2019年10月13日

Marcelo Costa『Vol. 1』

ブラジルのリズム・マスター、初リーダー作☆Marcelo Costa『Vol. 1』
NUMERO UM
発表年:2019年
ez的ジャンル:ブラジリアン・リズム・マスター
気分は... :多摩川氾濫・・・

多摩川が氾濫した模様。
ウチからかなり近い場所での災害なのですが、悠長にTVで映画を見ながら、ブログの記事を書いています。この危機感のなさに自分でも呆れるばかり・・・

新作アルバムからブラジルものの秀逸作Marcelo Costa『Vol. 1』です。

Marcelo Costaは1959年リオデジャネイロ生まれのドラム/パーカッション奏者。

実兄Muri Costaと組んだブラジル・プログレッシブ・ロック・バンドA Barca Do Solでミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせます。

A Barca Do Solが解散した80年代以降はCaetano Velosoをはじめ、Maria BethaniaMarisa MonteAdriana CalcanhottoAna Carolinaなどブラジルを代表するアーティストのレコーディングやライヴ・ツアーに数多く参加しています。

MPBを代表する歌姫Marisa Monteをして、「Marcelo Costaはリズムの名前。ドラムと、あらゆるパーカッションを演奏する。音楽をまとめようと努め、迷える子羊たちを導く牧師」と言わしめるわたりにMuri Costaというミュージシャンの偉大さが現れていると思います。

そんなブラジル音楽シーンを長年に渡って支えてきたリズム・マスターが約45年のキャリアで初のリーダー作としてリリースされたのが本作『Vol. 1』です。

ただし、本作の収録曲は1曲を除き、1994〜1999年にレコーディングされたものであり、約25年の歳月をかけて完成させた自叙伝とも呼びたくなるアルバムです。

レコーディングには、そんなMarceloのキャリアを象徴するように、Caetano VelosoGal CostaAdriana CalcanhottoLulu SantosJaques Morelenbaum、兄Muri Costaといった彼と関わりの深い豪華ゲストが多数参加しています。

Everson MoraesCaculinhaJose Miguel WisnikEveline HeckerLaudir de OliveiraPericles CavalcantiBoca LivreTrio Madeira BrasilDavid Ganc等のアーティストがフィーチャリングされています。

さまざまなゲストを迎え、ゲストの色に合わせてMarceloがサンバを軸に多様なリズム・ワールドを披露してくれます。Marcelo自身のプレイが目立つのではなく、トータルな完成度を目指しているあたりに、Marcelo Costaのアーティストとしての矜持を感じます。

ブラジル音楽ファンにとって、聴き応え十分の1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Meu Bom」
Marcelo Costa Santos作。Caetano Velosoをフィーチャー。Caetanoの弾き語りがアルバムのプロローグ。
https://www.youtube.com/watch?v=Ff1Az3GfzQc

「Na Cadencia do Samba」
この曲のみ近年のレコーディング。Ataulpho Alves/Matilde Alves de Souza/Paulo Gesta作のサンバ名曲「Na Cadencia do Samba」のカヴァー。Everson Moraesのトロンボーンをフィーチャー。女性バック・コーラスを従えサンバ・リズムに乗って、Marcelo自身がヴォーカルをとります。Everson Moraesのトロンボーンがいい味出しています。終盤にはVinicius de Moraesの詩篇が朗読されます。
https://www.youtube.com/watch?v=YGgH2pZW4Z4

「Beija-Me」
Roberto Martins/Mario Rossi作のサンバ名曲をカヴァー。Gal Costa/Caculinhaをフィーチャー。ベテランCaculinhaのオルガンをバックに、Gal Costaが艶ややかなヴォーカルを披露してくれるメロウ・サンバに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=zomQATl_UCM

「Do Fundo do Meu Coracao」
Erasmo Carlos/Roberto Carlo作の80年代のヒット曲をカヴァー。Adriana Calcanhottoをフィーチャーし、しみじみとした雰囲気で聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=XvWVfY0s2UI

「Pesar do Mundo」
Jose Miguel Wisnik/Paulo Neves作。作者Jose Miguel Wisnikのピアノ、ヴォーカル、女性シンガーEveline Heckerのヴォーカル、2017年に逝去したLaudir de Oliveiraのクイーカをフィーチャー。シンプルながらも美しく感動的な音世界を堪能できます。少し寂しげな雰囲気が秋に似合います。
https://www.youtube.com/watch?v=hd_fyZXpqhQ

「Ele Falava Nisso Todo Dia」
Gilberto Gil作。Lulu Santosをフィーチャー。Luluのワイルドなギターを強調したロッキン・チューン。Marceloもロック・バンド出身らしいドラミングで呼応します。
https://www.youtube.com/watch?v=jOjObBGIqHk

「Quem Nasceu」
Pericles Cavalcanti作。個性派男性シンガー・ソングライターPericles Cavalcantiとブラジルを代表するチェロ奏者Jaques Morelenbaumをフィーチャー。さり気ないアコースティック・チューンですが、Morelenbaumのチェロが演奏全体を引き締めてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=UKfGSsQP_EU

「Feitico da Vila」
Noel Rosa/Vadico作のサンバ名曲をカヴァー。Caetano Velosoをフィーチャーし、Zeca Assumpcaoがベースを弾いています。メロウなアコースティック・サンバはCaetano Veloso好きにはたまらない1曲に仕上がっているのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=Fi21RFj6HkE

「Igreja do Pilar」
Toninho Horta作。Toninho Hortaをフィーチャーし、彼の義弟Yuri Popoffがベースを弾きます。Toninho Hortaの素晴らしいギターを満喫できる、大自然の息吹の音像のような美しい演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=3daSu12ne8o

「Alegria」
Arnaldo Antunes作。ベテラン・ヴォーカル・グループBoca Livre、ショーロによる弦楽トリオTrio Madeira Brasilをフィーチャー。Sacha Amback(prog)、Lan Lanh(per)も参加しています。楽しげな雰囲気の中にもモダンなエッセンスも取り入れた素敵なサンバに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=IitVjQm6GiE

「Monsieur」
Muri Costa作。実兄Muri Costaのギター、David Gancのフルートをフィーチャー。Muriのギターが格好良い、疾走感のあるインストです。
https://www.youtube.com/watch?v=RlQG11c9wm8

「Variacoes sobre Coracaozinho (Trilha do filme Tieta do Agreste)」
Caetano Veloso作。Jaques Morelenbaumのチェロをフィーチャー。ラストはMorelenbaumがプロデューサー、Marceloがアシスタント・プロデューサーを務めた映画『Tieta do Agreste』(1997年)のサントラのためにレコーディングされたものの、CD未収録だった楽曲です。厳かな雰囲気でアルバムは幕を閉じます。

今は多摩川氾濫があったとは思えない静けさ・・・
目と鼻の先の出来事なのに現実感がないのはマズイかも?
posted by ez at 01:28| Comment(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]