発表年:2005年
ez的ジャンル:ジャンル超越系女性ベーシスト/ヴォーカリスト
気分は... :世界観・・・
今回はジャンルを超越した音楽性でシーンにインパクトを与えてきた女性アーティストMeshell Ndegeocelloの『The Spirit Music Jamia: Dance of The Infidel』(2005年)です。
ワシントンD.C.育ちのアメリカ人ベーシスト/ヴォーカリスト/ソングライターMeshell Ndegeocello(Me'Shell Ndegeocello)の紹介は、『Comfort Woman』(2003年)に続き2回目となります。
本作『The Spirit Music Jamia: Dance of The Infidel』はMeshellが本格的ジャズ・アルバムに取り組んだ意欲作です。
本作と前後してPapillonというネーミングのジャズ・プロジェクトでライブ活動を行っており、本作はその延長線上にあるジャズ・アルバムです。正式なアルバム・タイトルも『Meshell Ndegeocello Presents - The Spirit Music Jamia: Dance of The Infidel』であり、Meshellのソロ・アルバムというより、プロジェクト的な作品になっています。ヴォーカルは全て他人に任せ、中にはMeshellが演奏に参加していない曲もあります。
プロデュースはBob PowerとMeshell Ndegeocello。
レコーディングにはMeshell Ndegeocello(b、programming)以下、Brandon Ross(g)、Michael Cain(p、key)、Neal Evans(p、key)、Federico Gonzalez Pena(key)、Didi Gutman(key、programming)、Don Byron(horn)、Joshua Roseman(horn)、Oliver Lake(horn)、Wallace Roney(horn)、Kenny Garrett(horn)、Ron Blake(horn)、Oran Coltrane(horn)、Matt Garrison(b)、Dave Meshell(b、programming)、Chris Dave(ds)、Jack DeJohnette(ds)、Gene Lake(ds)、Pedro Martinez(per)、Yosvany Terry(per)、Mino Cinelu(per)、Gregoire Maret(harmonica)等の新旧ジャズ・ミュージシャンが参加しています。
また、ヴォーカル曲ではSabina Sciubba(Brazilian Girls)、Cassandra Wilson、Lalah Hathawayといったヴォーカリストがフィーチャーされています。
アルバム全体としては、"今ジャズ"を先取りしていたかのような先見性のあるサウンド、神秘的なスピリチュアル・ジャズ・サウンド、抑えたトーンのヴォーカル曲がバランス良く配された構成だと思います。特に"今ジャズ"好きの人は興味深く聴くことができるはずです。
個人的には「Aquarium」、「Papillon」、「Dance Of The Infidel」、「Mu Min」にグッときました。
スタンダード「When Did You Leave Heaven」以外はMeshellや参加メンバーによるオリジナルです。
本作ならではのMeshell Ndegeocelloによるジャズ・ワールドを楽しみましょう!
全曲紹介しときやす。
「Mu Min」
アルバムのイントロダクション的な短い演奏です。Chris Daveの生ドラムにプログラミングを組み合わせた"今ジャズ"なリズム感覚にMeshellの先見性を垣間見ることができます。
「Al Falaq 13」
Meshellは楽曲提供のみで演奏には参加していません。Kenny Garrett、Wallace Roney、Michael Cain、Gene Lake、Matt Garrisonらがミステリアスかつ緊張感のある演奏を繰り広げます。
「Aquarium」
Sabina Sciubba(vo、p)をフィーチャー。"今ジャズ"を先取りしていたかのようなサウンドは、ジャンルを超越した音楽性を持つMeshellならではのジャズ・サウンドですね。また、Brazilian GirlsのヴォーカリストSabina Sciubbaを巻き込むあたりにもMeshellの一歩先を行くセンスを感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=M_Fg9EXkkH0
「Papillon」
本作と前後してライブ活動していたジャズ・プロジェクトの名を冠した約11分半の演奏です。Kenny Garrettのサックスを大きくフィーチャーしています。ベースはMatt GarrisonとMeshellの2人体制。壮大かつ神秘的な音世界はスピリチュアル・ジャズ的な魅力もあります。
https://www.youtube.com/watch?v=5mW_g_01Pno
「Dance Of The Infidel」
John ColtraneとAlice Coltraneの息子であるサックス奏者Oran ColtraneとMeshellの共作。『Persuance;The Music Of John Coltrane』(1996年)というColtran作品集を録音したKenny GarrettとColtranの息子Oranのサックス共演は興味深いですね。また、王道ジャズ演奏におけるChris DaveとMeshellのリズム隊に注目するのも楽しいです。
https://www.youtube.com/watch?v=j63AqHq2EKo
「The Chosen」
Cassandra Wilsonをフィーチャー。Cassandraの"プリンセス・オブ・ダークネス"らしい低音ヴォーカルにグッろときます。さり気ないですが味わい深いですね。Brandon Rossのギターもグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=OKR2k5eztE4
「Luqman」
ジャズ・プロジェクトらしいアンサンブルを楽しめます。特にMatt GarrisonとMeshellの2人体制ベース、Jack DeJohnetteのドラム、さらにはパーカッションも加わり生み出される強力グルーヴがいいですね。
「When Did You Leave Heaven」
Lalah Hathawayをフィーチャー。アカデミー賞を受賞したスタンダードをカヴァー(Richard Whiting/Walter Bullock作)。ラストはNeal Evans(p)、Michael Cain(key)、Chris Dave(ds)というシンプルなバッキングで、Lalahがしっとりと歌い上げます。抑えたトーンながらもエモーションが伝わってきます。
https://www.youtube.com/watch?v=VjJWjtFDi4Q
Meshell Ndegeocelloの他作品もチェックを!
『Plantation Lullabies』(1993年)
『Peace Beyond Passion』(1996年)
『Bitter』(1999年)
『Cookie: The Anthropological Mixtape』(2002年)
『Comfort Woman』(2003年)
『The World Has Made Me the Man of My Dreams』(2007年)
『Devil's Halo』(2009年)
『Weather』(2011年)
『Pour une Ame Souveraine: A Dedication to Nina Simone』(2012年)
『Comet, Come to Me』(2014年)