発表年:1973年
ez的ジャンル:スウェーデン産女性ジャズ・ヴォーカル
気分は... :スイングしなけりゃ意味ないね!
今回は『サバービア』誌にも掲載された女性ジャズ・ヴォーカル作品Alice Babs『Music With A Jazz Flavour』(1973年)です。
Alice Babs(1924-2014年)は、スウェーデンの国民的女性シンガーとして活躍した人。
15歳でデビューし、50年代後半からはジャズ・シンガーとして数多くの作品をリリースしています。彼女を有名にしたのがジャズ・ジャイアントDuke Ellingtonとの共演。TVで偶然Aliceを見たEllingtonが気に入り、Ellingtonが1974年に亡くなるまでの約10年間に渡り、数多くの共演を果たしました。
本作『Music With A Jazz Flavour』(1973年)は、鍵盤奏者Nils Lindbergをリーダーとするオーケストラがバッキングを務めています。アレンジもNils Lindbergです。
本作が『サバービア』誌にも掲載され、下の世代の人々から注目されたのは、Carole Kingの絶品カヴァー「Been To Canaan」への評価です。正直、僕も「Been To Canaan」1曲ねらいで本作を購入しました。
サバービア好きの人が喜びような曲は「Been To Canaan」のみですが、女性ジャズ・ヴォーカル好きの人であれば楽しめると思います。彼女のヴォーカリストとしての間口の広さ、表現力の豊かさを実感できます。
「Been To Canaan」以外であれば、
スウィンギーな「Song For The Dreamer」、ロマンティック・バラードの「My Ship」や「A Hundred Years From Today」、もう1曲のCarole Kingカヴァー「Tapestry」、Duke Ellingtonの名曲カヴァー「It Don't Mean A Thing(スイングしなけりゃ意味ないね)」あたりがおススメです。
スウェーデンの国民的女性シンガーの表現豊かなジャズ・ワールドを満喫しましょう。
全曲紹介しときやす。
「Song For The Dreamer」
John Lewis/Margo Guryan作。オリジナルは1962年のNancy Harrowヴァージョン。寛いだスウィンギー感が心地好いです。Aliceの語り口にもベテランらしい落ち着きがあっていいですね。終盤のホーン・アンサンブルもいい雰囲気です。
https://www.youtube.com/watch?v=pYLBJdq8rqc
「My Ship」
Ira Gershwin/Kurt Weill作のポピュラー・スタンダードをカヴァー。元々はブロードウェイ・ミュージカル『Lady in the Dark』(1941年)のために書かれた楽曲です。美しいストリングスをバックに、情感豊かなヴォーカルを聴かせてくれるロマンティック・バラードに仕上がっています。Rune Gustafssonの素敵なギター・ソロにも注目です。
https://www.youtube.com/watch?v=wcnMFj0zeko
「Been To Canaan」
Carole King作品をカヴァー。オリジナルはアルバム『Rhymes & Reasons』(1972年)収録。前述のように本作の再評価を決定づけた1曲。ファンキー・ベース、ガット・ギター、軽快なコンガ、ドラムのバッキングとはつらつとしたAliceのヴォーカルが織り成す、至極の爽快グルーヴィー・チューン。そよ風のような気持ちよさがありますね。
https://www.youtube.com/watch?v=SRTW2WJkL6w
「Flow Gently, Sweet Afton」
スコットランド民謡をカヴァー。ハープシコードの音色が印象的な牧歌/トラッド的な仕上がりです。
https://www.youtube.com/watch?v=n5dDZvPEq8E
「Hodgy」
Alice Babsのオリジナル。タイトルはDuke Ellington楽団のメンバーであったJohnny Hodgesのニックネームからつけたもの。Alice自らがピアノを弾いて歌うブルースです。
https://www.youtube.com/watch?v=5BrJHvQz2rE
「Tapestry」
Carole King作品のカヴァーその2。名盤『Tapestry』(1971年)のタイトル曲です。北欧ジャズ・シンガーならではの表現力で感動的なバラードを聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=qeY2zy5aSCU
「It Don't Mean A Thing」
Duke Ellington/Irving Mills作の名曲「スイングしなけりゃ意味ないね 」をカヴァー。Duke Ellingtonにベタ惚れされた女性シンガーとしての面目躍如といったところでしょうか。スウィンギーで軽やか案バッキングも含めて素晴らしい仕上がりです。
https://www.youtube.com/watch?v=T7I1cV4JPPc
「How About A Blues」
Alice Babs/Nils Lindberg作。Aliceが雰囲気たっぷりのスキャットを聴かせてくれるブルース。
https://www.youtube.com/watch?v=7Yy8QExMGn8
「Checkered Hat」
Judy Spencer/Norris Turner作。この曲もDuke Ellington楽団のメンバーであったJohnny Hodgesに捧げられた曲のようです。ノスタルジックな雰囲気にグッとくるムーディーなバラードです。
https://www.youtube.com/watch?v=i0XumHaBiWU
「A Hundred Years From Today」
Ned Washington/Victor Young/Joe Young作。本編のラストはポピュラー・スタンダードのカヴァー。抑えたトーンのバッキングがAliceの素敵なヴォーカルを引き立てるロマンティック・バラードです。
https://www.youtube.com/watch?v=_T6UNpEIfr4
「Natural Affection」
再発国内CDボーナス・トラックその1。1978年のレコーディング。ピアノ・トリオをバックに品格のあるヴォーカルを聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=OdThL2zhOfE
「Say When」
再発国内CDボーナス・トラックその2。1978年のレコーディング。ピアノ・トリオをバックにベテランらしい表現力で楽しませてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=kOzArxPu3lE
オリジナル・アルバムのCD化はあまり進んでいませんが、ご興味がある方はチェックを!
『Alice Babs & The Swe-Danes』(1959年)
Alice Babs & Duke Ellington『Serenade to Sweden』(1966年)
Alice Babs/Duke Ellington/Nils Lindberg『Far Away Star』(1984年)