発表年:2020年
ez的ジャンル:サウス・ロンドン新世代コラボ
気分は... :ケミストリー!
今回は新作アルバムからサウス・ロンドンの若き才能Tom Mischと同じくサウス・ロンドン出身のドラマーYussef Dayesが共演した話題のコラボ・アルバムTom Misch & Yussef Dayes『What Kinda Music』です。
Tom Mischは1995年サウス・ロンドン生まれ。『Beat Tape 1』(2014年)、『Beat Tape 2』(2015年)といゅたミックス・テープ等を経て、2018年にデビュー・アルバム『Geography』をリリース。各方面で絶賛され、日本でも熱狂的に迎えられました。
一方のYussef Dayesも同じサウス・ロンドン出身のドラマー。サウス・ロンドン出身のプロデューサー/キーボード奏者のKamaal Williams(Henry Wu)とのユニットYussef Kamaalで注目を浴びたミュージシャンです。
Tom Mischの新作として本作に興味を持っている人が多いと思いますが、僕が本作を購入したのはYussef Dayesへの興味からです。
僕の場合、Tom Misch『Geography』を聴いて、Hip-Hop、ジャズ、R&B、ディスコ、ポップ等のエッセンスを吸収したカラフルな音楽性は素晴らしいと思いましたが、その一方で何かが足りない気がして実際に購入するまでには至りませんでした。
そんなTom MischがYussef Dayesと共演すると聞いて、サウス・ロンドンの新世代ジャズ・ドラマーが叩き出すビートが、サウス・ロンドンの若き才能のカラフルな音楽性と組み合わさることで何かケミストリーが起こるような期待がありました。
実際、その期待に応えてくれる内容になっています。
レコーディング・メンバーはTom Misch(vo、syn、g、b、p)、Yussef Dayes(ds、per)、Jordan Rakei(back vo)、Freddie Gibbs(vo)、Rocco Palladino(b)、Kaidi Akinnibi(sax)、Miles James(syn、g)、Tobie Tripp(strings)、Tom Driessler(b)、Joel Culpepper(back vo)、Vula(back vo)、Dave Dayes(vo)、Kareem Dayes(vo)、Peter Misch(vo)。
メイン・プロデュースはTom Misch。それ以外にSyed Adam Jaffrey、Yussef Dayesが共同プロデュースしている曲もあります。
『Geography』の延長を期待する人からすると戸惑う内容かもしれません。Tom Misch自身も、ソロ名義では試すことができなかったサウンドへの挑戦、特にダークな音世界を意識していたようであり、自ずと『Geography』とはかなり色合いが異なる1枚に仕上がっています。
僕のようなサウス・ロンドン新世代ジャズ寄りの音を期待する人間からすると、Yussefの新世代ドラマーの感性がTomの創作意欲を刺激し、彼を新境地に導いていく様子を楽しめます。
二人が刺激し合いながら、このコラボを楽しんでいる感じがいいですね。
少しダークでメランコリックなTom MischとYussef Dayesの新世代ドラマーらしいドラミングを楽しみましょう。
全曲紹介しときやす。
「What Kinda Music」
Yussefのサウス・ロンドンの新世代らしいドラミングが、Tomの音世界を刺激しているのがよく分かるタイトル曲。ストリングスも効果的です。
https://www.youtube.com/watch?v=4az3mKDOrEo
「Festival」
Yussef自身は西アフリカのリズムを意識したようですが、僕には人力ドラムンベース調に聴こえます。いずれにしてもこの疾走するビートは、Tomを新境地に導いているのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=PkVsMATKkw0
「Nightrider」
Freddie Gibbsをフィーチャー。最近ではMadlibとのコラボ・アルバム『Bandana』(2019年) が印象的でした。もっとHip-Hop的なトラックをイメージしていましたが、実際には少し憂いを帯びたメロウ・トラック。抑えたトーンのメランコリックな雰囲気が好きです。Jordan Rakeiもバック・ヴォーカルで参加しています。
https://www.youtube.com/watch?v=ImllpvDwbQ8
「Tidal Wave」
哀愁メロウですが、なかなか味わい深いです。TomもYussefも本作で表現力を深めた証のような1曲に仕上がっているのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=4ak5Vsk0FNI
「Sensational」
エフェクトを用いたメランコリック・サウンドが印象的な小曲。
https://www.youtube.com/watch?v=Zbv9A8vkR64
「The Real」
Tomのビートメイカー的センスが発揮されたトラック。Yussefが叩いたドラム・ループとAretha Franklin「Ain't Nothing Like the Real Thing」ネタの早回しを組み合わせたメランコリック・トラックに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=JFD4lFaPXGo
「Lift Off」
Rocco Palladinoのベースをフィーチャー。ドラム、ベース、ギターのジャム・セッションによるインスト。
https://www.youtube.com/watch?v=-qTn6kue3uM
「I Did It For You」
TomとYussefの2人のみによる演奏。2人の渾身の演奏とその間を彷徨うように浮遊するTomのヴォーカルのバランスが絶妙です。
https://www.youtube.com/watch?v=rYmfRdzcRoA
「Last 100」
サウス・ロンドン新世代らしいメロウ・ソウル。アルバムでも最もキャッチーな1曲なのでは?Tomのギター・ソロもキマっています。
https://www.youtube.com/watch?v=EO5dUydK2vU
「Kyiv」
「Lift Off」と同じくドラム、ベース、ギターのジャム・セッションによるインスト。
「Julie Mangos」
前半のリラックスした展開と一気に加速してアップテンポとなる後半とのコントラストが印象です。特に後半はYussefのサウス・ロンドン新世代らしい縦横無尽のドラミングを楽しむことができます。
https://www.youtube.com/watch?v=56BDXuxNL1M
「Storm Before The Calm」
Kaidi Akinnibiのサックスをフィーチャー。本編のラストはフリー・ジャズな雰囲気でスタートするジャズ・サウンドで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=Vt6OvW7ZSn0
ここからの4曲は国内盤CDボーナス・トラック。
「Saddle」
「Tidal Wave Outro」
「Seagulls」
最初の3曲はTom、Yussef、Rocco Palladinoの3人によるセッションです。Tomがこうしたジャム・セッション的な音作りに開眼したのも本作の成果なのでは?
「What Kinda Music (Jordan Rakei Remix)」
タイトル曲「What Kinda Music」のJordan Rakeiによるリミックス。フロア向けのキャッチーなダンス・チューンに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=Ye6I1Uih0n4
ご興味がある方はTom Misch、Yussef Dayesの他作品もチェックを!
Tom Misch『Beat Tape 1』(2014年)
Tom Misch『Beat Tape 2』(2015年)
Yussef Kamaal『Black Focus』(2016年)
Tom Misch『Geography』(2018年)