発表年:1996年
ez的ジャンル:ジャズ・ミーツ・MPB
気分は... :真の主役は・・・
今回はジャズ・トランぺッターTerence Blanchardが稀代のメロディ・メイカーであるブラジル人男性シンガー・ソングライターIvan Linsと共にレコーディングしたアルバムTerence Blanchard『The Heart Speaks』(1996年)です。
Terence Blanchard単独名義のアルバムですが、楽曲はすべてIvan Lins作品であり、作者Ivan Lins本人が全面参加しているのですから、実質はIvan Linsとの共演アルバムと呼べるでしょう。アルバムはグラミーのBest Latin Jazz Albumにもノミネートされました。
1962年ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれ、80年代から活躍するジャズ・トランぺッターTerence Blanchardについては、当ブログで紹介するのは初めてです。
一方、MPBを代表する男性シンガー・ソングライターIvan Linsについて、これまで当ブログで紹介したのは以下の5枚。
『Modo Livre』(1974年)
『Chama Acesa』(1975年)
『Somos Todos Iguais Nesta Noite』(1977年)
『Nos Dias De Hoje』(1978年)
『Novo Tempo』(1980年)
Terence Blanchardについては、Winton Marsalisを中心とした新伝承派ジャズ・ミュージシャンの一人として80〜90年代初めのころは注目していましたが、熱心に聴くまでには至りませんでした。
本作『The Heart Speaks』についても、Ivan Lins目当てというのが正直な感想です。
レコーディング・メンバーはTerence Blanchard(tp)、Ivan Lins(vo)、Oscar Castro-Neves(g)、Edward Simon(p)、David Pulphus(b)、Troy Davis(ds)、Paulinho Da Costa(per)、David Bohanovich(cello)、Fred Zlotkin(cello)。
プロデュースはMiles Goodman。
個人的にはIvan Lins目当てなので、彼らしいメロディやヴォーカルが栄えるブラジル音楽寄りの演奏に惹かれてしまいます。その意味では、「Aparecida」、「Antes Que Seja Tarde」、「Meu Pais (My Country)」、「Valsa Mineira」という前半の4曲や、Nana Caymmiに捧げられた「Just for Nana」、Zimbo Trioに捧げられた「Orizimbo and Rosicler」あたりがオススメです。
Ivan LinsとTerence Blanchardの共演という意味では、帝王Miles Davisとの縁も絡む「Congada Blues」が聴き所かもしれません。あとは「Love Dance/Comecar de Novo」も好きです。
Ivan Lins好きの人はぜひチェックしてみてください。
全曲紹介しときやす。
「Aparecida」
Ivan Lins作。オープニングには人気アルバム『Somos Todos Iguais Nesta Noite』(1977年)収録曲としてもお馴染みの楽曲です。ここではスモーキーなBlanchardのミュートの音色が栄えるメロウ・ボッサ調のサウンドで聴かせてくれます。Ivanの繊細なヴォーカルもサウンドとよくマッチしています。この曲に新たな魅力を吹き込んでいるのでは?
「Antes Que Seja Tarde」
Ivan Lins/Vitor Martins作。アルバム『A Noite』(1979年)収録曲のカヴァー。哀愁メロウ・ボッサ調で聴かせてくれます。Blanchardの哀愁トランペットの響きにグッときます。
「Meu Pais (My Country)」
Ivan Lins/Vitor Martins作。Ivanの稀代のメロディ・メイカーぶりを如何なく発揮してくれたビューティフル・バラード。その美メロに寄り添うBlanchardのトランペットが楽曲の素晴らしさを引き立てます。
「Valsa Mineira」
Ivan Lins作。この曲もIvanらしいメロディ・ラインを楽しめます。IvanのスキャットとBlanchardのトランペットのユニゾンがデュオ・アルバムらしくていいですね。全体的に抑えたトーンながらも品格のあるサウンドに好感が持てます。
「The Heart Speaks」
Ivan Lins作。タイトル曲は素敵なインスト・バラードです。二人の共演への思いがBlanchardが奏でる美しい音色に反映されています。
「Congada Blues」
Ivan Lins/Vitor Martins作。Ivan Linsとの共演を希望していた元々は故Miles Davisのために書かれた楽曲ですが、その共演が実現しないまま帝王Milesはこの世を去ってしまいました。そこでIvanがこの曲をBlanchardへプレゼントし、思いを託したようです。BlanchardがMilesに成り代わり、素晴らしい演奏でIvanに応えます。アフロ・ブラジリアン・フィーリングの効かせつつ、それまでの5曲と比べて、しっかりジャズ寄りの演奏になっています。
「Nocturna」
Ivan Lins/Vitor Martins作。Blanchardのロマンティックなソロを満喫できるバラード。
「Just for Nana」
Ivan Lins作。Ivanらしい雰囲気の哀愁バラードを抑えたトーンでしっとり聴かせます。タイトルは偉大なブラジル人女性シンガーNana Caymmiに捧げられたものです。
「Orizimbo and Rosicler」
Ivan Lins/Vitor Martins作。この曲は60年代からコンスタントに活躍していたブラジル人ピアノ・トリオZimbo Trioに捧げられたものです。軽快なジャズ・サンバ調の演奏で盛り上げてくれます。
「Chorus das Aguas」
Ivan Lins/Vitor Martins作。少しブルージーなバラードを落ち着いた雰囲気で聴かせてくれます。
「Love Dance/Comecar de Novo」
Ivan Lins/Gilson Peranzzetta/Paul Williams作。アルバム『Love Dance』(1989年)収録の2曲をメドレーで聴かせてくれます。BlanchardのミュートとIvanの憂いを帯びたヴォーカルの組み合わせが絶妙なバラードに仕上がっています。
「Menino」
Ivan Lins/Vitor Martins作。アルバム『Anjo De Mim』(1995年)収録曲を取り上げています。一気に弾けた開放的な演奏に驚かされます。ブラジリアン・モードのようで、しっかりジャズ・コンボらしい演奏になっています。
「Aparecida (Reprise)」
Ivan Lins作。「Aparecida」のリプライズでアルバムは幕を閉じます。
Ivan Linsの過去記事もチェックを!
『Modo Livre』(1974年)
『Chama Acesa』(1975年)
『Somos Todos Iguais Nesta Noite』(1977年)
『Nos Dias De Hoje』(1978年)
『Novo Tempo』(1980年)