発表年:1975年
ez的ジャンル:N.Y.ソウルフル・ジャズ
気分は... :逍遥遊・・・
今回は1930年代後半からシンガー、女優として活躍してきた"Ice Beauty"Lena Horneが映画音楽の巨匠Michel Legrandと共演したアルバムLena Horne & Michel Legrand『Lena & Michel』(1975年)です。
Lena Horne(1917-2010年)はN.Y.ブルックリン出身。
父は黒人と白人のハーフ、母はアフリカン・アメリカン・シアターの女優という家系に生まれ、1938年にミュージカル映画『The Duke is Tops』で、美人ジャズ歌手としてデビュー。
アフリカ系アメリカ人の女優として差別的な待遇を受けた経験から、公民権運動に参加するなど高い政治意識を持っていました。夫であった白人ピアニスト/指揮者Lennie Haytonと共にフランスで活動していたこともあります。
Michel Legrandとの共演アルバムとなる本作『Lena & Michel』(1975年)は、70年代のLena Horneを代表する1枚であり、彼女のソウルフルな魅力を味わえる1枚に仕上がっています。
N.Y.レコーディングであり、レコーディングにはLena Horne(vo)、Michel Legrand(cond)
The Howard Roberts Chorale(back vo)、Cornell Dupree(g)、Joe Beck(g)、Paul Griffin(p)、Richard Tee(org)、Ron Carter(b)、Grady Tate(ds)、Ralph MacDonald(per)、(tp)、(tp)、(tp)、(tp)、Ray Beckenstein(fl)、Seymour Barab(cello)等のミュージシャンが参加しています。
プロデュースはMichel LegrandとNorman Schwartz。
Lena Horneの他作品を聴いたことがなく、Michel Legrandの名とバッキングを務める名うてのミュージシャンの面々に惹かれて本作を購入したというのが正直なところです。
そんな主役そっちのけで聴いた不届き者の僕ですが、アルバムを聴き終える頃にはLena Horneの豊かな表現力にすっかり魅了されていました。基本はジャズ仕込みのシンガーだと思いますが、LegrandやN.Y.の名うてのミュージシャンたちが彼女のソウルフルな魅力を引き出すことに成功しています。
個人的にはソウルフルな魅力を満喫できる「Being A Woman」、「Nobody Knows」、ジャズ・サンバのエッセンスを取り入れた「Let Me Be Your Mirror」、そして「I Got A Name」、「Loneliness」、「Everything That Happens To You, Happens To Me」、「Sad Song」といった感動バラードがおススメです。
ベテラン・シンガーらしい芳醇な魅力を堪能しましょう。
全曲紹介しときやす。
「I Will Wait For You」
Michel Legrandが音楽を担当し、第17回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した、Jacques Demy監督のミュージカル映画『Les Parapluies de Cherbourg(シェルブールの雨傘)』(1964年)のテーマ曲の英語カヴァー(Michel Legrand/Jacques Demy作)。お馴染みの名曲をソウルフル&スウィンギーに聴かせてくれます。Lenaの雰囲気のあるヴォーカルをRon Carterのベース、Richard Teeのオルガンが盛り上げてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=acfGTPSUDLo
「I Got A Name」
スポーツ・アクション映画『The Last American Hero』(1973年)の主題歌をカヴァー(Charles Fox/Norman Gimbel作)。オリジナルを歌っていたのはJim Croce。ビューティフル・バラードをベテラン・シンガーらしい表現力で感動的に歌い上げます。Ray Beckensteinのフルート、Seymour Barabのチェロが感動を盛り上げてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=-HXRBzN1DFY
「Nobody Knows」
Michel Legrandが音楽を手掛けた映画『The Magic Garden Of Stanley Sweetheart』(1970年)の主題歌をカヴァー(Alan Bergman/Marilyn Bergman/Michel Legrand作)。オリジナルを歌っていたのはBill Medley。N.Y.レコーディングらしい都会的なバッキングがLenaのソウルフルな魅力を見事に引き出しています。
https://www.youtube.com/watch?v=rJBR0gsGv-M
「Being A Woman」
Hal Hackady/Larry Grossman作。アルバムで最もソウル・フィーリングが色濃く出た曲。僕の一番のお気に入り曲でもあります。アルバム全編この雰囲気でも良かった位ですね。トランペット・ソロも格好良いです!
https://www.youtube.com/watch?v=STv0DDquZxM
「Let Me Be Your Mirror」
Hal David/Michel Legrand作。ジャズ・サンバのエッセンスを取り入れたメロウ・グルーヴは僕好み。Lenaの生き生きとしたヴォーカルと都会的なメロウ・サウンドの組み合わせがサイコー!
https://www.youtube.com/watch?v=L0q4kaJQ_2k
「Loneliness」
Ken Ascher/Paul Williams作。Paul Williamのオリジナルはアルバム『A Little Bit Of Love』(1974年)に収録されています。情感を見事にコントロールしたLenaの表現力が際立つ素敵なバラード。孤独に負けない不屈の心を感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=Y9wyql42Mrg
「Time In A Bottle」
USチャートNo.1となったJim Croceの大ヒット曲をカヴァー(Jim Croce作)。哀愁バラードを堂々とドラマティックに歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=v-YQzVg14fI
「Everything That Happens To You, Happens To Me」
Hal David/Michel Legrand作。味わい深いバラードながらポップな魅力もあるのがいいですね。Hal David絡みということで、Dionne Warwickが歌うHal David/Burt Bacharach作品のような趣があります。
https://www.youtube.com/watch?v=osPjqerSxPE
「Sad Song」
Ken Ascher/Paul Williams作。「Loneliness」と同じく、Paul Williamのオリジナルはアルバム『A Little Bit Of Love』(1974年)に収録されています。ベテラン・シンガーらしい人生の年輪を感じる歌いぶりが実に味わい深いです。
https://www.youtube.com/watch?v=juUBEdB3fV4
「I've Been Starting Tomorrow All Of My Life」
Hal David/Michel Legrand作。バック・コーラス隊を従えて、ゴスペル・フィーリングで歌い上げます。ミュージカルの一場面のような盛り上がりです。
https://www.youtube.com/watch?v=rUprFndf91U
「Thank You Love」
Bob Freedman作。夫婦の愛に感謝する感動バラード。
https://www.youtube.com/watch?v=9FldFnKEBoI
「One At A Time」
ラストはMichel Legrandが音楽を担当した、Jacques Deray監督、Alain Delon主演の映画『La Piscine(太陽が知っている)』(1969年)の主題歌を英語歌詞でカヴァー(Alan Bergman/Marilyn Bergman/Michel Legrand作)。最初の英語ヴァージョンは(多分)Jack Jones(1971年)ではないかと思います。ラストはスウィンギーにリラックスした演奏で締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=HMk9d_B66G8
ご興味がある方は、本作でも取り上げたMichel Legrandのサントラ作品、『Les Parapluies de Cherbourg(シェルブールの雨傘)』(1964年)、『La Piscine(太陽が知っている)』(1969年)あたりもチェックしてみては?
『Les Parapluies de Cherbourg(シェルブールの雨傘)』(1964年)
『La Piscine(太陽が知っている)』(1969年)