発表年:2008年
ez的ジャンル:モダン・ボサノヴァ/サンバ
気分は... :新世界を楽しむ・・・
東京アラート中ですが、個人的には色々なことが回り始める予兆を感じています。日常を取り戻すというよりも、新世界に足を踏み入れるという感覚があります。不安がないといえば嘘になるかもしれませんが、それ以上に新世界に順応すべく自分をヴァージョン・アップさせるワクワク感が勝っている気がします。
今回はモダンなボサノヴァ・アルバムPaula Morelnbaum『Telecoteco』(2008年)です。
Paula Morelnbaumは1962年リオ・デ・ジャネイロ生まれの女性シンガー。
1980年にCeu da Bocaのメンバーとしてデビュー。その後、夫のチェロ奏者Jaques Morelenbaumと共にAntonio Carlos JobimのグループBanda Novaに参加し、注目されるようになります。
さらに1995年にはJobimの息子Paulo Jobim、孫のDaniel JobimというJobim親子とMorelenbaum夫妻でQuarteto Jobim-Morelenbaum を結成。
2001にはMorelenbaum夫妻と坂本龍一によるトリオMorelenbaum2/Sakamotoを組み、Jobimに捧げるアルバム『Casa』を発表しています。
その後もソロ・アルバムやJoao Donatoとの共演アルバム、Joo Kraus、Ralf SchmidとのトリオBossarenova Trio名義でのアルバムをリリースしています。
本作『Telecoteco』(2008年)は、ボサノヴァ生誕50周年にちなんだアルバムであり、1930〜50年代に作られた楽曲が中心の構成です。
アルバムには夫Jaques Morelenbaum(cello)をはじめ、Ryuichi Sakamoto(坂本龍一)(p)、Joao Donato(p)、Marcos Valle(vo、el-p)、Leo Gandelman(sax、fl)、Chico Pinheiro(g)、Bajofondo(remix)がスペシャル・ゲストとしてクレジットされています。
もしかしたら、ノスタルジックなボサノヴァ作品をイメージする人も多いかもしれませんが、プログラミング、スクラッチを取り入れた次世代感覚のサウンドや、夫Jaquesをはじめとする優雅な弦の音による実にモダンなボサノヴァ/サンバ作品に仕上がっています。
そんな先入観とのギャップが楽しいアルバムかもしれません。
全曲紹介しときやす。
「Telecoteco」
Murillo Caldas/Marino Pinto作。Beto Villares/Paula Morelenbaumプロデュース。往年のサンバ・ヒットを薄っすらとしたエレクトロニカを織り交ぜて、ブラジル新世代感覚で聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=iwYxi6bvJ0g
「Manha de Carnaval」
Antonio Maria/Luiz Bonfa作。お馴染みの映画『Orfeu Negro(黒いオルフェ)』(1959年)挿入歌。Antonio Pinto/Paula Morelenbaumプロデュース。Ryuichi Sakamoto(坂本龍一)のピアノをフィーチャー。オリジナルの雰囲気を受け継ぐサウダージな哀愁ボッサですが、スクラッチでアクセントをつけるなど一筋縄ではいかぬ仕上がりなのがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=nv7IUrjPa8Q
本曲について、当ブログではDexter Gordon、Gerry Mulligan、Balanco、Astrud Gilberto、Jack Marshall & Shelly Manne、Steen Rasmussen Feat. Josefine Cronholm、Oscar Peterson、Akua Allrich、Claude Ciari, Bernard Gerard And The Batucada's Seven、Diana Panton、Country Comfort、Isabelle Aubret、O Quarteto、Quarteto Forma、Laurindo Almeida、Collage、Nico Gomez & His Orchestraのカヴァーも紹介済みです。ご興味がある方はチェックを!
「Nao me Diga Adeus」
Luis Soberano/Paquito/Joaao Correa da Silva作。当ブログではNara Leao、Bossa Tres、Osmar Militoのカヴァーも紹介済みです。Beto Villares/Paula Morelenbaumプロデュース。Jaques Morelenbaumのチェロ、Chico Pinheiroのギターをフィーチャー。Jaquesのチェロの優雅さ、Pinheiroのギターの躍動感がPaulaのヴォーカルを引き立てます。
https://www.youtube.com/watch?v=it7d2t-55Ng
「O Samba e o Tango」
Amado Regis作。Juan Campodonico/Pablo Bonilla/Paula Morelenbaumプロデュース。Bajofondoがリミックスを手掛けています。サンバとタンゴをミックスさせた名曲ですが、プログラミングを駆使したミステリアスな雰囲気で聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=oee7e-nL2u4
「Love is Here to Stay」
George Garshwin/Ira Garshwin作。Leo Gandelman/Alex Moreira/Paula Morelenbaumプロデュース。Joao Donatoのピアノをフィーチャー。ロマンティックな序盤からリラックスした中盤への緩急がいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=Dv6ws40Dqq8
「Um Cantinho e Voce」
Josee Maria de Abreu/Jair Amorim作。Leo Gandelman/Alex Moreira/Paula Morelenbaumプロデュース。Leo Gandelmanのサックス、フルートをフィーチャー。Paulaの優しい語り口が映えるロマンティック・ボッサに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=JGZK-8ytw44
「Ilusao a Toa」
Johnny Alf作。当ブログでは『Ele E Johnny Alf』(1971年)収録ヴァージョンを紹介済みです。Marcos Cunha/Paula Morelenbaumプロデュース。Marcos Valle(vo、el-p)をフィーチャー。哀愁ボッサのデュエットです。
https://www.youtube.com/watch?v=Sjvu6LEyuAo
「Sei La se Ta」
Alcyr Pires Vermelho/Walfrido Silva作。Beto Villares/Paula Morelenbaumプロデュース。Chico Pinheiroをフィーチャー。クールなサンバ・チューン。ここでも薄っすらとしたエレクトロニカがいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=aEX6LYEQVcQ
「O Que Vier eu Traco」
Alvaiade/Zee Maria作。Marcos Cunha/Paula Morelenbaumプロデュース。BossacucanovaのMarcelinho da Luaがアレンジ&プログラミングで参加。Bossacucanovaらしいセンスでショーロをクラブミュージック感覚で聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=bleJ4EaXOtw
「Voce Naao Sabe Amar」
Dorival Caymmi/Carlos Guinle/Hugo Lima作。Beto Villares/Paula Morelenbaumプロデュース。Joao Donato/Jaques Morelenbaumをフィーチャー。落ち着きのあるオトナな雰囲気が実にいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=L9aFLBzCY8g
「Ternura Antiga」
J. Ribamar/Dolores Duran作。Leo Gandelman/Alex Moreira/Paula Morelenbaumプロデュース。ストリングスを配した哀愁ボッサです。
https://www.youtube.com/watch?v=syPAg5939DY
「Luar e Batucada」
Antonio Carlos Jobim/Newton Mendonca作。Leo Gandelman/Alex Moreira/Paula Morelenbaumプロデュース。Leo Gandelmanのサックス、フルートをフィーチャー。かつて在籍したCeu da Bocaのメンバーもコーラスで参加しています。本編ラストは陽気なサンバで楽しく締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=Wyt1P-zihOs
「Manha de Carnaval (Acoustic Verson) 」
国内盤ボーナス・トラック。「Manha de Carnaval のアコースティック・ヴァージョンです。Jaques Morelenbaum/Paula Morelenbaumプロデュース。Ryuichi Sakamotoをフィーチャー。変化球のアルバム・ヴァージョンもいいですが、オーセンティックなアコースティック・ヴァージョンも味があります。
Paula Morelnbaum関連の他作品もチェックを!
Quarteto Jobim-Morelenbaum『Quarteto Jobim-Morelenbaum』(1999年)
Morelenbaum2/Sakamoto『Casa』(2001年)
Morelenbaum2/Sakamoto『A Day In New York 』(2003年)
『Berimbaum』(2004年)
Paula Morelenbaum/SWR Big Band/Ralf Schmid『Bossarenova』(2009年)
Paula Morelenbaum & Joao Donato『Agua』(2010年)
Bossarenova Trio『Samba Preludio』(2013年)
Bossarenova Trio『 Atlantico 』(2020年)