発表年:2003年
ez的ジャンル:バルカンの至宝系ジャズ・ボッサ
気分は... :必然性のあるジャズ・ボッサ
ジャズ・ボッサ作品からDusko Goykovich『Samba Do Mar』(2003年)です。
1931年に旧ユーゴスラビア(現ボスニア・ヘルツェゴビナ)のヤイツェ生まれで"バルカンの至宝"と称されるジャズ・トランぺッターDusko Goykovichの紹介は、代表作『Swinging Macedonia』(1966年)に続き2回目となります。
本作『Samba Do Mar』(2003年)は、タイトルから想像できるようにGoykovichがボサノヴァにアプローチした作品です。
本作以降、Goykovichは『Samba Tzigane』(2006年)、『Latin Haze』(2015年)といったジャズ・ボッサ作品をリリースしています。
レコーディング・メンバーはDusko Goykovich(tp)、ハンガリー出身のFerenc Snetberger(g)、マケドニア出身のMartin Gjakonovski(b)、US出身のJarrod Cagwin(ds)という多国籍カルテット。
全10曲。Goykovichのオリジナルが3曲。残る7曲がカヴァー。
Antonio Carlos Jobim、Heitor Villa-Lobosといったブラジル人コンポーザーの作品に加えて、アルゼンチン人ジャズ・ピアニストSergio Mihanovich(1937-2012年)の作品を4曲取り上げている点が実に興味深いです。東欧からの移民の家系であるMihanovichに対して、Goykovichは何か相通じるものを感じたのかもしれませんね。
"バルカンの至宝"Goykovichが突如ブラジル音楽に目覚めて・・・というイメージもありましたが、本作を聴くと、反対になぜこの人は今までこういったジャズ・ボッサ作品をリリースしなかったのだろうと思ってしまいます。
その位、Goykovichの哀愁トランペットとボサノヴァの相性はバッチリです。加えて、Ferenc Snetbergerの素晴らしいギターも本作の魅力向上に大きく貢献しています。彼のプレイのみを聴いていても飽きないくらいです。
ジャズ・ミュージシャンによるジャズ・ボッサ作品は数あれど、これほど必然性を感じるアルバムはそうは多くないと思います。
"バルカンの至宝"による至極のジャズ・ボッサをご堪能あれ!
全曲紹介しときやす。
「Samba Do Mar」
Dusko Goykovich作。軽やかなリズムとは対照的なGoykovichの哀愁ミュート・トランペットにグッとくるタイトル曲。涼しげなSnetbergerのギター、中盤のGjakonovskiの歌うベースも印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=kYGfUDu6X5o
「Jim's Ballad」
Sergio Mihanovich作。しみしみと歌い上げるバラード。憂いを帯びたGoykovichのミュート、優しく語りかけるSnetbergerのギターにウットリしてしまいます。
「Chega De Saudade (No More Blues)」
Antonio Carlos Jobim作品のカヴァーその1。Joao Gilbertoなどでお馴染みの名曲を気品溢れるジャズ・サンバとして聴かせてくれます。甘く切ないGoykovichのフリューゲル・ホーンも味がありますが、それと同じ位目立つのがSnetbergerの技巧派ギター・ソロです。
https://www.youtube.com/watch?v=QvuvH5TYrZs
本曲に関して、当ブログではTania Maria、Daniela Basso/Ernesto Salgueiro、Jon Hendricks、Gretchen Parlatoのカヴァーも紹介済みです。
「Insensatez (How Insensitive)」
Antonio Carlos Jobim作品のカヴァーその2。こちらは哀愁ミュート・トランペットがよく似合うメロウ・ボッサで聴かせてくれます。Snetbergerのギター・ソロも実に雰囲気があります。
https://www.youtube.com/watch?v=JdmCBsZdw1I
本曲に関して、当ブログではTriste Janero、Duke Pearson、Oscar Peterson、Earl Okin、Stacey Kent、Stan Getz & Luiz Bonfa、Flora Purimのカヴァーを紹介済みです。
「Bachianas Brasileiras No. 5」
Heitor Villa-Lobos作。哀愁ジャズの美学のようなものを感じる、美しくも寂しげな演奏の序盤・終盤と、いきなりリズミックになる中盤とのコントラストにグッときます。
https://www.youtube.com/watch?v=FbilHz77p8g
「The Fish」
Sergio Mihanovich作。これは誰しも好きそうなジェントルなメロウ・ボッサに仕上がっています。Goykovichの伸びやかなソロもいいですが、それ以上にSnetbergerのお洒落なギターに惹かれます。
「Quo Vadis」
Dusko Goykovich作。軽やかで瑞々しいジャズ・サンバ。クールに駆け抜けていく感じがいいですね。『Latin Haze』(2015年)でも再演されています。
https://www.youtube.com/watch?v=TqMNqA9c0Zk
「Love And Deception」
Sergio Mihanovich作。ロマンティックなサンバ・カンサォン。GoykovichやSnetbergerのソロもひらすらロマンティックです。
https://www.youtube.com/watch?v=hhhpyOM94fk
「Danca Comigo」
Dusko Goykovich作。透き通った雰囲気の爽快ジャズ・サンバ。Goykovichのハイ・トーンなソロやSnetbergerの瑞々しいソロも素敵です。
https://www.youtube.com/watch?v=tKPc1So-WJ0
「Sunset」
Sergio Mihanovich作。ラストはまさにサンセット・モードな美しいバラードで締め括ってくれます。Goykovichの素敵すぎるミュートを堪能しましょう。
本作を気に入った方は、『Samba Tzigane』(2006年)、『Latin Haze』(2015年)もチェックを!
『Samba Tzigane』(2006年)
Dusko Goykovich and Bigband RTS『Latin Haze』(2015年)
他のDusko Goykovich作品もチェックを!
『Swinging Macedonia』(1966年)
『Belgrade Blues』(1966年)
『Ten To Two Blues』(1971年)
『After Hours』(1971年)
『Slavic Mood』(年)
『Celebration』(1987年)
『Soul Connection』(1994年)
『Bebop City』(1995年)
『Balkan Connection』(1996年)
『In My Dreams』(2001年)
『5 Horns And Rhythm』(2002年)
『Samba Do Mar』(2003年)
『A Handful o' Soul』(2005年)