発表年:1996年
ez的ジャンル:UKトリップ・ホップ
気分は... :ダークな美意識!
Massive Attack、Portisheadと共にUKトリップ・ホップを牽引したTrickyの2ndアルバム『Pre-Millennium Tension』(1996年)です。
1968年イギリス、ブリストル出身のミュージシャン/プロデューサーTricky(本名:Adrian Nicholas Matthews Thaws)の紹介は、衝撃のデビュー・アルバム『Maxinquaye』(1995年)に続き2回目となります。
数日前に紹介したEric B. & Rakim『Follow The Leader』(1988年)の記事内で本作収録の2曲を取り上げた関係で、久々に本作を聴き直したのでエントリーすることにしました。
本作『Pre-Millennium Tension』(1996年)は、『Maxinquaye』(1995年)に続くTricky名義の2ndアルバムです。ただし、この両作品の間にNearly God名義でTerry Hall、Alison Moyet、Neneh Cherry、Bjorkらとのコラボ・アルバム『Nearly God』(1996年)をリリースしています。
本作『Pre-Millennium Tension』は、トリップ・ホップという枠を飛び越えて、Trickyにしか表現できないダークでダウナーな音世界を構築しています。絶望感と緊張感に満ちていますが、そこにTrickyならではのダークな美意識が貫かれているのが魅力です。
プロデュースはTricky自身。
Patrice Chevalier(g)、Martina Topley-Bird(vo)、Rock(vo)、John Tonks(ds)、Pat McManus(violin、p)、Sky(vo)といったミュージシャンが参加しています。
1stシングルとなった「Christiansands」、前述のEric B. & Rakim『Follow The Leader』(1988年)絡みの「Makes Me Wanna Die」と「Lyrics Of Fury」の3曲あたりがハイライトだと思います。
それ以外に「Sex Drive」、シングルにもなった「Tricky Kid」、Chill Rob Gのカヴァー「Bad Dream」もおススメです。
Trickyが到達した孤高のダーク・ワールド。
この唯一無二のダークな音世界の凄みに圧倒されましょう。
全曲紹介しときやす。
「Vent」
深い闇の世界での叫びといった雰囲気のオープニング。聴く側も緊張感が増します。
https://www.youtube.com/watch?v=apl_Muz7RLg
「Christiansands」
アルバムからの1stシングル。映画『Face/Off』(1997年)でも使われていた楽曲です。ダークな美意識が貫かれた本作らしい1曲。Trickyの振り絞るようなヴォーカルとMartina Topley-Birdの女性ヴォーカルのコントラストがいいですね。Doug E Fresh & Slick Rick「La Di Da Di」をサンプリング。
https://www.youtube.com/watch?v=0vtRiHt73iY
「Tricky Kid」
この曲もシングルになりました。USラッパーRockも参加。地元ブリストルの悪ガキ仲間から"Tricky Kid"と呼ばれていた自身のことを歌います。ここではラガ/ダブ調の雰囲気で聴かせてくれます。The Commodores「Zoom」をサンプリング。
https://www.youtube.com/watch?v=M4ijSxDcJ7c
「Bad Dream」
USラッパーChill Rob Gのカヴァー。オリジナルは『Ride the Rythm』(1989年)収録。The Specials「Housebound」をサンプリング。リード・ヴォーカルはMartina。正に悪夢のようなダークな音世界が展開されます。
https://www.youtube.com/watch?v=9TBCR7ZwUH8
「Makes Me Wanna Die」
Eric B. & Rakim「Beats for the Listeners」をサンプリング。この曲もリード・ヴォーカルはMartina。美しくも儚いダウナーな音世界が展開されます。シングルにもなりました。
https://www.youtube.com/watch?v=XyFIIUKAOE8
「Ghetto Youth」
ヴォーカルはSky。ダウナーなトリップ・ホップ・チューンです。
https://www.youtube.com/watch?v=Vintg6ympcQ
「Sex Drive」
このトラックのグルーヴは純粋に格好良いと思います。Trickyのハーモニカによるアクセントもいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=CJ_6AGuRg94
「Bad Things」
押し殺すようなTrickyのヴォーカルとビートレスのサウンドには静かなる怒りを感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=ht8fh2f8Qds
「Lyrics Of Fury」
Eric B. & Rakimのカヴァー。Slick Rick「King」をサンプリング。ヴォーカルはMartina。オリジナルの持つスリリングな疾走感を受け継ぎつつも、Trickyらしいダークなトーンで仕上げています。
https://www.youtube.com/watch?v=w_JSTu2aPhs
「My Evil Is Strong」
Smif-n-Wessun「Sound Bwoy Bureill」をサンプリング。アヴァンギャルドな中にもTrickyの美意識と凄みを感じる1曲に仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=YqTjDimPEM0
「Piano」
ラストは Pat McManusのピアノをバックに、Trickyが噛みしめるようにリリックを重ねていきます。
https://www.youtube.com/watch?v=aiBxWu_CAPg
Trickyの他の初期作品もチェックを!
『Maxinquaye』(1995年)
Nearly God『Nearly God』(1996年)
『Angels with Dirty Faces』(1998年)
Tricky With DJ Muggs And Grease『Juxtapose』(1999年)