発表年:2017年
ez的ジャンル:敏腕ドラマー系UK産現行ジャズ
気分は... :今聴きたいジャズ!
今回は新作ジャズからUKの敏腕ドラマーRichard Spavenの最新アルバム『The Self』です。
Jose Jamesのバンド・メンバーとしての来日も決まっているUKの敏腕ドラマーRichard Spavenの紹介は、1stソロ・アルバム『Whole Other』(2014年)に続き、2回目となります。
また、オランダ人プロデューサー/キーボード奏者Vincent Helbersらと組んだクロスオーヴァー・ユニットSeravinceのアルバム『Hear To See』(2012年)も当ブログで紹介済みです。
今や彼が関与するだけで、その作品が話題となるという現行ジャズの重要ミュージシャン/プロデューサーRichard Spaven。当然ながら、その新作にも大きな期待が寄せられていましたが、その期待を裏切らない充実の作品を届けてくれました。
まずはフィーチャリング・アーティストにニンマリ。Spavenも1曲参加していたアルバム『Cloak』(2016年)で注目されたオーストラリア、ブリスベン出身で現在はロンドンを拠点とする男性シンガー・ソングライターJordan Rakei、今ジャズを牽引するUS天才ピアニストKris Bowers、Flying Lotus主宰のBrainfeederからリリースされたアルバム『Fool』(2016年)が話題となったオランダ出身のビートメイカーJameszoo、アシッド・ジャズ期から活動し、ドラムンベースにも関わったUK男性シンガーCleveland Watkissがフィーチャーされています。このメンツだけでもグッときますね。
また、The Cinematic Orchestraのギタリストとしても知られ、Spavenが全面プロデュースしたアルバム『City』(2015年)も好評であったStuart McCallumも数曲に参加しています。プロデュースはRichard Spaven自身。
それ以外にDanny Fisher(g)、Dave Austin(g)、Oli Rockberger(key)、Grant Windsor(key)、Petter Eldh(b)といったミュージシャンが参加しています。
個人的にはかなり楽しめた1枚でした。Jazz The New Chapter(JTNC)的な現行ジャズと、UKクラブジャズを自由に行き来している感じがたまりません。その意味では、現行ジャズ好きのみならず、クラブジャズ好きの人も魅了する作品だと思います。
Pharoah Sanders「Greeting to Saud (Brother McCoy Tyner)」、Photek「The Hidden Camera」、Fhloston Paradigm「Letters Of The Past」というカヴァー3曲にもSpavenのセンスが反映されています。
Richard Spavenのアーティストとしての自信が感じられる充実策です。
今、僕が聴きたいジャズ作品はこんな音!
全曲紹介しときやす。
「The Self」
タイトル曲はJordan Rakeiをフィーチャー。アルバムからの先行シングルにもなりました。人力ダブステップ的を叩き出すSpavenのドラミングに、現行ジャズ好きのみならず、クラブジャズ好きの人の心も掴むはず!揺らめく哀愁サウンドをSpavenのビートが切り裂いていく感じが格好良いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=YattHO96UzI
「Law」
Stuart McCallumのギターとSpavenのドラムが織り成す哀愁ジャズ。ここでは人力ドラムンベースなビートを叩き出します。
https://www.youtube.com/watch?v=S8XBkFhHeuM
「Stills」
再びJordan Rakeiをフィーチャー。「The Self」の同タイプのダブステップ調ですが、RakeiとSpavenの相性の良さを感じます。新世代ネオソウルとしても楽しめる哀愁チューンです。哀愁モードの疾走感がたまりません。
「Alfama」
Jameszooとのコラボ。Stuart McCallumもギターで参加しています。前述のMcCallumのアルバム『City』にもつながるフォーキー・ジャズですが、ワールド・ジャズ的なサウンドスケープ感があります。
「Greeting to Saud (Brother McCoy Tyner)」
Kris Bowers(key、el-p)をフィーチャー。タイトルの通り、McCoy Tynerに捧げられたPharoah Sanders作の幻想的なスピリチュアル・ジャズをカヴァー。Pharoah Sandersのオリジナルは当ブログでも紹介した『Elevation』(1973年)に収録されています。ここではBowersの鍵盤の音色が印象的なコズミック・ジャズとして聴かせてくれます。
「The Hidden Camera」
Cleveland Watkissをフィーチャー。ドラムンベースの人気アーティストPhotekのカヴァー。オリジナルはアルバム『Modus Operandi』(1997年)に収録されています。UK産現行ジャズならではのカヴァー・センスがいいですね。WatkissのMCがクラブジャズ的な格好良さを演出しています。この曲にもKris Bowersが参加しています。
「Letters Of The Past」
この曲もCleveland Watkissをフィーチャー。King BrittのユニットFhloston Paradigmのカヴァー。オリジナルはアルバム『The Phoenix』(2014年)に収録されています。この演奏は現行ジャズというよりUKクラブジャズと呼んだ方が相応しいですね。実にRichard Spavenというアーティストのスタンスを表したクロスオーヴァー感覚の1曲だと思います。
「Undertow」
三度、Jordan Rakeiをフィーチャー。憂いを帯びたRakeiのヴォーカル、Stuart McCallumの哀愁ギター、Spavenのドラミングの三者がそれぞれ存在感を放ちます。
「Corleone」
ギター・サウンドが印象的なフォーキー・ジャズ/ワールド・ジャズ的な雰囲気の演奏で締め括ってくれます。
ご興味がある方は、Richard Spaven関連の他作品もチェックを!
Seravince『Hear To See』(2012年)
『Whole Other』(2014年)