発表年:2019年
ez的ジャンル:南ロンドン新世代ジャズ・ピアニスト
気分は... :祭典のフィナーレ・・・
新作ジャズから南ロンドン出身の新世代ジャズ・ピアニストAshley Henryのデビュー・アルバム『Beautiful Vinyl Hunter』です。
Ashley Henryは1991年南ロンドン生まれのピアニスト。
ジャマイカにルーツを持つAshleyは父の影響で幼少期よりクラシック・ピアノを学ぶ一方で、ロック、Hip-Hop、グライム等も聴ききながら青春を過ごしていました。
18歳でジャズに目覚め、音楽大学でクラシックとジャズ・ピアノを学び、2016年よりジャズ・ミュージックとして本格的に活動するようになります。
2016年にオーセンティックなコンテンポラリー・ジャズ色の強いデビューEP「Ashley Henry's 5ive」をリリース。
さらに、当ブログでもデビュー・アルバム『Xover』(2018年)を紹介したUKビートメイキング・デュオBlue Lab BeatsのデビューEP「Blue Skies EP」(2016年)のレコーディングにも参加しています。
2017年にはAshley Henry & The RE:ensemble名義でのEP「Easter EP」をリリース。ブロークンビーツ、アフロ、カリビアンのエッセンスを取り入れ、さらにはHip-HopクラシックNas「The World Is Yours」をカヴァーするといったジャズの枠に収まらない音楽性を披露してくれました。
「Easter EP」は2018年には大手Sony Musicからリリースされるほど注目を浴び、そして2019年にSonyから待望のデビュー・アルバム『Beautiful Vinyl Hunter』がリリースされました。
アルバムには女性R&BシンガーJudi Jackson、"今ジャズ"注目のUSトランぺッターKeyon HarroldやTheo Croker、マンチェスターを拠点とするHip-HopアーティストSparkz、シカゴの新世代ドラマー/ビートメイカーMakaya McCraven、Moses Boyd Exodusの活動でも知られるBinker & Moses(Binker Golding/Moses Boyd)がフィーチャリングされています。
それ以外にAshley Henry(p、el-p)以下、Daniel Casimir(b)、Tenderlonious率いる音楽クルー22aの注目ユニットRuby RushtonのメンバーEddie Hick(ds)とFergus Ireland(b)、WaajuのメンバーErnesto Marichales(per)、
The Cinematic OrchestraのLuke Flowers(ds)、Moses Boyd ExodusのArtie Zaitz(g)、南ロンドン・ジャズのアフロ・ジャズ・ファンク・バンドEzra CollectiveのDylan Jones(tp)、Benin City、Hugh、LV & Joshua Idehenのメンバーとしても活躍するJoshua Idehen(vo)、リトアニア出身のドラマーMarijus Aleksa(ds)、ロンドン在住ソマリア出身の女性ジャズ・シンガーSahra Zoe Ahmed Gure(vo)といったミュージシャンがレコーディングに参加しています。
この参加メンバーを眺めただけで興味が尽きませんね。
実際の内容もそんな期待を裏切らない、南ロンドン新世代ジャズの面白さが濃縮された傑作だと思います。
ソウル、Hip-Hop、ブロークンビーツ、グライム、ロック、ラテン、クラシックといった様々なエッセンスを取り込み、新世代ジャズの面白さをあの手この手で聴かせてくれます。
グラミー・ベストR&Bパフォーマンス受賞曲Solange「Cranes In The Sky」、インディ・ロックThe Enemy「Pressure (Instrumental)」、Hip-HopクラシックNas「The World Is Yours」(※国内盤ボーナス・トラック)といったカヴァー・セレクトも本作の面白さを反映しています。
YouTubeに音源が少ないのが残念ですが、今聴くべき新世代ジャズ作品をぜひチェックを!
全曲紹介しときやす。
「Star Child」
女性R&BシンガーJudi Jacksonをフィーチャー。Ashley Henryプロデュース。ネオソウル好きの人も気に入るであろうバラード。AshleyのエレガントなピアノとJudiのしっとり艶やかなヴォーカルの組み合わせがたまりません。
「Realisations」
Ashley Henry/Moses Boydプロデュース。The Cinematic OrchestraのLuke Flowersのドラミングがリードするブロークンビーツ調の南ロンドン新世代ジャズらしい演奏を披露してくれます。Binker GoldingとDylan Jonesによるホーン・サウンドもグッド!
「Between The Lines」
注目のUSトランぺッターKeyon Harrold、UKラッパーSparkzをフィーチャー。Ashley Henryプロデュース。Robert Glasper Experiment『Black Radio』的なJ Dilla経由のHip-Hopジャズを楽しめます。Keyon Harroldのトランペット・ソロも雰囲気あります。
https://www.youtube.com/watch?v=NrfPT3naJRI
「Introspection」
US期待のジャズ・トランぺッターTheo Crokerをフィーチャー。Ashley Henryプロデュース。Theoのトランペットが映えるクールな哀愁ジャズといった雰囲気がいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=VCOlTzjWrRY
「Colors」
Ashley Henryプロデュース。Joshua Idehenがヴォーカルをとるグライム的アプローチの南ロンドン新世代ならではの演奏です。個人的にはアルバムで一番興味を惹かれる演奏です。
「Cranes (In The Sky)」
Solangeのグラミー・ベストR&Bパフォーマンス受賞曲「Cranes In The Sky」をカヴァー(Raphael Saadiq/Solange/Troy Johnson作)。Ashley Henryプロデュース。R&B名曲を気の利いたコンテンポラリー・ジャズとして聴かせてくれます。
「I Still Believe」
シカゴ出身の男性ジャズ・シンガーMilton Suggsをフィーチャー。Ashley Henryプロデュース。ワルツ調のソウル・ジャズです。Milton Suggsの深淵なヴォーカルはDwight Tribleがお好きな人にフィットするのでは?
「Elipsis (Interlude)」
Ashley Henryプロデュース。Ashleyがウーリッツァーをプレイする短いインタールード。
「Sunrise」
Ashley Henryプロデュース。Ferg Ireland(b)、Marijus Aleska(ds)とのピアノ・トリオ演奏ですが、エレガントな疾走感が実に心地好いです。
「Dark Honey (4TheStorm)」
シカゴの新世代ドラマー/ビートメイカーMakaya McCravenをフィーチャー。Ashley Henry/Mo Hausler/Scott McNieceプロデュース。ここでのAshleyはローズを弾き、モーダルな演奏を聴かせてくれます。Makaya McCravenがドラマーとして格好良い腕前を披露してくれます。James Copus、Jaimie Branchという2人のトランぺッターが盛り上げ、終盤にはSahra Zoe Ahmed Gureが幻想的なスキャットを聴かせてくれます。
「Pressure (Instrumental)」
コベントリー出身のインディ・バンドThe Enemy、2007年のデビュー・アルバム『We'll Live And Die In These Towns』収録曲をカヴァー。EP「Easter EP」でもヴォーカル入りカヴァーを取り上げていましたが、本ヴァージョンはインスト・カヴァーです。Ashleyは余程この曲が好きなのでしょうね。荒々しいインディ・ロックを今ジャズ感覚の演奏で聴かせてくれます。Ashley Henryプロデュース。
「Ahmed」
Ashley Henryプロデュース。軽くラテン・フレイヴァーを効かせた品格のあるピアノ・トリオ演奏を聴かせてくれます。
「Lullaby (Rise & Shine)」
再び女性R&BシンガーJudi Jacksonをフィーチャー。Ashley Henryプロデュース。美しくブルージーな演奏をバックに、Judi Jacksonがコケティッシュなヴォーカルを聴かせてくれます。
「Battle」
Binker & Moses(Binker Golding/Moses Boyd)をフィーチャー。Ashley Henryプロデュース。Moses Boyd Exodus好きの人ならば気に入るであろう、Moses Boydのドラミングが炸裂する南ロンドン新世代らしいエキサイティングなバトルを満喫できます。
「The Mighty」
Ben Marcをフィーチャー。プロデュースもBen Marc。エキゾチックな雰囲気のダンサブルな演奏はクラブジャズ好きも気に入るはず!
https://www.youtube.com/watch?v=GGZy6E8aHlA
「The World Is Yours」
国内盤ボーナス・トラック。前述したEP「Easter EP」収録のNasによるHip-Hopクラシックのカヴァーです。Robert Glasper『In My Element』に通じる雰囲気ですね。
ロンドンといえば、ラグビーW杯決勝はイングランドにとって残念な結果になりました。
まぁ、昨晩に限っていえば、イングランドが勝てる雰囲気は全くありませんでしたね。
初戦でニュージーランドに敗れた南アフリカが、準決勝でニュージーランドに完勝したイングランドを力でねじ伏せてしまうというのが面白いですね。
今振り返れば、日本は王者南アフリカ相手に善戦しましたよね。
まさかラグビーW杯でこれほど感動するとは思えなかった、夢のような1か月半に感謝ですね。