発表年:2017年
ez的ジャンル:現代ジャズ・ギター+ブラジル音楽
気分は... :新風が吹く・・・
今回は新作から現代ジャズ・ギターの皇帝Kurt Rosenwinkelの最新作『Caipi』です。
Kurt Rosenwinkelは1970年フィラデルフィア生まれ。Gary Burtonのサポート・メンバーとなったのきっかけに、N.Y.でジャズ・ミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせます。
その後オルタナティヴ・ジャズ・ユニットHuman Feelへの参加を経て、1996年に初リーダー作『East Coast Love Affair』をリリース。今日までコンスタントな活動を続け、現代ジャズ・ギターの皇帝と呼ばれるまでに至っています。現在はベルリンを拠点にしているようです。
ここ数年のJazz The New Chapterムーヴメントの中でもKurt Rosenwinkelの名を目にすることが多いですね。
僕自身は熱心なジャズ・リスナーではありませんが、Q-Tip『The Renaissance』(2008年)への参加でKurt Rosenwinkelの名を意識するようになりました。
さて、最新作『Caipi』ですが、完成まで10年の歳月を要し、Kurt自身がギターのみならず、ベース、ピアノ、シンセ、ドラム、パーカッションを演奏し、ヴォーカルも披露しています。
さらにAntonio Loureiro(vo)、Pedro Martins(vo、ds、key、per)といったブラジルの才能あるミュージシャンが参加し、アルバムにミナス・フレイヴァーを加えています。特に共同プロデュースも務めるPedro Martinsのアルバムへの貢献度は大きいです。
Antonio Loureiroは現代ブラジル音楽好き、ワールド・ジャズ好きには有名なミュージシャンですが、Pedro Martinsの方の知名度はそれ程ではないかもしれませんね。Antonio Loureiroのライブ・サポートでも知られる期待のミュージシャンです。
僕が本作に興味を持ったのも、そうしたブラジル音楽の影響を受けたジャズ作品に仕上がっている点です。
それ以外にもEric Clapton(g)、Alex Kozmidi(baritone g)、Mark Turner(ts)、Kyra Garey(vo)、Zola Mennenoh(vo)、Amanda Brecker(vo)、Frederika Krier(violin)、Chris Komer(french horn)、Andi Haberl(ds)、Ben Street(b)といったミュージシャンがアルバムに参加しています。Claptonの参加は意外ですが・・・
モロにブラジルって訳ではないですが、ブラジル音楽のエッセンスをモチーフに、Kurtが自身の音世界を切り拓こうとしているのがいいですね。
ギタリストだけではないトータルなサウンド・クリエイターとしてのKurt Rosenwinkelの才能を楽しむ1枚だと思います。特にピアニストとしての彼にプレイには驚かされます。
全曲紹介しときやす。
「Caipi」
タイトル曲は本作らしいミナスのエッセンスを感じることができます。Pedro Martinsのバック・コーラス以外はすべてKurt自身のプレイです。開放感のあるKurtのギターを楽しみましょう。
「Kama」
ここではPedro Martinsがリード・ヴォーカルをとります。ブラジル音楽ならではのミステリアスな雰囲気をAndi Haberlのドラムがタイトに締めている感じがいいですね。
「Casio Vanguard」
Antonio LoureiroとPedro Martinsがヴォーカルで参加。ある意味本作のハイライト的な演奏かもしれません。ブラジル音楽と現代ジャズ・ギターの融合を楽しめる1曲に仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=1FIWGfEKru4
「Song for Our Sea」
国内盤ボーナス・トラック。ここではピアニストとしてのKurtにも注目です。大海へ思いを馳せ、サウダージな気分になりそう・・・
「Summer Song」
イントロのピアノが印象的です。ブラジルっぽく始まりますが、ヴォーカルが入るとSSW風のジャジー・チューンに・・・
「Chromatic B」
Kurtのマルチ・プレイヤーぶりを楽しめるストレート・アヘッドなジャズ作品。特に後半はKurtのギターを堪能できます。
「Hold on」
インディー・ロック調の展開は今ジャズっぽいかもしれませんね。
「Ezra」
Kurtの息子のために書かれた曲のようです。父親から息子へ語り掛ける優しさに包まれた1曲に仕上がっています。
「Little Dream」
Eric Clapton参加曲。疾走感のある演奏で注目すべきはKurtとClaptonのギターなのですが、一番驚かされたのは中盤以降のKurtのピアノ。圧巻です。
「Casio Escher」
透明感のあるサウンドがジワジワと心の中に浸透してきます。Mark Turnerのサックスが印象的ですね。
「Interscape」
ミナス・テイストのミステリアスな雰囲気の漂う仕上がり。KurtのZola Mennenohの男女ヴォーカルとシンセが織り成す幻想的な音世界がいいですね。
「Little b」
本作らしいブラジル音楽のエッセンスとKurtのギターをたっぷり堪能しながら、アルバムはフィナーレを迎えます。
Kurt Rosenwinkelの他作品もチェックを!
『East Coast Love Affair』(1996年)
『Intuit』(1998年)
『The Enemies of Energy』(2000年)
『The Next Step』(2001年)
Jakob Dinesen/Kurt Rosenwinkel『Everything Will Be Alright』(2002年)
『Heartcore』(2003年)
『Deep Song』(2005年)
『The Remedy: Live at the Village Vanguard』(2008年)
『Reflections』(2009年)
『Our Secret World』(2010年)
『Star of Jupiter』(2012年)