発表年:2018年
ez的ジャンル:新世代南ロンドン・ジャズ
気分は... :ブラック・ディアスポラのジャズ
UK新世代ジャズ・シーンを牽引するドラマー/プロデューサーMoses Boyd率いるMoses Boyd Exodusの初アルバム『Displaced Diaspora』です。
Moses Boydはロンドン出身のドラマー/プロデューサー。これまでMoses Boyd Exodus名義やBinker GoldingとBinker & Moses名義で作品をリリースしています。また、The Peter Edwards Trioのメンバーとしてもアルバムをリリースしています。
当ブログにおけるMoses Boyd参加作品は以下の4枚。
Zara McFarlane『Arise』(2017年)
Sons Of Kemet『Your Queen Is A Reptile』(2018年)
Blue Lab Beats『Xover』(2018年)
Joe Armon-Jones『Starting Today』(2018年)
いずれもUK新世代ジャズ・シーンを象徴する作品であり、Moses Boydの南ロンドン・ジャズ・シーンのキーマンの一人であることがお分かりいただけると思います。
本作と同タイミングでBinker & Mosesの最新作『Alive In The East?』もリリースされたばかりです。
Binker & Moses『Alive In The East?』(2018年)
『Alive In The East?』は純然たる2018年の新作ですが、本作『Displaced Diaspora』はリリース自体は今年ですが、レコーディング自体は2015年のものです。
その意味では、ロンドンの新世代ジャズが大きく注目される以前のプリミティブな衝動を楽しめる1枚に仕上がっています。
本作におけるMoses Boyd Exodusのメンバーは、Moses Boyd(ds)、Binker Golding(ts)、Theon Cross(tuba)、Dylan Jones(as)、Artie Zaitz (g、org)の5名。Sons Of KemetのTheon Cross、Ezra Collective結成前のDylan Jonesもメンバーとして参加しています。
また、アルト・サックス奏者Kevin HaynesKevin Haynes Grupo Elegua、当ブログではお馴染みのUK女性R&B/ネオソウル/シンガーTerri Walker、Blue Lab Beats『Xover』にも参加していた男性ラッパーLouis Vi、現代のロンドン・ジャズ・シーンを代表するUKジャマイカンの女性シンガーZara McFarlaneがフィーチャリングされています。
それ以外に、後にDylan JonesらとEzra Collectiveを結成するJoe Armon-Jones(syn)、注目の女性ジャズ・サックス奏者
僕のイメージするMoses Boyd Exodusらしいサウンドに最も近いのは、2016年に既にシングル・リリースされていた「Rye Lane Shuffle」と「Drum Dance」の2曲。
しかしながら、本作を大きく印象づけるのは、Kevin Haynes Grupo Eleguaをフィーチャーした3曲だと思います。特にKevin Haynes Grupo Eleguaらしい土着的なヨルバ語ヴォーカル&バタ・ドラムと、Moses Boyd Exodusらしいエレクトロニクスを用いた進化形ジャズを融合させた「Ancestors」、「Rush Hour/Elegua」はインパクト大です。スピリチュアル・ジャズとカリビアン・サウンドを融合させた「Marooned In S.E.6」も実にユニークです。
Moses Boydが主宰するExodus Recordsからのリリースです。
南ロンドン・ジャズ・シーンのキーマンMoses Boydの新世代UKジャズのプリミティブな魅力を満喫しましょう。
楽曲は全てMoses Boydのオリジナルです。
全曲紹介しときやす。
「Rush Hour/Elegua」
Kevin Haynes Grupo Eleguaをフィーチャー。パトカーのサイレン音と共に始まるオープニング。Kevin Haynes Grupo Eleguaによるヨルバ語ヴォーカルとJoe Armon-Jonesのシンセ等による進化形ジャズらしいジャズ・ファンク・グルーヴを融合させています。伝統的なものと新しいものを見事に融合させています。
「Frontline」
Kevin Haynes Grupo Eleguaをフィーチャー。Theon Crossのチューバがいい味出して牽引するアフロ・ジャズ的な演奏です。Artie Zaitzのギターも実に効果的です。
「Rye Lane Shuffle」
2016年のシングル・リリース曲であり、Moses Boydの名を高めた1曲です。フューチャリスティック的なアフロ・ジャズ。Moses Boydのドラミングが生み出すグルーヴと鮮やかなホーン・アンサンブルが実に格好良いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=NbF3StGHMUk
「Drum Dance」
これもシングル「Rye Lane Shuffle」収録曲。Moses Boydが進化形ジャズ・ドラマーらしいドラミングでダンスします。エレクトロニクスも効いてUK新世代ジャズらしいダンサブル・チューンに仕上がっています。少しダークな雰囲気も僕好み。
https://www.youtube.com/watch?v=Z-Nbp5MSHk8
「Axis Blue」
2017年のEP「Time And Space」にも収録されていた楽曲ですが、コチラは別ヴァージョン。EP「Time And Space」ヴァージョンはエレクトロニクスが効かせたUK新世代ジャズらしいサウンドでしたが、本ヴァージョンは正統派ジャズ・ユニットらしい演奏となっています。
「City Nocturne」
Zara McFarlaneをフィーチャー。ノクターンのタイトルに相応しいバラードをZara McFarlaneがしっとりと歌い上げます。
「Waiting On The Night Bus」
Terri WalkerとLouis Viをフィーチャー。ネオソウル/Hip-Hop的なエッセンスを取り入れたメロウ・ジャズに仕上がっています。Terri Walker好きの人であれば、気に入るはず。
「Marooned In S.E.6」
Kevin Haynes Grupo Eleguaをフィーチャー。スピリチュアル・ジャズにカリビアン・テイストの開放感を加味したユニークな演奏ですが、コレが結構いい感じです。感動的なサックス・ソロが胸の奥まで響きます。
「Ancestors」
Kevin Haynes Grupo Eleguaをフィーチャー。Kevin Haynes Grupo Eleguaによる土着的なヨルバ語ヴォーカル&バタ・ドラムとエレクトロニクスを用いた進化形ジャズを融合させた本作らしいジャズ・ワールドで締め括ってくれます。
Binker & Mosesの作品もチェックを!
Binker & Moses『Dem Ones』(2016年)
Binker & Moses『Journey To The Mountain Of Forever』(2017年)
Binker & Moses『Alive In The East?』(2018年)