発表年:1980年
ez的ジャンル:レベル・ロックの進化形
気分は... :超デカ盛り!
70年代のロンドンのパンク・ムーブメントを代表するグループであったClashの2回目の登場です。
前回は2ndアルバム『Give 'Em Enough Rope』(1978年)を紹介しましたが、今回は4thアルバム『Sandinista!』(1980年)です。
Rolling Stone誌で大絶賛された3rdアルバム『London Calling』(1979年)の次に発表されたこの4thアルバムは、2枚組だった『London Calling』の上を行く3枚組全36曲というかなりの超デカ盛りの大作です。
今日でこそClashの最高傑作なんて評価もある作品ですが、発表当時は賛否両論分かれ、しかも否定的な意見の方が多かったように思います。また、3枚組ということは価格もそれなりに上がるわけで、それがネックで手が出なかったという人も多かったのでは?
当時Jamファンだった僕などは全く作品を聴いていないにも関わらず、Clashは壁にぶち当たったなどと勝手に決め込んでいまシタ。
リアルタイムでは偏見のもとClashというグループときちんと向き合うことができなかったため、CD時代になってからようやく先入観なく彼らの音楽を聴けるようになった僕ですが、改めて思ったのはClashというグループは単なる勢いだけのパンク・バンドではなく、実に音楽的なグループであったということですね。
それを実感できるアルバムが本作『Sandinista!』だと思いマス。
前作『London Calling』からそれほどのインターバルを置かずに発表された本作には、レゲエ/ダブの影響がかなり顕著に見受けられます。それ以外にもテクノ、ディスコ、モータウン、カリプソ、ロカビリー、トラッドといった多彩の音楽を積極的に取り入れており、当時としてはかなりの実験作と言えたのではないかと思いマス。
ロックという狭い枠組みでしか洋楽を聴いていなかった当時の僕には、とてもこの音楽的な広がりは理解できなかったでしょうね。
逆に、レゲエやダンス・ミュージックが当たり前に聴かれている今日の状況の方が本作を受け入れやすいのかもしれませんよね。Massive Attack等のトリップ・ホップやPrimal Scream『Vanishing Point』(1997年)あたりも本作から少なからず影響を受けているのでは?その意味では、時代をかなり先取りしていたアルバムだと思います。
アルバムにはジャマイカのDJ/プロデューサーMikey Dread、Ian Duryのバックバンドとして有名なBlockheadsのメンバーなど多数のゲスト・ミュージシャンが参加していマス。こうしたメンバーが彼らの音楽的深化をサポートしているのも本作の特徴なのでは?
確かに曲によってバラつきがあり、とっ散らかった印象を受けるのも事実ですが、その未完成なカンジが逆にこのアルバムを魅力的なものにしている気もします。
ちなみにアルバム・タイトルの『Sandinista!』とは、当時アメリカが支援していた中米ニカラグアのサモサ政権を倒したニカラグア自由解放軍のことです。
オススメ曲を紹介しときやす。
「Magnificent Seven」
オープニングはシングルカットもされたダンサブルなナンバー。クラブ系リスナーからもダンスクラシックとして支持が高いですね。
「Hitsville U.K.」
Ellen Foleyのボーカルをフィーチャーした1曲。モータウン調のR&Bな仕上がりっす。この曲もシングルカットされまシタ。
「Junco Partner」
古いニューオリンズR&Bのカヴァー。Clash結成以前からJoe Strummerのレパートリーだったみたいですね。 ここではダビーなレゲエ・チューンに仕上がっていマス。本曲の別バージョン「Version Pardner」も本作に収録されていマス。
「Ivan Meets G.I. Joe」
コンピュータ・ゲームの効果音なども取り入れたダンス・チューン。今聴くと、センス抜群のチープなサウンドがかなりグッドですね。ちなみに本曲ではTopper Headonがボーカルを務めていマス。
「Rebel Waltz」
トラッドでワルツでダビーでレゲエという本作らしい1曲。きっとリアルタイムで聴いていたら、こういった曲の良さは理解できなかっただろうなぁ。
「Somebody Got Murdered 」
「Up in Heaven (Not Only Here) 」
拳を突き上げたくなるストレートなロック・ナンバー2曲。やっぱりこういった曲を聴くと少しホッとしますね。
「Lightning Strikes (Not Once But Twice) 」
アルバムで一番お気に入りのクールなファンキー・グルーヴ。今日聴いてもかなりイケてる1曲だと思いますねぇ。でも、この曲の歌詞って9.11テロを経験した後に聴くと多少複雑な思いが交錯しますね。
「Let's Go Crazy」
この曲はなんとカリプソ調。陽気なトロピカル・サウンドに乗り、痛烈なメッセージが浴びせられるのがいいですなぁ。
「If Music Could Talk」
メランコリックなレゲエ・チューン。ジャジーなサックスの音色も印象的ですね。Mikey Dreadとの共作。
「The Sound of Sinners」
ロカビリー調のナンバー。エコーが効いている分、普通のロカビリーとは異なった印象を受けますな。
「Police on My Back」
Clashらしい疾走感溢れるカッチョ良いロックナンバー。1960年代に活動していたEqualsのカヴァー。
「Call Up」
シングルカットもされたナンバー。レベル・ロッカーとしてのClashらしい1曲。そうさ、召集に応じないのは君の自由さ!
「Lose This Skin」
ゲストのTymon Doggの作品。ボーカル、バイオリンもTymonが務め、まさにTymonの一人舞台の1曲。トラッドだけどアヴァンギャルドな不思議な作品デス。
「Charlie Don't Surf」
痛烈な反戦メッセージをキャッチーなメロディで聴かせてしまう。こういうのもClashらしいね。
「Version City」
見落としされがちだけど、案外Clashはファンキー・グルーヴもイケます!本曲がその好例なのでは?この路線がさらに強調される次作『Combat Rock』への布石となる曲では?
「Living in Fame」
Mikey Dreadのボーカルをフィーチャーしたダビーなレゲエ・チューン。前述のとおり、ダブからの影響が強い本作ですが、そんなダビーな雰囲気を象徴する1曲。彼がこのアルバム全体に与えた影響はかなり大きいですよね。
「Career Opportunities」
子供のボーカルが実にプリティなナンバー。ちなみに本曲をネットで検索すると、カヒミ・カリイもオススメの曲という紹介が多かったですね。
Clash脱退後にMick Jonesが結成したBig Audio Dynamite(B.A.D)の作品もぜひ紹介したいですね。Amazonでの扱いがあることを祈るばかりっす。