2017年07月17日

Terence Blanchard『The Heart Speaks』

Ivan Linsファン必聴のアルバム☆Terence Blanchard『The Heart Speaks』
Heart Speaks
発表年:1996年
ez的ジャンル:ジャズ・ミーツ・MPB
気分は... :真の主役は・・・

今回はジャズ・トランぺッターTerence Blanchardが稀代のメロディ・メイカーであるブラジル人男性シンガー・ソングライターIvan Linsと共にレコーディングしたアルバムTerence Blanchard『The Heart Speaks』(1996年)です。

Terence Blanchard単独名義のアルバムですが、楽曲はすべてIvan Lins作品であり、作者Ivan Lins本人が全面参加しているのですから、実質はIvan Linsとの共演アルバムと呼べるでしょう。アルバムはグラミーのBest Latin Jazz Albumにもノミネートされました。

1962年ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれ、80年代から活躍するジャズ・トランぺッターTerence Blanchardについては、当ブログで紹介するのは初めてです。

一方、MPBを代表する男性シンガー・ソングライターIvan Linsについて、これまで当ブログで紹介したのは以下の5枚。

 『Modo Livre』(1974年)
 『Chama Acesa』(1975年)
 『Somos Todos Iguais Nesta Noite』(1977年)
 『Nos Dias De Hoje』(1978年)
 『Novo Tempo』(1980年)

Terence Blanchardについては、Winton Marsalisを中心とした新伝承派ジャズ・ミュージシャンの一人として80〜90年代初めのころは注目していましたが、熱心に聴くまでには至りませんでした。

本作『The Heart Speaks』についても、Ivan Lins目当てというのが正直な感想です。

レコーディング・メンバーはTerence Blanchard(tp)、Ivan Lins(vo)、Oscar Castro-Neves(g)、Edward Simon(p)、David Pulphus(b)、Troy Davis(ds)、Paulinho Da Costa(per)、David Bohanovich(cello)、Fred Zlotkin(cello)。

プロデュースはMiles Goodman

個人的にはIvan Lins目当てなので、彼らしいメロディやヴォーカルが栄えるブラジル音楽寄りの演奏に惹かれてしまいます。その意味では、「Aparecida」「Antes Que Seja Tarde」「Meu Pais (My Country)」「Valsa Mineira」という前半の4曲や、Nana Caymmiに捧げられた「Just for Nana」、Zimbo Trioに捧げられた「Orizimbo and Rosicler」あたりがオススメです。

Ivan LinsとTerence Blanchardの共演という意味では、帝王Miles Davisとの縁も絡む「Congada Blues」が聴き所かもしれません。あとは「Love Dance/Comecar de Novo」も好きです。

Ivan Lins好きの人はぜひチェックしてみてください。

全曲紹介しときやす。

「Aparecida」
Ivan Lins作。オープニングには人気アルバム『Somos Todos Iguais Nesta Noite』(1977年)収録曲としてもお馴染みの楽曲です。ここではスモーキーなBlanchardのミュートの音色が栄えるメロウ・ボッサ調のサウンドで聴かせてくれます。Ivanの繊細なヴォーカルもサウンドとよくマッチしています。この曲に新たな魅力を吹き込んでいるのでは?

「Antes Que Seja Tarde」
Ivan Lins/Vitor Martins作。アルバム『A Noite』(1979年)収録曲のカヴァー。哀愁メロウ・ボッサ調で聴かせてくれます。Blanchardの哀愁トランペットの響きにグッときます。

「Meu Pais (My Country)」
Ivan Lins/Vitor Martins作。Ivanの稀代のメロディ・メイカーぶりを如何なく発揮してくれたビューティフル・バラード。その美メロに寄り添うBlanchardのトランペットが楽曲の素晴らしさを引き立てます。

「Valsa Mineira」
Ivan Lins作。この曲もIvanらしいメロディ・ラインを楽しめます。IvanのスキャットとBlanchardのトランペットのユニゾンがデュオ・アルバムらしくていいですね。全体的に抑えたトーンながらも品格のあるサウンドに好感が持てます。

「The Heart Speaks」
Ivan Lins作。タイトル曲は素敵なインスト・バラードです。二人の共演への思いがBlanchardが奏でる美しい音色に反映されています。

「Congada Blues」
Ivan Lins/Vitor Martins作。Ivan Linsとの共演を希望していた元々は故Miles Davisのために書かれた楽曲ですが、その共演が実現しないまま帝王Milesはこの世を去ってしまいました。そこでIvanがこの曲をBlanchardへプレゼントし、思いを託したようです。BlanchardがMilesに成り代わり、素晴らしい演奏でIvanに応えます。アフロ・ブラジリアン・フィーリングの効かせつつ、それまでの5曲と比べて、しっかりジャズ寄りの演奏になっています。

「Nocturna」
Ivan Lins/Vitor Martins作。Blanchardのロマンティックなソロを満喫できるバラード。

「Just for Nana」
Ivan Lins作。Ivanらしい雰囲気の哀愁バラードを抑えたトーンでしっとり聴かせます。タイトルは偉大なブラジル人女性シンガーNana Caymmiに捧げられたものです。

「Orizimbo and Rosicler」
Ivan Lins/Vitor Martins作。この曲は60年代からコンスタントに活躍していたブラジル人ピアノ・トリオZimbo Trioに捧げられたものです。軽快なジャズ・サンバ調の演奏で盛り上げてくれます。

「Chorus das Aguas」
Ivan Lins/Vitor Martins作。少しブルージーなバラードを落ち着いた雰囲気で聴かせてくれます。

「Love Dance/Comecar de Novo」
Ivan Lins/Gilson Peranzzetta/Paul Williams作。アルバム『Love Dance』(1989年)収録の2曲をメドレーで聴かせてくれます。BlanchardのミュートとIvanの憂いを帯びたヴォーカルの組み合わせが絶妙なバラードに仕上がっています。

「Menino」
Ivan Lins/Vitor Martins作。アルバム『Anjo De Mim』(1995年)収録曲を取り上げています。一気に弾けた開放的な演奏に驚かされます。ブラジリアン・モードのようで、しっかりジャズ・コンボらしい演奏になっています。

「Aparecida (Reprise)」
Ivan Lins作。「Aparecida」のリプライズでアルバムは幕を閉じます。

Ivan Linsの過去記事もチェックを!

『Modo Livre』(1974年)
Modo Livre

『Chama Acesa』(1975年)
シャーマ・アセーザ(期間生産限定盤)

『Somos Todos Iguais Nesta Noite』(1977年)
今宵楽しく

『Nos Dias De Hoje』(1978年)
ノス・ヂアス・ヂ・オージェ

『Novo Tempo』(1980年)
ノーヴォ・テンポ
posted by ez at 01:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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