2018年12月16日

Maisha『There Is A Place』

南ロンドンの新世代スピリチュアル・ジャズ☆Maisha『There Is A Place』
There Is A Place [解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤CD] (BRC585)
発売年:2018年
ez的ジャンル:南ロンドン系新世代スピリチュアル・ジャズ
気分は... :カイロの紫のバラ・・・

先程までTVで、綾瀬はるかと坂口健太郎が主演の映画『今夜、ロマンス劇場で』を観ていました。

よく云われているように、この映画は1985年に公開された映画『カイロの紫のバラ(The Purple Rose of Cairo)』にインスパイアされた作品のように思われます。

ウディ・アレン監督、ミア・ファロー主演の映画『カイロの紫のバラ』は、決して大ヒットした映画ではありませんでしたが、当時から気になっていて封切りと同時に映画館で観た記憶があります。その後も何度か映画館で観ました。

『今夜、ロマンス劇場で』を観終わった後、無性に『カイロの紫のバラ』が観たくなってきました。

さて、今回は新作アルバムから南ロンドンの新世代スピリチュアル・ジャズ作品Maisha『There Is A Place』です。Gilles PetersonBrownswood Recordingsからのリリースです。

Maishaは、リーダーのJake Longを中心に南ロンドンを拠点とするジャズ・ユニット。Pharoah SandersAlice Coltraneといったスピリチュアル・ジャズや、アフロ・ジャズ/アフロビートの影響を受けた新世代ジャズを演奏します。

これまでEP「Welcome To A New Welcome」(2016年)をリリースしていましたが、本作『There Is A Place』は初のフル・アルバムとなります。

今時、本編全5曲(国内盤CDはボートラ1曲追加)というのは珍しいですが、Pharoah SandersAlice Coltraneらを継承するスピリチュアル・ジャズ・バンドとしての矜持を感じます。

本作におけるメンバーは、Jake Long(ds)、Nubya Garcia(sax、fl)、Shirley Tetteh(g)、Amane Suganami(p、el-p)、Twm Dylan(b)、Tim Doyle(per)、Yahael Camara-Onono(per)という7名。

メンバーの中でも女性サックス奏者Nubya Garciaは特に有名ですね。当ブログで紹介した作品でも以下の4枚に彼女が参加しています。

 Sons Of Kemet『Your Queen Is A Reptile』(2018年)
 Blue Lab Beats『Xover』(2018年)
 Joe Armon-Jones『Starting Today』(2018年)
 Moses Boyd Exodus『Displaced Diaspora』(2018年)

いずれも今の南ロンドンを象徴する重要作品です。

メンバー以外に、Axel Kaner-Lindstrom(tp)、Johanna Burnheart(violin)、Barbara Bartz(violin)、Madi Aafke Luimstra(viola)、Tom Oldfield (cello)、Maria Zofia Osuchowska(harp)がレコーディングに参加しています。

さらに国内盤CDボーナス・トラックには、南ロンドン・ジャズの最重要ミュージシャンShabaka Hutchings(bass clarinet)がゲスト参加しています。

南ロンドンらしい新世代フィーリングのスピリチュアル・ジャズ/アフロ・ジャズを存分に楽しめます。

静と動のコントラストが印象的な「Osiris」「Kaa」、静寂のスピリチュアル・ジャズ「Azure」「There Is A Place」、クラブジャズ好きも気に入りそうなアッパー「Eaglehurst/The Palace」Shabaka HutchingsとNubya Garciaがスピリチュアル・ジャズを織り成すボートラ「Inside The Acorn」という充実の内容です。

Kamasi Washington『Heaven And Earth』のようなスケールの大きなスピリチュアル・ジャズもいいですが、南ロンドンの活きがいいスピリチュアル・ジャズも負けていません!

全曲紹介しときやす。

「Osiris」
12分近くに及ぶオープニング。いきなりPharoah Sandersばりのスピリチュアル・ジャズが展開されます。Nubya Garciaのエモーショナルなサックスが印象的です。ヴァイオリン、ヴィオラによるアクセントも実に効果的!中盤のパーカッション・ブレイク以降はアフロ・ジャズ仕様でアッパーに疾走します。
https://www.youtube.com/watch?v=AEhzTcI9CFY

「Azure」
和楽のようなNubya Garciaのフルートがナビゲートする静寂のスピリチュアル・ジャズ。思わず目を閉じて瞑想したくなる演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=H4irB-qy8NY ※ライブ映像

「Eaglehurst/The Palace」
ビートが躍動するアフロ・ジャズ。リーダーJake Longのドラム、Shirley Tettehのギターが演奏を牽引します。このアッパーな疾走感はブロークンビーツ好きの人あたりも気に入るのでは?終盤のパーカッション・ブレイクもキマっています。
https://www.youtube.com/watch?v=ajWoJal3xPE

「Kaa」
前半はミステリアスなアフロ・ジャズ、後半はアッパーに躍動するダンシング・アフロ・ジャズという展開です。特に後半の展開はクラブジャズ好きの人も気に入るであろう格好良い展開です。フィナーレはAlice Coltrane調の美しいスピリチュアル・ジャズ調で締め括ってくれます。

「There Is A Place」
本編ラストは、Amane Suganamiの美しいピアノが魂の奥まで響く感動的なスピリチュアル・ジャズ。ここでも和楽のようなNubya Garciaのフルートを聴くことができます。

「Inside The Acorn」
国内盤CDボーナス・トラック。南ロンドン・ジャズの最重要ミュージシャンShabaka Hutchings(bass clarinet)がゲスト参加。HutchingsのバスクラとGarciaのフルートが織り成すスピリチュアル・ジャズは、マインドフルネスな禅ジャズとでも呼びたくなる演奏です。

南ロンドン新世代ジャズの過去記事もご参照下さい。

Sons Of Kemet『Your Queen Is A Reptile』(2018年)
Your Queen Is A Reptile

Blue Lab Beats『Xover』(2018年)
クロスオーヴァー

Joe Armon-Jones『Starting Today』(2018年)
Starting Today [帯解説 / ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (BRC572)

Kamaal Williams『The Return』(2018年)
RETURN

Tenderlonious『Shakedown Featuring The 22archestra』(2018年)
SHAKEDOWN FEAT. THE 22

Moses Boyd Exodus『Displaced Diaspora』(2018年)
DISPLACED DIASPORA
posted by ez at 00:03| Comment(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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