発表年:2015年
ez的ジャンル:新世代系ブラジル音響ポップ
気分は... :こんなブラジル作品を待っていた!
今回は新世代ブラジル音楽からAna Claudia Lomelino『Maeana』(2015年)です。あのCaetano Velosoが絶賛した新世代ブラジル作品として話題の1枚です。
本国ブラジルでのリリースは2015年10月ですが、国内盤リリースは今年3月なので新作アルバム扱いにさせてもらいます。
Ana Claudia Lomelinoはリオ生まれの女性シンガー。現在31歳。
Bem Gil(Gilberto Gilの息子)、Rafael Rocha、Bruno Di Lullo、Eduardo Mansoと組むリオのエクスペリメンタル・ポップ・バンドTonoの紅一点シンガーとして、『Auge』(2008年)、『Tono』(2010年)、『Aquario』(2013年)という3枚のアルバムをリリースしています。
特に3rdアルバム『Aquario』(2013年)はArto Lindsayが全面プロデュースし、Gilberto GilやKassin、Moreno Velosoとの+2ユニットで知られるDomenico Lancellotti等も参加したことで大きな話題となりました。
ちなみにBem GilはAnaの公私のパートナーであり、二人の間には子息がいます。
本作『Maeana』はAna Claudia Lomelinoの1stソロ・アルバムとなります。アルバム・タイトルは"母Ana"を意味し、母親となったことがアルバム創作の源になっているようです。
Bem GilとAna自身、Tonoの同僚Bruno Di Lullo、さらにはDomenico Lancellottiがプロデュースを務めています。
レコーディング・メンバーはAna Claudia Lomelino(vo)以下、Bem Gil(violao、g、per、vo)、Bruno Di Lullo(b)、Rafael Rocha(per)というTonoの同僚、Domenico Lancellotti(ds、per、mpc、vo)、Stephane San Juan(per)、Pedro Sa(g)、Berna Ceppas(syn)という+2ユニット関連のミュージシャン、さらにはMestrinho(accordion、syn)等が参加しています。
また、Caetano VelosoやAdriana Calcanhottoが新曲を書き下ろすなどソングライティング陣もバラエティに富んでいます。
アルバム全体の印象は、Anaの透明感のある歌声に包み込まれる音響ドリーミー・ポップといった感じでしょうか。土着的なブラジリアン・リズムが印象的な曲が多いのも特徴です。また、+2ユニットに通じるエスプリを随所で楽しめます。
彼女が"ポストMarisa Monte"と期待されるのも納得の1枚です。
こんな新世代ブラジル作品を待っていた!
そう思わせてくれる充実作です。
全曲紹介しときやす。
「Perola - Poesia」
Domenico Lancellotti/Ana Claudia Lomelino作。穏やかな中にもエスプリの効いた音響ポップに癒されます。
https://www.youtube.com/watch?v=jqXyBTkG4cI
「Sonho De Voo」
Bem Gil/Ana Claudia Lomelino作。エクスペリメンタル感のあるリズムとジャジーなトランペットが印象的です。Anaのヴォーカルがそんなサウンドの中に溶け込んでいきます。
https://www.youtube.com/watch?v=mesbrfBnbjI
「Nao Sei Amar」
Caetano Veloso作。バイーアの風を感じる土着的リズムが印象的なアコースティック・メロウです。
https://www.youtube.com/watch?v=KoYuFSth4R8
「Mae Ana」
Rubinho Jacobina作。愛する息子Domの声と共に始まるタイトル曲。緩急のあるドリーミー・ポップ。子供たちの歌声はAnaの息子のみならずMoreno Velosoの息子(Caetano Velosoの孫)等も参加しているとのこと。
https://www.youtube.com/watch?v=AfypKsfsCus
「Bem Feito」
Adriana Calcanhotto作。Mestrinhoのアコーディオンが雰囲気を醸し出す哀愁チューン。研ぎ澄まされたノスタルジック・フィーリングがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=I3zLAAjpFLE
「Dom」
Joao Bernardo/Ana Claudia Lomelino作。愛息Domの名を冠した曲。Anaの母性は滲み出たドリーミーな1曲に仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=M2kGCymFcKs
「Meu Filho」
Paulo Camacho作。ドリーミーなポップ・チューン。聴いていたら、『ezが選ぶ2008年の10枚』にも選んだ愛聴盤Alexia Bomtempo『Astrolabio』を思い出してしまいました。
https://www.youtube.com/watch?v=5U1qF10yTA4
「Vontade」
Andre Dahmer作。寛いだ雰囲気のサウンドとコケティッシュなAnaのヴォーカルが印象的なポップ・チューン。
https://www.youtube.com/watch?v=26ub70Y8iJw
「Romance Espacial」
Bruno Di Lullo/Domenico Lancellotti作。しっとりと歌い上げる哀愁チューン。エクスペリメンタルなスパイスも効いています。
https://www.youtube.com/watch?v=JyrWiI58eDc
「Mae Ima」
Luana Carvalho作。ローファイ感のあるポップ・チューン。ミステリアス&スピリチュアルな魅力があります。
「Colo Do Mundo」
Cezar Mendes/Quito Ribeiro作。Anaの少し寂しげなヴォーカルが美しいメロディを歌い上げます。Domenicoの生み出すリズムがさり気なく新世代ブラジル感を醸し出します。
https://www.youtube.com/watch?v=TMzYVo8_8Ps
「Conchinha」
Leticia Novaes作。エレクトロニカ・サウンドと土着的なブラジリアン・リズムの融合は+2ユニット的な魅力があります。
https://www.youtube.com/watch?v=O7YG6t5WLlA
「Ufolclore (Porto Do Conde)」
Lou Caldeira作。バンド感のある硬質サウンドにMestrinhoのアコーディオンが加わり、いいアクセントになっています。
「Minha Cama」
Marcelo Callado作。土着的リズムとオリエンタルなサウンド&メロディが織り成すほのぼの感に癒されてアルバムは幕を閉じます。
ご興味がある方はTonoの作品もチェックを!
Tono『Auge』(2008年)
Tono『Tono』(2010年)
Tono『Aquario』(2013年)