発表年:2018年
ez的ジャンル:南ロンドン新世代ジャズ/ジャズ・ファンク
気分は... :やはり南ロンドン!
今回は新作アルバムから南ロンドンの注目ジャズ・アーティストの一人、Kamaal Williamsの初ソロ・アルバム『The Return』です。
Kamaal Williams(Henry Wu)は南ロンドン、ベッカム出身のプロデューサー/キーボード奏者。
「Good Morning Peckham」(2015年)をはじめとするHenry Wu名義の作品やK15とのユニットWu15の作品で、Kamaalはプロデューサー/トラックメイカーとしてハウス/ブロークン・ビーツ/ジャズ・ファンク方面で注目されるようになります。
Kamaalがキーボード奏者としてジャズ方面で注目されたのはドラマーYussef DayesとのユニットYussef Kamaalのアルバム『Black Focus』(2016年)でした。Gilles PetersonのBrownswood Recordingsからリリースされ、Shabaka Hutchingsも参加した『Black Focus』は、南ロンドンの新世代ジャズ/ジャズ・ファンクを象徴する1枚として、シーンに大きなインパクトを与えました。
Yussef Dayesの離脱によりYussef Kamaalとしての活動を断念せざるを得なくなったKamaalですが、Yussef Kamaalで掴んだ生演奏ジャズ/ジャズ・ファンクのベクトルをさらに推進すべく、自らのレーベルBlack Focus Recordsを設立し、レコーディングしたのが初ソロ・アルバム『The Return』です。
Kamaal自身がHenry Wu名義でプロデュースし、レコーディング・メンバーはKamaal Williams(el-p、syn)、Pete Martin(b)、Joshua McKenzie(ds)というトリオ編成。また、『Black Focus』にも参加していたUKクロスオーヴァー・ジャズ・ユニットTriforceのギタリストMansur Brownの参加曲もあります。
Lonnie Liston Smith、Roy Ayersあたりの流れを汲むジャズ・ファンク・サウンドを、Kaidi Tatham、DegoといったUKクロスオーヴァー/ブロークン・ビーツの影響も受けつつ、今ジャズ的な生演奏で聴かせてくれる内容に仕上がっています。
特に先行シングルにもなった「Catch The Loop」、コズミックな「Salaam」、Kaidi Tathamあたりとの接点も感じる「Broken Theme」、Mansur Brownがギターで参加している「LDN Shuffle」あたりがおススメです。
南ロンドン新世代ジャズの面白さを実感できる1枚です。
全曲紹介しときやす。
「Salaam」
70年代のLonnie Liston Smith作品を2018年南ロンドン・モードにアップデートさせたようなコズミックなジャズ・ファンクがオープニング。Kamaalのトラックメイカー的センスも感じる演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=_dTch-9KUaQ
「Broken Theme」
ブロークン・ビーツ経由の南ロンドン新世代ジャズといった趣がいいですね。先週紹介したKaidi Tatham『It's A World Before You』あたりの接点も感じるし、USの今ジャズ的な雰囲気もあるのがいいですね。
「The Return」
タイトル曲はビートレスの繋ぎの小曲。
「High Roller」
南ロンドンらしいコズミック・ファンクを楽しめる1曲。もっと長尺で聴きたいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=BvOZVPbTNMU
「Situations (Live In Milan)」
(多分)ミラノでのライブ録音。幻想的な雰囲気が支配する演奏です。
「Catch The Loop」
先行シングルにもなったアルバムのハイライト。今ジャズ×ブロークン・ビーツなハイパー・ジャズ・ファンクは実にエキサイティングだし、ロンドン的サウンドだと思います。KamaalがKaidi TathamやDegoからの影響を受けていることがよく分かる演奏だと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=_AjGzkKn138
「Rhythm Commission」
Lonnie Liston SmithやRoy Ayersの諸作を彷彿させるジャズ・ファンク・サウンドを楽しめる1曲。
「Medina」
ジャズ・ファンク一辺倒ではなく、ジャズな側面を楽しめる演奏です。
「LDN Shuffle」
Mansur Brown参加曲。スリリングなジャズ・ファンクにMansur Brownのギターが加わり、よりパワフルな演奏を楽しめます。
「Aisha」
ラストは夏の夜空のような幻想的なコズミック・サウンドで締め括ってくれます。
未聴の方はYussef Kamaal『Black Focus』(2016年)もぜひチェックを!
Yussef Kamaal『Black Focus』(2016年)