発表年:2021年
ez的ジャンル:カリスマMPB
気分は... :進化に年齢は関係なし!
ブラジル音楽界の牽引者Caetano Velosoの最新アルバム『Meu Coco』です。
昨年10月にデジタル・リリースされ、最近CD化されました。
これまで当ブログで紹介したCaetano Veloso関連作品は以下の11枚。
『Tropicalia:Ou Panis Et Circencis』(1968年)
『Caetano Veloso』(1969年)
『Caetano Veloso』(1971年)
『Araca Azul』(1973年)
『Joia』(1975年)
『Qualquer Coisa』(1975年)
『Outras Palavras』(1981年)
『Cores, Nomes』(1982年)
『Caetano Veloso (1986)』(1986年)
『Caetano』(1987年)
『Zii E Zie』(2009年)
最新アルバム『Meu Coco』は、Banda Ceを従えた『Abracaco』(2012年)以来のオリジナル・スタジオ作となります。
今年8月には80歳になるCaetanoですが、そんな年齢を感じさせない現役ミュージシャンぶりを示してくれます。
この年齢でも作品をリリースするアーティストは他にもいるかもしれませんが、ここまで現在進行形の新作を創れるミュージシャンは希有だと思います。
プロデュースはCaetano本人とLucas Nunes。
Lucas Nunesは、Caetanoの息子Tom Veloso所属のバンドDonicaのメンバーです。
楽曲はすべてCaetano Velosoのオリジナル。
レコーディングには、Moreno Veloso、Zeca Veloso、Tom VelosoというCaetanoの息子三人をはじめ、DonicaのメンバーZe Ibarra(g)、Banda CeのメンバーPedro Sa(g、b)、Vinicius Cantuaria(ds、per)、Marcelo Costa(ds)、Jaques Morelenbaum(cello、strings arr)といったベテラン勢、Jaques MorelenbaumとPaula Morelnbaumの娘Dora Morelenbaum(vo)、Mestrinho(accordion)、Marcio Victor(per)、Pretinho Da Serrinha(per)、Thiago Amud(horn arr)、Letieres Leite(fl、horn arr)、Carminho(vo)、Hamilton De Holanda(bandolim)等のミュージシャンが参加しています。
テーマ、曲、サウンドすべてが2022年聴くべき音になっているのが素晴らしいですね。
この年齢でも進化し続けるCaetanoワールドを楽しみましょう!
全曲紹介しときやす。
「Meu Coco」
邦題「僕の脳ミソ」。僕らは白人・黒人・先住民の混血だ!と歌います。Marcio Victorらのパーカッション、Thiago Amudが手掛けるホーン・アレンジが冴えるブラジル音楽らしい躍動感のあるアンサンブルを楽しめます。このオープニングを聴いただけで、Caetanoが現役バリバリであることを確認できます。Moreno、Zeca、Tomという息子3人もコーラスで参加しています。
https://www.youtube.com/watch?v=lTV5Wog_jAc
「Ciclamen do Líbano」
邦題「レバノンのシクラメン」。Caetanoらしい憂いを帯びたメロディに、少しアラビックなエッセンスが加わります。そこにJaques Morelenbaumがアレンジを手掛けたストリングスがミステリアスなムードを醸し出します。
https://www.youtube.com/watch?v=jZpQGOtVqrY
「Anjos Tronchos」
邦題「歪んだ天使たち」。PC、スマホ、インターネット等のテクノロジーに支配された現代社会をテーマにしているようです。歌詞にはBillie Eilishの名も登場します。Banda CeのメンバーであったPedro Sa(g、b)によるオルタナ・ロックなサウンドが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=22gCVzU9WUY
「Nao Vou Deixar」
邦題「させてたまるか」。現ブラジル大統領ボルソナロへ向けられた1曲。かつての軍事政権から国外退避を余儀なくされたCaetanoですが、現政権に当時と同じような空気を感じているのかもしれませんね。音楽的にはLucas Nunesが共同プロデューサーに起用された手腕を発揮し、実にモダンな雰囲気に仕上がっています。Jaques Morelenbaumが素晴らしいチェロで魅せてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=7oOvVvIo1C0
「Autoacalanto」
邦題「自分に歌う子守歌」。2020年に生まれた孫(Tomの息子)へ捧げられた1曲。そのTomもギターで参加したシンプルな弾き語りです。
https://www.youtube.com/watch?v=Wnv0hNMmpW0
「Enzo Gabriel」
タイトルはブラジルの新生児の出生届で一番多い名前からとったのだとか。さり気ないアフロ・ブラジリアン・テイストが惹かれます。Mestrinhoのアコーディオンもいい味出しています。
https://www.youtube.com/watch?v=EhxQr38GFNA
「GilGal」
本曲のテーマは60年代トロピカリズモのようです。ブラジルの民間信仰の音楽ガンドンブレのリズムを息子Morenoが叩き出します。また、Jaques MorelenbaumとPaula Morelnbaumの娘Dora Morelenbaumがヴォーカルで参加。アフロ・ブラジリアンな土着ムードに包まれます。
https://www.youtube.com/watch?v=8dqgVygfxI8
「Cobre」
邦題「銅の色」。ロマンティックなラブソング。79歳にして、こんなラブソングを歌えるのは素敵ですね。Jaques Morelenbaumによる美しいストリングス・アレンジが映えます。
https://www.youtube.com/watch?v=3NAgnooHXJ4
「Pardo」
邦題「浅黒い肌」。ブラジル人女性シンガーCeuが『APKA!』で取り上げていた楽曲のセルフ・カヴァー。ここではMarcelo Costaが叩き出すバイーア・リズム、惜しくも2021年10月に逝去したLetieres Leiteのホーン・アレンジが映えるリズミックな1曲に仕上がっています。程良いノスタルジックな雰囲気がいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=bzrmD9trFCc
「Voce-Voce」
邦題「あなた・あなた」。ポルトガルの民族歌謡ファドの新世代女性シンガーCarminhoをフィーチャー。Caetano流ファドを楽しめます。Hamilton De Holandaが素晴らしいバンドリンがロマンティック・ムードを盛り上げてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=hbZfNP3bb0o
「Sem Samba Nao Da」
邦題「サンバがなくちゃ」。タイトルの通り、軽快なサンバで楽しませてくれます。79歳になっても、こうしたサンバを軽やかに歌いこなせるのはステキです!
https://www.youtube.com/watch?v=lNQKKHI2a9w
「Noite de Cristal」
邦題「クリスタルの夜」。ラストは、妹Maria Bethaniaが当ブログでも紹介した『Maria』(1988年)で歌っていた楽曲のセルフ・カヴァーで締め括ってくれます。リズミックなサウンドをバックに、衰えを知らない素晴らしい歌声を>Caetanoが聴かせてくれます。最後にCarlinhos Brownの名前を叫んで終わるのも印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=OtabRiVKPVA
Caetano Velosoの過去記事もご参照下さい。
『Tropicalia:Ou Panis Et Circencis』(1968年)
『Caetano Veloso』(1969年)
『Caetano Veloso』(1971年)
『Araca Azul』(1973年)
『Joia』(1975年)
『Qualquer Coisa』(1975年)
『Outras Palavras』(1981年)
『Cores, Nomes』(1982年)
『Caetano Veloso (1986)』(1986年)
『Caetano』(1987年)
『Zii E Zie』(2009年)