発表年:2020年
ez的ジャンル:UK次世代ジャズ・コンピ
気分は... :濃密な2枚組!
今回は新作アルバムから話題のコンピ作品Various『Blue Note Re:Imagined』です。
本作はUKのDrccaとUSのBlue Noteがタッグを組み、UK新世代ジャズを中心とした新鋭アーティスト達が、Blue Noteに残されたジャズ名曲をカヴァーするCD2枚組の企画作品です。
参加したアーティストはJorja Smith、Ezra Collective、Poppy Ajudha、Jordan Rakei、Skinny Pelembe、Alfa Mist、Ishmael Ensemble、Nubya Garcia、Steam Down、Blue Lab Beats、Yazmin Lacey、Fieh、Mr Jukes、
Shabaka Hutchings、Melt Yourself Down、Emma-Jean Thackrayという16組。さらに国内盤ボーナス・トラックでは日本人ビートメイカーKan Sano(佐野観)が参加しています。
単なるカヴァーではない、新鋭アーティスト達によるBlue Note名曲の現在進行形の解釈を楽しめます。
新鋭アーティストといっても、既に知名度の高いアーティストから先物買いの無名アーティストまでバラツキがあるところも魅力です。
オリジナルと聴き比べるのも楽しいですが、オリジナルを知らずとも、またジャズ・ファンで無くとも
南ロンドン新世代ジャズを中心とした今のUK音楽シーンの面白さが凝縮されたナイス・コンピだと思います。
全曲紹介しときやす。
Jorja Smith「Rose Rouge」
オリジナルSt Germain『Tourist』(2000年)収録。
デビュー・アルバム『Lost & Found』(2018年)が高い評価を得ていた女性R&BシンガーJorja Smithがフランス人ハウス/テクノ/Nu JazzアーティストSt Germainの人気クロスオーヴァー・チューンをカヴァー。改めて、St Germain『Tourist』がBlue Noteからのリリースというのが面白いですよね。
オリジナルはDave Brubeck Quartet「Take Five」、Marlena Shaw「Woman of the Ghetto (Live)」のサンプリングが印象的でしたが、ここではJorja Smithが「Woman of the Ghetto」ネタ部分をうまく歌いこなし、幻想的かつクールなジャズ・ダンサーに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=HwSfURSe18Q
(オリジナル)St Germain「Rose Rouge」
https://www.youtube.com/watch?v=6QImCMjW-PM
『Tourist』(2000年)
Ezra Collective「Footprints」
オリジナルWayne Shorter『Adam's Apple』(1966年)収録。人気キーボード奏者Joe Armon-Jonesも在籍する南ロンドンのアフロ・ジャズ・ファンク・バンドEzra CollectiveがWayne Shorterの名曲をカヴァー。J Dilla以降のジャズを感じる現在進行形ジャズらしいビート感覚で楽しませてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=I1O6Fg2-Stg
(オリジナル)Wayne Shorter「Footprints」
https://www.youtube.com/watch?v=3XvJFW0DHbU
『Adam's Apple』(1966年)
Poppy Ajudha「Watermelon Man (Under The Sun)」
オリジナルHerbie Hancock『Takin' Off』(1962年)収録。Tom Misch『Geography』(2018年)、Moses Boyd『Dark Matter』(2020年)にも参加していた女性シンガーPoppy AjudhaがHerbie Hancockの名曲をカヴァー。この名曲を次世代ネオソウルなメロウ・チューンで聴かせてくれる実に新鮮な「Watermelon Man」です。
https://www.youtube.com/watch?v=Dotx0uHg-pg
(オリジナル)Herbie Hancock「Watermelon Man」
https://www.youtube.com/watch?v=_QkGAaYtXA0
『Takin' Off』(1962年)
Jordan Rakei「Wind Parade」
オリジナルDonald Byrd『Places and Spaces』(1975年)収録。オーストラリア出身、ロンドンを拠点に活動する次世代ネオソウル・シンガー/ソングライター/マルチ奏者Jordan Rakeiの参加は嬉しいですね。そんな彼がMizell BrothersのSky High Productionsにチャレンジ!って感じですかね。彼による一人スカイ・ハイ・サウンドもアーバン・メロウな魅力があっていいですよ!
https://www.youtube.com/watch?v=c8xZB5bWTbI
(オリジナル)Donald Byrd「Wind Parade」
https://www.youtube.com/watch?v=uoCS0LQ5so8
『Places and Spaces』(1975年)
Skinny Pelembe「Illusion (Silly Apparition)」
オリジナルAndrew Hill『Change』(1966年)収録。南アフリカのヨハネスブルグ生まれで、昨年 Gilles PetersonのBrownswood Recordingsからアルバム『Dreaming Is Dead Now』をリリースしたマルチ奏者Skinny Pelembeが、天才ピアニストAndrew Hillの作品をカヴァー。アフロ・スピリチュアルな雰囲気が印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=UoHEaV0a-Zg
(オリジナル)Andrew Hill「Illusion」
https://www.youtube.com/watch?v=XueShCJ2_yk
『Change』(1966年)
Alfa Mist「Galaxy」
オリジナルEddie Henderson『Sunburst』(1975年)収録。J Dillaの影響を感じるデビュー・アルバム『Antiphon』(2017年)でシーンに大きなインパクトを与えた、イーストロンドン出身の新世代ジャズ・ピアニストAlfa Mistの登場。ピアニストではなくトランぺッターの作品を取り上げるところが面白いですね。僕のイメージするAlfa Mistよりもエキサイティングな感じがします。こういった企画作品だからこその選曲、演奏かもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=iAvVQgvjeZ8
(オリジナル)Eddie Henderson「Galaxy」
https://www.youtube.com/watch?v=5HBVsFPeGXI
『Sunburst』(1975年)
Ishmael Ensemble「Search for Peace」
オリジナルMcCoy Tyner『The Real McCoy』(1967年)収録。サックス奏者Pete Cunningham率いるジャズ・エレクトロニカ・グループIshmael Ensemble。昨年デビュー・アルバム『A State Of Flow』をリリースしています。McCoy Tynerのバラードを幻想的な雰囲気で聴かせてくれます。大自然をテーマにしたドキュメンタリーのエンディングテーマにフィットしそうです。
https://www.youtube.com/watch?v=B-964KSiu_E
(オリジナル)McCoy Tyner「Search for Peace」
https://www.youtube.com/watch?v=9XVNzU9OqMc
『The Real McCoy』(1967年)
Nubya Garcia「A Shade of Jade」
オリジナルJoe Henderson『Mode For Joe』(1966年)収録。南ロンドン次世代を牽引する一人、女性サックス奏者Nubya Garciaの登場。彼女がジョー・ヘンをどのように調理するのかは興味深かったですが、オーソドックスな中にも南ロンドン新世代ならではのフィーリングを織り交ぜた演奏で楽しませてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=4kAzCIogkoI
(オリジナル)Joe Henderson「A Shade of Jade」
https://www.youtube.com/watch?v=L_Wy6t56msI
『Mode For Joe』(1966年)
ここまでがDISC1です。続いてDISC2に突入!
Steam Down feat Afronaut Zu「Etcetera」
オリジナルWayne Shorter『Et Cetera』(1980年)収録。Steam Downは南ロンドンで毎週イベントを主宰しているアーティスト・チームらしいです。ジャズ×アフロなクロスオーヴァー感覚が絶妙です。
https://www.youtube.com/watch?v=WL6mMhkkyL4
Wayne Shorter「Etcetera」
https://www.youtube.com/watch?v=lEHAelwHYeo
(オリジナル)Wayne Shorter『Et Cetera』(1980年)
Blue Lab Beats「Montara」
オリジナルBobby Hutcherson『Montara』(1975年)収録。当ブログでも絶賛した期待のUKビートメイキング・デュオBlue Lab Beatsが定番サンプリング・ソースとても人気の名曲をカヴァー。彼らお得意のジャズ・フィーリングに満ちたJ Dilla経由のビートメイキングを満喫できます。ヴァイヴ、フルート、トランペットの音色が心地好いです。
https://www.youtube.com/watch?v=nH0epWTAtQ8
(オリジナル)Bobby Hutcherson「Montara」
https://www.youtube.com/watch?v=J8XogeXBXVk
『Montara』(1975年)
Yazmin Lacey「I’ll Never Stop Loving You」
オリジナルDodo Greene『My Hour of Need』(1962年)収録。Jorja Smithに続くネオソウル・ディーヴァYazmin Laceyを起用。少し気怠いヴォーカルがフィットするジャジー・バラードです。
https://www.youtube.com/watch?v=5Ci7nd4FGmE
Dodo Greene「I’ll Never Stop Loving You」
https://www.youtube.com/watch?v=5va93Houmew
(オリジナル)Dodo Greene『My Hour of Need』(1962年)
Fieh「Armageddon」
オリジナルWayne Shorter『Night Dreamer』(1964年)収録。ノルウェー、オスロを拠点とする女性ヴォーカルSofie Tollefsbol率いるネオソウル・バンドFiehの登場。ロンドンでも注目された彼らは2019年にDecca Recordsからデビューアルバム『Cold Water Burning Skin』をリリースしています。スケールの大きな演奏とSofieのコケティッシュなヴォーカルは南ロンドン新世代ジャズとシンクロする音世界です。
https://www.youtube.com/watch?v=e4j_rDA-eo0
(オリジナル)Wayne Shorter「Armageddon」
https://www.youtube.com/watch?v=nNIeiB5ZUzM
『Night Dreamer』(1964年)
Mr Jukes「Maiden Voyage」
オリジナルHerbie Hancock『Maiden Voyage』(1965年)収録。Mr Jukesは、UKロック・バンドBombay Bicycle ClubのフロントマンJack Steadmanのソロ・プロジェクト。お馴染みのジャズ名曲を重厚なコーラスとジャズ・フィーリングのビートメイキングによる新世代感覚で聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=DKyQeJXPmxY
(オリジナル)Herbie Hancock「Maiden Voyage」
https://www.youtube.com/watch?v=Q-DGCQ-zXZ8
『Maiden Voyage』(1965年)
Shabaka Hutchings「Prints Tie」
オリジナルBobby Hutcherson『San Francisco』(1970年)収録。南ロンドン次世代ジャズをリードする代表格であるサックス奏者Shabaka Hutchings。取り上げたのはBobby Hutcherson作品。オリジナルの持つ不穏な雰囲気を見事にShabaka Hutchingsならではの音世界に取り込んでいますね。居心地の悪さが魅力の演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=yZDEIqN6Mxg
(オリジナル)Bobby Hutcherson「Prints Tie」
https://www.youtube.com/watch?v=UGt65Qxb7mI
『San Francisco』(1970年)
Melt Yourself Down「Caribbean Fire Dance」
オリジナルJoe Henderson『Mode For Joe』(1966年)収録。Pete Warehamを中心に2012年に結成されたクロスオーヴァーなジャズ・ユニットMelt Yourself Down。かつてはShabaka Hutchingsも参加していました。オリジナルの持つ呪術的パワーを受け継ぎつつ、現在のUKらしいアフロ・ジャズな電脳ダンス・チューンに仕上がっています。クラブジャズ/クロスオーヴァー好きの人も気に入るはず!
https://www.youtube.com/watch?v=CZ9p1k6XYzU
(オリジナル)Joe Henderson「Caribbean Fire Dance」
https://www.youtube.com/watch?v=CbquuL5Kamk
Joe Henderson『Mode For Joe』(1966年)
Emma-Jean Thackray「Speak No Evil(Night Dreamer)」
オリジナルWayne Shorter『Speak No Evil(1964年)、『Night Dreamer』(1964年)収録。本編ラストは女性ジャズ・トランペット奏者Emma-Jean Thackrayを起用。Shorterの名曲2曲をクラブ仕様のジャズ・ハウスで聴かせるとは意表を突かれました。
https://www.youtube.com/watch?v=-9WjBVuykF0
(オリジナル)>Wayne Shorter「Speak No Evil」
https://www.youtube.com/watch?v=fvRkGglLe-U
(オリジナル)>Wayne Shorter「Night Dreamer」
https://www.youtube.com/watch?v=4mJS8HXbYn4
Wayne Shorter『Speak No Evil(1964年)(左)
Wayne Shorter『Night Dreamer』(1964年)(右)
Kan Sano「Think Twice」
オリジナルDonald Byrd『Stepping Into Tomorrow』(1974年)収録。国内盤ボーナス・トラックとして日本人ビートメイカーKan Sano(佐野観)のトラックを収録。オリジナル16トラックと並べても引けを取らない素敵なジャジー・メロウ・トラックに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=9rdhNlUMnUo
(オリジナル)Donald Byrd「Think Twice」
https://www.youtube.com/watch?v=tX9Eup3Brtk
『Stepping Into Tomorrow』(1974年)