発表年:2017年
ez的ジャンル:ブラジル新世代サウンド
気分は... :進化は止まらない・・・
新作アルバムから、Moreno Veloso、Domenico Lancellottiとの+ 2ユニットで知られるブラジル新世代サウンドの重要ミュージシャンAlexandre Kassinの最新ソロ・アルバム『Relax』です。
当ブログでもKassinの名は度々登場しますが、彼自身のアルバム紹介は今回が初めてとなります。
本作『Relax』は前作Kassin『Sonhando Devagar』(2011年)から約6年ぶりのアルバムとなります。Kassin自身のプロデュースです。
レコーディングには+ 2の盟友Domenico Lancellotti(ds)やKassinが近年組んでいるインスト・バンドCometaのメンバー、Alberto Continentino(b)、Danilo Andrade(p、org)、Stephane San Juan(ds、per)、Maria Ritaの公私のパートナーDavi Moraes(g)、70年代から活躍するブラジリアン・ソウルのベテランHyldon(vo、g)、ポルトガルのバンドOrelha Negra、Kassinプロデュースで昨年新作をリリースしたブラジルの女優/シンガーClarice Falcao(vo)等が参加しています。
また、ソングライティングにはHigh LlamasのSean O'Hagan、Galliano、Two Banks Of Four、最近ではThe Diabolical Libertiesの活動で知られるUKクラブミュージックの重要アーティストRob Gallagher、Marker Starling名義でも知られるカナダ人シンガー・ソングライターChris Cummings等も参加しています。
+ 2ユニットのメンバーとSean O'Hagan(High Llamas)といえば、Domenico Lancellottiの最新作『Serra Dos Orgaos』はDomenicoとSean O'Haganとの共同プロデュースです。
Domenico Lancellotti『Serra Dos Orgaos』(2017年)
話を本作に戻すと、国境や時代を超えた、さまざまな音楽を貪欲に取り込み、Kassinワールドをさらに進化させている点が素晴らしいですね。
ブラジル新世代サウンドを余すことなく伝えてくれる傑作アルバムだと思います。
コレを聴かずして何を聴くのか!と絶賛したくなる1枚です。
全曲紹介しときやす。
「O Anestesista」
Kassin作。元々はKassinがポーランドのバンドMitch & Mitchと共演したアルバム『Visitantes Nordestinos』(2017年)への提供曲をセルフ・カヴァー。中原 仁さんのライナー・ノーツに書かれているようにMarcos Valle調の爽快メロウ・チューンに仕上がっています。
「Estrada Errada」
70年代から活躍するブラジリアン・ソウルのベテランHyldonの作品をカヴァー。オリジナルは『Deus A Natureza E A Musica』(1976年)に収録されています。作者HyldonとポルトガルのバンドOrelha Negraとの共演です。キャッチーなギターが先導するポップ・ロック調の仕上がりです。
「Seria O Donut?」
Kassin/Rob Gallagher作。KassinとRob Gallagherの2人は、当ブログでも紹介したGilles Petersonのブラジリアン・オールスター・プロジェクト作品Sonzeira『Brasil Bam Bam Bam』で共同プロデューサーとしてタッグを組んだ仲です。この2人からはクラブ寄りのサウンドをイメージしてしまいますが、予想に反して+ 2ユニット的な音響ポップな仕上がりです。
「A Paisagem Morta」
Kassin作。僕好みの素敵なドリーミー・ポップ。Kassinのポップ職人的な才覚を再認識できます。Stephane San Juanのドラミングがいい感じです。
「Relax」
Kassin/Alberto Continentino作。タイトル曲は2015年に逝去したキーボード奏者/アレンジャー/プロデューサーLincoln Olivettiに捧げられたものらしいです。Kassin流のディスコ・サウンドを満喫できるキャッチーなダンス・チューンです。
「Enquanto Desaba O Mundo」
Kassin作。メキシコ滞在時に書かれたボレロ調の仕上がり。エクスペリメンタルなほのぼの感に和まされます。
「Sua Sugestao」
Kassin作。Domenicoのシャープなドラミングが牽引するダンサブルな近未来的ポップ・チューン。ブラジル新世代らしいサウンドを楽しめます。
「Comprimidos Demais」
Kassin/Alberto Continentino作。Kassin流ポップ・ワールドに魅了されます。ブラジルらしいサウダージなポップ感覚がグッド!
「Digerido」
Kassin/Sean O'Hagan作。High LlamasファンであるKassinは前作『Sonhando Devagar』でもSeanと共作していました。High Llamas的なエッセンスを自身の音世界に上手く取り込んだ仕上がりです。
「Coisinha Estupida」
Carson Parks作。Nancy Sinatra & Frank Sinatraが1967年に大ヒットさせた「Somethin' Stupid」のポルトガル語カヴァー。Kassinが昨年アルバム『Problema Meu』をプロデュースしたブラジル人女性シンガーClarice Falcaoをフィーチャーしています。スタンダードをレトロ・フューチャー感覚のKassinワールドに仕上げています。
ご興味がある方はKassinプロデュースのClarice Falcao『Problema Meu』(2016年)もチェックを!
Clarice Falcao『Problema Meu』(2016年)
「As Coisas Que Nos Nao Fizemos」
Kassin/Chris Cummings作。KassinがChris Cummingsのファンということで実現した共作みたいですね。淡々としていますが、ジワジワと味わいが滲み出てきます。
「Momento De Clareza」
Kassin/Alberto Continentino作。70年代シティ・ミュージック好きの人であれば気に入るであろう都会的なメロウ・グルーヴです。Kassinの懐の深さを感じます。
「Estricnina」
Kassin作。以前に書いた曲のようですが、ようやく自身が納得するサウンドに辿り着いたようです。確かに、オルガン・トリオによるオルタナ・サンバは実に刺激的なサウンドに仕上がっています。
「Taxidermia」
Kassin作。ラストはSerge Gainsbourg調のポエトリー・リーディングで締め括ってくれます。
Kassinの他作品や盟友Domenico、Morenoの作品もチェックを!
Kassin + 2『Futurismo』(2006年)
Kassin『Sonhando Devagar』(2011年)
Domenico + 2『Sincerely Hot』(2002年)
Domenico『Cine Prive』(2012年)
Domenico Lancellotti『Serra Dos Orgaos』(2017年)
Moreno + 2『Maquina de Escrever Musica』(2002年)
Moreno Veloso『Coisa Boa』(2014年)