発表年:1974年
ez的ジャンル:レア・グルーヴ系ジャズ・ファンク
気分は... :黄道12星座・・・
今回はジャズ・サックスの巨人Cannonball Adderleyの『Love, Sex, And The Zodiac』(1974年)です。
※録音は1970年、発表は1974年
大物ジャズ・アルトサックス奏者Julian "Cannonball" Adderley(1928-1975年)の紹介は、『Mercy, Mercy, Mercy!』(1966年)、『Cannonball's Bossa Nova』(1962年)に続き3回目となります。
本作はジャケやタイトルからも想像できるように、黄道12星座をテーマにしたコンセプチュアルな1枚です。1星座1曲×12、冒頭のイントロを含む全13曲構成で、すべての曲にRick Holmesのナレーションが入っています(正式にはCannonball Adderley Presents Rick Holmes名義のアルバム)。
プロデュースはCannonball Adderley作品ではお馴染みのDavid Axelrod。
レコーディング・メンバーはCannonball Adderley(as)、Nat Adderley(cornet)、Hal Galper(el-p)、Walter Booker(b)、Roy McCurdy(ds)、George Duke(clavinet、ARP syn)、Jimmy Jones(p)、Rick Holmes(narration)。
ナレーション入りのコンセプチュアルなジャズ・ファンク作品です。
発表当時は奇異なアルバム扱いだったのか、あまり評価されなかったようです。しかしながら、Hip-Hopのサンプリング・ソースやレア・グルーヴ方面から再評価が高まった1枚です。
確かにナレーション入りのジャズ・ファンクは、Hip-Hop感覚で聴くとフィットしやすいかもしれません。
本作と混同しやすいのが、Cannonball Adderley, Rick Holmes, The Nat Adderley Sextet名義の『Soul Zodiac』(1972年)です。
本作と同じく、黄道12星座をテーマにイントロ+1星座1曲×12の全13曲構成でRick Holmesのナレーション入りです。Cannonball Adderley & David Axelrodがプロデュースし、レコーディング・メンバーも本作とかなり重複していますが、Cannonball Adderleyの参加は2曲のみです。また曲タイトルも同じですがコンポーザーは異なります。
Cannonball Adderley, Rick Holmes, The Nat Adderley Sextet『Soul Zodiac』(1972年)
話を『Love, Sex, And The Zodiac』に戻すと、テーマに合わせて様々なタイプの演奏が収録されていますが、
ジャズ・ファンクな「Leo: Rosebud」、「Introduction」、「Taurus: Wampus Cat」、メロウな「Virgo: For Pam」、「Pisces: Allison's Trip」あたりがオススメです。
性愛と星座をめぐる12の物語をどんなサウンドで聴かせるのか楽しんでください。
全曲紹介しときやす。
「Introduction」
Hal Galper作。ドープなスロウ・ファンクをバックに、Rick Holmesのナレーションが性愛と星座をめぐる12の物語をスタートさせます。
Lord Finesse and DJ Mike Smooth「I Keep the Crowd Listening」のサンプリング・ソースとなっています。
Lord Finesse and DJ Mike Smooth「I Keep the Crowd Listening」
https://www.youtube.com/watch?v=cqS5mG7Z-Mo
「Aries: Damn Right」
George Duke作。おひつじ座がテーマ。軽快なリズムに乗った開放的なホーン・サウンドが印象的です。
「Taurus: Wampus Cat」
Walter Booker作。おうし座がテーマ。George Dukeによるファンキーな鍵盤が印象的なジャズ・ファンク。Rick Holmesのナレーションも含めてHip-Hop感覚で楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=R1EwHbMvmp8
「Gemini: Ecstasy」
Cannonball Adderley/Jimmy Jones作。ふたご座がテーマ。美しいジャズ・バラードをバックに、エクスタシーについて語られます(笑)
「Cancer: All Sides」
Nat Adderley作。かに座がテーマ。コンガのトライバルな響きは印象的なイントロに続き、Natのコルネット、Cannonballのアルトのソロ演奏を楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=R_HPtAIM1nA
「Leo: Rosebud」
Hal Galper作。しし座がテーマ。本作のハイライトと呼べるファンキー・ジャズ・ファンク。この1曲を聴けば、ジャズ・ファンク作品としての本作の魅力を実感できるはずです。Roy McCurdyの叩き出すビートが格好良いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=YboP6TwSm6k
Gang Starr feat. Lil' Dap & Jeru the Damaja「I'm the Man」、A Tribe Called Quest feat. Busta Rhymes & Redman「Steppin' It Up」、Don Diego feat. Erre & Fat Fat Corfunk「Never Give Up」のサンプリング・ソースとなっています。
A Tribe Called Quest feat. Busta Rhymes & Redman「Steppin' It Up」
https://www.youtube.com/watch?v=cNavH_58PFk
Don Diego feat. Erre & Fat Fat Corfunk「Never Give Up」
https://www.youtube.com/watch?v=4mMppbUP5qc
「Virgo: For Pam」
Hal Galper作。おとめ座がテーマ。メロウなミディアム・グルーヴ。ナレーションが入ると、ジャジー&メロウHip-Hopな雰囲気になります。
https://www.youtube.com/watch?v=vkQJKMBSoRY
K.M.D.「Black Bastards!」、Laif「Brown Shark」のサンプリング・ソースとなっています。
KMD「Black Bastards!」
https://www.youtube.com/watch?v=UwSkV8zRYh8
Laif「Brown Shark」
https://www.youtube.com/watch?v=r63APuzWsxw
「Libra: Patricia」
Roy McCurdy作。てんびん座がテーマ。ラウンジ・モードな落ち着いた雰囲気のアンサンブルがいいですね。Laif「Brown Shark」のサンプリング・ソースとなっています。
https://www.youtube.com/watch?v=GsT4Yc0f_gY
「Scorpio: Back "A" Town」
Nat Adderley作。さそり座がテーマ。ソウルフルな味わいの演奏が印象的です。少しルーズな感じがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=9iiSoZ0TUG4
「Sagittarius: West Texas」
Nat Adderley作。いて座がテーマ。前曲に続きソウルフルな演奏です。Rick Holmesのナレーションが入るとブルージーな魅力が増してくるのが面白いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=OpaDgOKJS8E
「Capricorn: The Gentle」
Nat Adderley作。 やぎ座がテーマ。タイトルの通り、ジェントルな演奏です。ピアノ、ベース、Natのコルネット、Cannonballのアルトが織り成す美しいアンサンブルがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=zfvlz8bPiMU
「Aquarius: Humanity Plus」
Cannonball Adderley/Nat Adderley作。みずがめ座がテーマ。ミステリアス・ムードの中での静から動への変化が印象的です。
「Pisces: Allison's Trip」
Nat Adderley作。うお座がテーマ。ラストはannonballのアルトが先導する美しいメロウ・チューンで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=o05ytPJYvwo
Q-Tip feat. D'Angelo「Believe」、Large Professor「The LP (For My People)」、That Kid Era「iLLy」のサンプリング・ソースとなっています。
Q-Tip feat. D'Angelo「Believe」
https://www.youtube.com/watch?v=fnCa1KxwZPg
Large Professor「The LP (For My People)」
https://www.youtube.com/watch?v=IdP7VY8uEXY
That Kid Era「iLLy」
https://www.youtube.com/watch?v=Cx37r1_VRBk
本作とセットで前述の『Soul Zodiac』やRick Holmes参加のもう1枚『Soul Of The Bible』(1972年)をチェックするのも楽しいのでは?
Cannonball Adderley, Rick Holmes, The Nat Adderley Sextet『Soul Zodiac』(1972年)
Cannonball Adderley Presents The Nat Adderley Sextet Plus Rick Holmes『Soul Of The Bible』(1972年)
Cannonball Adderleyの過去記事もご参照ください。
『Cannonball's Bossa Nova』(1962年)
『Mercy, Mercy, Mercy!』(1966年)