2017年02月22日

Nick Drake『Pink Moon』

カルト・シンガーの痛々しくも美しいラスト・アルバム☆Nick Drake『Pink Moon』
Pink Moon
発表年:1972年
ez的ジャンル:UKアシッド・フォーク
気分は... :僕はそこにいるのか・・・

今回はカルト的な人気を誇るイギリス人シンガーソングライターNick Drakeの3rdにしてラスト・アルバム『Pink Moon』(1972年)です。

CD棚を整理したら、本作のジャケが何故だか目に留まり、その流れでたまに聴いています。痛々しさに逆に癒されるって感じでしょうか。

悲運の天才フォーク・シンガーNick Drake(1948-1974年)の紹介は、2ndアルバム『Bryter Layter』(1970年)に続き2回目となります。

内容的には申し分なく、Nick本人やプロデューサーJoe Boyd、エンジニアJohn Woodといった関係者も自信を持ってリリースした『Bryter Layter』(1970年)でしたが、期待に反して商業的には全く振るいませんでした。

地元ウォリックシャー州へ引き返し、失意の日々を過ごしていたNickが、わずか2日間でレコーディングしたアルバムが本作『Pink Moon』(1972年)です。ほとんどがワンテイク、楽器もギター&ヴォーカルに、一部ピアノでアクセントをつけたのみというシンプルなものです。

本作のリリース以降、心の病を悪化させていったNickは、1974年11月25日に自宅で抗うつ薬の過剰服用のため死去します。享年26歳。

自らの才能を信じながらも、成功に至らない現実とのギャップに悩んだ天才アーティストのが最後に輝きを放ったラスト・アルバムという印象を受けます。決して明るいアルバムではなく、キャッチーとは言えませんが、天才アーティストの無垢な魅力に接することができる1枚でもあります。

失意と絶望から世間に背を向け、自らを陽を浴びない陰と評するの歌詞を見ていると、Pink Floyd『Dark Side Of The Moon』(1973年)とSyd Barrettを思い出してしまいますね。

実に痛々しく、切ないアルバムですが、そうした境地のアーティストにしか表現できない、儚い美しさに魅力を感じる1枚だと思います。

その意味では至極のダウナー作品だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Pink Moon」
♪ピンクの月が昇ってくる♪と歌うタイトル曲。彼の心の闇とその先に待ち受ける悲運を暗示しているのか、それとも彼の無垢な思いの表れなのか。ピアノの美しいアクセントも印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=_wCkmuRkZz4

「Place To Be」
自身の失意を吐露した1曲。諦めの気持ちが見え隠れする痛々しさとと、それでも歌い続けたいという思いに心打たれます。
https://www.youtube.com/watch?v=obOWSCmzEAY

「Road」
太陽ではなく、月へ向かうのが自らの道だと歌います。このあたりは月の裏側へ行ってしまったSyd Barrettともイメージが重なります。
https://www.youtube.com/watch?v=oQJmaKBcMzo

「Which Will」
♪どっちを選ぶの♪と弱々しく歌う歌詞に、当時のNickの心の状態が表れている気がします。物事を白黒/勝ち負けの両極端で考えるのは良くないパターンですね。グレーや引き分けでもいいのに・・・
https://www.youtube.com/watch?v=A0NDxRNdQKk

「Horn」
ギターのみのインストですが、伝わってくるものがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=HzXkozcVpsg

「Things Behind The Sun」
♪俗世間での成功など君には取るに足らないこと♪と世の中に背を向け、太陽の陰で注目されない人たちへスポットを当てることで自らの居場所を見出そうとしています。痛々しいけど、どこか共感してしまいます。
https://www.youtube.com/watch?v=6btXe5j17oE

「Know」
シンプルな歌詞だからこそ、さまざまな解釈ができる歌かもしれませんね。最後の♪僕はそこにいない♪というフレーズが悲しすぎます。
https://www.youtube.com/watch?v=Y-eHBUudkcY

「Parasite」
自らを街の寄生虫と歌う歌詞が痛々しいです。
https://www.youtube.com/watch?v=2_hN3otvC6g

「Free Ride」
自分の中のもう一人の自分に語り掛けているような印象を受けます。
https://www.youtube.com/watch?v=l09L45RM2RI

「Harvest Breed」
自らの悲運を暗示するかのような歌詞が何とも切ないです。
https://www.youtube.com/watch?v=kCy25ylGW_E

「From The Morning」
失意や絶望の中で、一筋の光明を見出そうとする救いの歌で締め括ってくれます。絶望の中でも希望はある・・・
https://www.youtube.com/watch?v=-kFAf7tENdQ

デビュー・アルバム『Five Leaves Left』(1969年)、2ndアルバム『Bryter Layter』(1970年)もセットでどうぞ!

『Five Leaves Left』(1969年)
ファイヴ・リーヴス・レフト

『Bryter Layter』(1970年)
ブライター・レイター
posted by ez at 05:48| Comment(2) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Nick Drakeを聞いていると、シンプルな音色の中に濃厚なメロディがあり、非常に引き込まれますよね。

私は、彼の音楽を聴いていると、Elliott Smithをどうしても思い出します。
Posted by g.j at 2017年02月23日 01:02
☆g.jさん

ありがとうございます。

絶望の境地が生んだ美しくも切ない歌世界がたまりませんね。
才能が必ずしも成功に結びつかないアーティストの苦悩が伝わってきます。

>Elliott Smithをどうしても思い出します。

うつを患い、若くして亡くなったという点では確かにイメージが重なりますね。天才アーティストは身を削る思いで作品を生み出したのでしょうね。
Posted by ez at 2017年02月24日 12:04
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