出世作でBill Leeがサントラを手掛けた映画『She's Gotta Have It』(1986年)収録曲です。途中でドラムンベースのエッセンスが加わるなどBrownswoodらしい1曲に仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=9l8R8CHpdk4
「Red」
Jose James作。名曲Wayne Shorter「Footprints」を引用し、ループしたHip-Hop的アプローチが新世代ジャズ・シンガーらしいですね。"今ジャズ"を聴くようになった耳で聴くと、心地よいフィーリングです。
https://www.youtube.com/watch?v=P_qwIhY15hM
「The Dreamer」
Jose James作。タイトル曲はキング牧師からインスパイアされたものです。Joseのヴォーカルや演奏自体は静寂に包まれ、『Yesterday I Had The Blues』の世界観に通じるものがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=IzGiotkGkwQ
「Velvet」
Jose James作。John Coltrane「Compassion」を引用しています。John Coltraneを敬愛するJoseが、Hip-Hop的アプローチでColtraneのフィーリングを表現するというところが新世代ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=PDdSnXbn8Vc
「Winter Wind」
Jose James作。ジャジー・フィーリングのSSW風の仕上がり。N.Y.在住の日本人ピアニストNori Ochaiの美しいピアノをバックに、Joseがしっとりと歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=duPOs6WuRps
「Desire」
JoseとNori Ochaiとの共作曲です。Joseらしい静寂のクール・ヴォイスを堪能できる1曲。前半は『Yesterday I Had The Blues』がお好きな人ならば気に入るはず!後半はバッキングが盛り上がります。個人的には前半の雰囲気で押し通しても良かった気が・・・
https://www.youtube.com/watch?v=ylqA5a3335k
「Body + Soul」
国内盤ボーナス・トラック2。お馴染みのポピュラー/ジャズ・スタンダードをカヴァー(Edward Heyman/Robert Sour/Frank Eyton/Johnny Green作)。スウィンギーな雰囲気が打ち出されたカヴァーに仕上がっています。
僕が保有する国内盤はボートラ2曲のみですが、昨年再発された国内盤にはL.A.ビートミュージックの雄Flying Lotusとの共演曲「Visions Of Violet」も加わっています。
Jose Jamesの他作品もチェックを!
『Blackmagic』(2010年)
Jose James & Jef Neve『For All We Know』(2010年)
『No Beginning No End』(2013年)
『While You Were Sleeping』(2014年)
『Yesterday I Had The Blues』(2015年)