発表年:2017年
ez的ジャンル:新世代R&B
気分は... :若き才能!
新作アルバムから注目R&BユニットThe Internetの中心メンバーSyd(Syd tha Kyd)の1stアルバム『Fin』です。
The Internetに関して、当ブログでは『Purple Naked Ladies』(2011年)、『Feel Good』(2013年)、『Ego Death』(2015年)という全3枚のアルバムを紹介済みです。
『Ego Death』(2015年)がグラミーのBest Urban Contemporary Albumにもノミネートされ、俄然注目度が高まったThe Internet。
しかし、今年はグループでの活動よりも各メンバーのソロ活動が活発化しています。まずSydと並ぶ創設メンバーのMatt Martiansが1月にアルバム『The Drum Chord Theory』をデジタル・リリースしています。また、メンバーのSteve Lacyも今月6曲入りEP『Steve Lacy's Demo』をデジタル・リリースしたばかりです。
Matt Martians feat. Syd & Steve Lacy「Dent Jusay」
(From 『The Drum Chord Theory』)
https://www.youtube.com/watch?v=RDDLGfghuMA
Steve Lacy「Ryd/Dark Red」
(From 『Steve Lacy's Demo』)
https://www.youtube.com/watch?v=x-OzspEcQG8
そんな中でも最も期待度が大きいのが中心メンバーSyd(Syd tha Kyd)の1stアルバム『Fin』なのでは?
Sydのアーティストとしての世界観が反映された素晴らしい1枚に仕上がっていると思います。
Syd本人のセルフ・プロデュース以外にRahki、Hit-Boy、Melo-X、Steve Lacy、Flip(@Flippa123)、HazeBanga/Isiah Salazar、Nick Green、Anthony Kilhoffer/Julian Grammaといった多彩なプロデューサーを起用しています。
また、アトランタ出身のR&Bアーティスト6LACKがフィーチャリングされ、それ以外にRobert Glasper(p)、リッチモンドのジャズ・ファンク・バンドButcher BrownのメンバーKeith Askey(g)等もレコーディングに参加しています。
バンド編成となり、生演奏の比重が高まった近年のThe Internetに対して、本作ではエレクトリックなR&Bサウンドが支配します。その意味では初期のThe Internet作品と重なる部分もあるのでは?
Sydらしい美しくも儚いクールネス・ワールドに、多彩なプロデューサー陣がエッジーなスパイスを効かせている感じですかね。余分なものを削ぎ落し、本当に必要な音のみを残したサウンドに、Syd本人やプロデューサー陣のセンスを感じます。
決して明るいアルバムではありませんが、かと言って陰鬱なアルバムでもありません。クールなSydワールドは新世代R&Bの魅力を存分に伝えてくれます。
Sydって1992年4月生まれなので、まだ24歳なんですね。若き才能のさらなる開花が楽しみです。
真夜中に聴きたいR&B作品です。
全曲紹介しときやす。
「Shake Em Off」
Hit-Boyプロデュース。ゆったりとした中にもエッジーなセンスを感じるトラックは、さすがHit-Boyですね。期待通りのオープニングです。
「Know」
『Ego Death』にも大きく関与していたNick Greenのプロデュース。派手さはありませんが、本作らしいエレクトリック・トラックやヴォーカル・ワークも含めて完成度の高い1曲だと思います。
「No Complaints」
Sydプロデュース。エフェクト・ヴォーカルによる1分半に満たない小曲。
「Nothin to Somethin」
Sydプロデュース。プロデューサーSydのセンスを実感できる1曲。クール&ミッドナイトな雰囲気がグッド!真夜中に部屋を暗くして聴きたいですね。
「All About Me」
The Internetの同僚Steve Lacyプロデュース。アルバムからのリード・シングルにもなりました。哀愁エレクトリック・サウンドと寂しげなSydのヴォーカルが切なく儚い音世界を展開します。本曲のMusic VideoにはTyler, The Creatorをはじめ、Hodgy Beats、Mike G.といったOdd Future勢がカメオ出演しています。
https://www.youtube.com/watch?v=ZNIOrsxsa0A
「Smile More」
Sydプロデュース。美しく響く哀愁サウンドに乗って、Sydが切ないヴォーカルで歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=NcG_ke3iFZU
「Got Her Own」
HazeBanga/Isiah Salazarプロデュース。海の底から聞こえてくるようなヴォーカルの音響が印象的な哀愁チューン。
https://www.youtube.com/watch?v=qCFt9sMYuuA
「Drown in It」
Anthony Kilhoffer/Julian Grammaプロデュース。引き算の美学を感じるビューティフルな小曲。
「Body」
Jesse Boykins IIIとのコラボ・アルバム『Zulu Guru』(2012年)で知られるN.Y.出身のDJ/プロデューサー/ラッパーMelo-Xプロデュース。美しくも寂しげなサウンド&ヴォーカルに魅了されたSydらしいR&Bチューンに仕上がっていると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=P7kW3Q46UUc
「Dollar Bills」
Steve Lacyをフィーチャー。Steve Lacyと期待のプロデューサーFlip(@Flippa123)のプロデュース。エッジーさとキャッチーさのバランスの取れた魅力的な1曲に仕上がっていると思います。 Lacyのギターがいいアクセントになっています。
https://www.youtube.com/watch?v=kHC4IdmgvqY
「Over」
アトランタ出身のR&Bアーティスト6LACKをフィーチャー。HazeBangaプロデュース。僕がイメージするSydワールドに合致する、美しきクールネスに魅了されます。
https://www.youtube.com/watch?v=JYz448wq_k8
「Insecurities」
名盤Kendrick Lamar『To Pimp A Butterfly』(2015年)からのリード・シングル「i」のプロデュースでもお馴染みのRahkiプロデュース。Robert Glasper(p)、Keith Askey(g)も参加しています。ジャズ・フィーリングも効いたメロウ・チューンは本作の中では異色かも?
https://www.youtube.com/watch?v=iruct_VtZN0
The Internetの過去記事もご参照ください。
The Internet『Purple Naked Ladies』(2011年)
The Internet『Feel Good』(2013年)
The Internet『Ego Death』(2015年)