発表年:2021年
ez的ジャンル:現代ジャズの歌姫系女性ジャズ・ヴォーカル
気分は... :美しき花よ・・・
現代ジャズの歌姫Gretchen Parlato、待望の10年ぶりのスタジオ新作『Flor』です。
L.A.出身で現在はN.Y.を拠点に活躍する女性ジャズ・シンガーGretchen Parlatoに関して、当ブログでは以下の4枚のアルバムを紹介済みです。
『Gretchen Parlato』(2005年)
『In a Dream』(2009年)
『The Lost And Found』(2011年)
『The Gretchen Parlato Supreme Collection』(2015年)
※日本独自企画コンピ
また、Gretchen、Rebecca Martin、Becca Stevensによるスペシャル・ユニットTilleryの初アルバム『Tillery』(2016年)も紹介済みです。
現代ジャズの歌姫と評されながら、その人気を不動のものとした『The Lost And Found』(2011年)以来、スタジオ新作がリリースされなかったGretchen Parlato。その間、現代ジャズ屈指のドラマーMark Guilianaとの結婚、出産、育児があり、プライベートの時間に重きを置いた結果、マイペースでの音楽活動となった模様です。
そして、10年ぶりに届けられた待望の新作『Flor』。
レコーディングの基本メンバーはGretchen Parlato(vo)、Marcel Camargo(g、cavaco、moog、rhodes、vo)、Artyom Manukya(cello、vo)、Leo Costa(ds、perc、moog、rhodes)。
さらにGerald Clayton (p)、Airto Moreira(vo、per)、旦那様のMark Guiliana (ds)等がフィーチャリングされています。
プロデュースはGretchen Parlato自身。また、Marcel Camargo、Leo Costaが共同プロデューサーに名を連ね、Marcel Camargoはミュージック・ディレクターとしてもクレジットされています。
ボサノヴァ名曲、ショーロ名曲、バッハのクラシック名曲、Anita Bakerのクワイエットストーム名曲、David Bowie晩年の作品、Roy Hargroveのカヴァー、Tilleryで歌った曲の再録、子供たちのために書いたオリジナルなどバラエティに富んだ全9曲です。
ブラジル・テイストの演奏が聴けるのは以前からのGretchenらしいですが、それをストレートに聴かせるのではなく、クラシックやジャズとの融合させて独自の音世界を構築しようとしているのが印象的です。ショーロ名曲をクラシック的に聴かせ、クラシック名曲をショーロ調に聴かせるあたりも実に興味深いです。
音楽的な深みに加えて、家庭生活を充実させてきたことで人間としての深みが増したような印象を受けます。
Gretchen Parlatoが現代ジャズを代表する歌姫であることを再認識させてくれた1枚です。
全曲紹介しときやす。
「E Preciso Perdoar」
Alcyvando Luz/Carlos Coqueijo作。Joao Gilbertoヴァージョンでお馴染みのボサノヴァ名曲をカヴァー。当ブログではAmbitious Lovers、Adam Dunning、Isabelle Antena、Bossacucanovaのカヴァーも紹介済みです。ここでは自ら英語詞をつけて、しっとりと歌い上げます。ギター、チェロ、ローズ、ムーグ、パンデイロが織り成す憂いを帯びたビューティフル・サウンドもグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=afRibj6A6nE
「Sweet Love」
Gerald Clayton(rhodes)をフィーチャー。Anita Bakerのヒット曲のカヴァー(Anita Baker/Louis A.Johnson作)。オリジナルは当ブログでも紹介した『Rapture』(1986年)です。クワイエットストーム名曲をGretchen色に染まったメロウ・チューンで聴かせてくれます。Gretchenらしい歌い回しやスキャットも堪能できます。Gerald Claytonもメロウなローズの響きで楽しませてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=IraM8U3CTNQ
「Magnus」
Gretchenのライヴ・レパートリーであり、友人の息子で当時5歳であったMagunus君が口すさんだメロディをGretchenが曲に仕上げたもの(Gretchen Parlato/Magunus Thompson作)。Gretchen、Rebecca Martin、Becca Stevensによるスペシャル・ユニットTilleryの初アルバム『Tillery』(2016年)でもレコーディングした楽曲です。ここでは成長したMagunus君とその家族、さらにはGretchenの息子Marleyも参加した"みんなの歌"的ハートウォーミングな1曲に仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=OZIP7XjsfsU
「Rosa」
Pixinguinha作のショーロ名曲をカヴァー。Artyom Manukyaのチェロをバックに、Gretchenがスキャットする室内楽的な1曲に仕上がっています。澄み切った美しさに溢れているのがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=JLcmQUUdUJM
「What Does A Lion Say?」
Gretchen Parlato/Chris Morrissey作。カヴァキーニョ、チェロ、パーカッションによるアコースティック・ワルツをバックに、Gretchenが吐息まじりの歌声を聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=ouYu3J2U67s
「Roy Allan」
Roy Hargroveのカヴァー。オリジナルは『Family』(1996年)収録。ここではAirto Moreira(vo、per)をフィーチャー。サンバ・モードですが、そこにGretchenらしいジャズ・ワールドが加味されて、一味違う透明感のある演奏を楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=jwSiwRUooYs
「Wonderful」
Gretchen Parlato作。Gerald Clayton(p)、旦那Mark Guiliana (ds)をフィーチャー。そのMark Guilianaが現代ジャズらしいリズムを叩き出します。曲自体はGretchenが息子や世界の子供たちに素晴らしき未来を語りかける希望に満ちた1曲に仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=KLGQcFjA4JI
「Cello Suite No. 1, BWV 1007 : Minuet I / II」
J.S. Bach(バッハ)の「無伴奏チェロ組曲 第1番ト長調BWV1007 メヌエットI/II」をカヴァー。ショーロ名曲をクラシック的に聴かせた「Rosa」の逆パターン。ア・カペラの前半に続き、中盤以降はクラシック名曲をカヴァキーニョ入りのショーロで聴かせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=BNwy5OnnU0U
「No Plan」
ラストはDavid Bowie作品をカヴァー。Bowieがミュージカル『Lazarus』(2016年)のために書いた楽曲です。Mark Guiliana (ds)をフィーチャー。ミステリアスな哀愁サウンドですが、GretchenはBowieが死を目前にたどり着いた境地に思いを馳せて、この曲を歌っています。「色即是空、空即是色」。ふとこの言葉が思い浮かびました。
https://www.youtube.com/watch?v=7XNWow26csg
Gretchen Parlatoの他作品もチェックを!
『Gretchen Parlato』(2005年)
『In a Dream』(2009年)
『The Lost And Found』(2011年)
『Live In NYC』(2013年)
『The Gretchen Parlato Supreme Collection』(2015年)
※日本独自企画コンピ
Tillery『Tillery』(2016年)