発表年:2015年
ez的ジャンル:ブルージー女性ジャズ・ヴォーカル
気分は... :2023年最初の1枚!
新年明けましておめでとうございます。
本年も自分の好きな音楽を自由に紹介していきたいと思います。
2023年最初の1枚は、現代最高峰の女性ジャズ・シンガーの一人、"プリンセス・オブ・ダークネス"ことCassandra Wilsonの『Coming Forth By Day』(2015年)です。
これまで当ブログで紹介したCassandra Wilsonは以下の10枚(発売年順)。
『Point Of View』(1986年)
『Days Aweigh』(1987年)
『Jumpworld』(1990年)
『Blue Light 'Til Dawn』(1993年)
『New Moon Daughter』(1995年)
Jacky Terrasson & Cassandra Wilson『Rendezvous』(1997年)
『Traveling Miles』(1999年)
『Belly Of The Sun』(2002年)
『Glamoured』(2003年)
『Another Country』(2012年)
本作『Coming Forth By Day』(2015年)は、生誕百周年を迎えた不世出の女性ジャズ・シンガーBillie Holidayへのトリビュート・アルバムです。オリジナルの「Last Song (For Lester)」以外は、すべてBillie Holidayのレパートリーです。
2015年は本作以外にもBillie Holidayへのトリビュート・アルバムがリリースされました。当ブログでも紹介したJose James『Yesterday I Had The Blues』もそんな1枚です。
Jose James『Yesterday I Had The Blues』(2015年)

それでも“ジャズ・ヴォーカルの女王”へのトリビュートが一番似合うのはプリンセス・オブ・ダークネスですよね。
そんな本作『Coming Forth By Day』は、『Traveling Miles』(1999年)以来のUSジャズ・アルバム・チャート第1位となりました。
プロデュースはNick Launay。さらにEd Gerrardが共同プロデューサーとしてクレジットされています。
Van Dyke Parksがストリングス・アレンジを手掛けています。
Cassandra Wilson(vo、g)以下、Kevin Breit(g、banjo)、Jon Cowherd(p、org)、Nick Cave and the Bad SeedsのMartyn P. Casey(b)とThomas Wydler(ds、per)、Robby Marshall(woodwinds、melodica)、Ming Vauze(guitar string)、T Bone Burnett(baritone guitar)、Yeah Yeah YeahsのNick Zinner(g)、Eric Gorfain(violin)等がレコーディングに参加しています。
「Good Morning Heartache」、「Strange Fruit」、「Don't Explain」、「Billie's Blues」、「Crazy He Calls Me」あたりはプリンセス・オブ・ダークネスらしさを存分に楽しめます。
ロマンティックな「The Way You Look Tonight」、「What a Little Moonlight Can Do」、他のトラックとサウンドの質感が異なる「You Go to My Head」、さり気ない「These Foolish Things」あたりもオススメです。
“ジャズ・ヴォーカルの女王”Billie Holidayと"プリンセス・オブ・ダークネス"ことCassandra Wilsonがリンクするブルージーな女性ジャズ・ヴォーカル・ワールドを満喫しましょう。
全曲紹介しときやす。
「Don't Explain」
Arthur Herzog, Jr./Billie Holiday作。このオープニングを聴けば、CassandraがBillie Holidayの後継者に相応しいシンガーであることを実感できます。♪言い訳はしないで、帰ってきてくれてうれしいわ♪と歌う切ないラブソング。Cassandraの抑えたトーンの低音ヴォーカルが切なさを助長します。
https://www.youtube.com/watch?v=trksiwm9bvY
「Billie's Blues」
Billie Holiday作。プリンセス・オブ・ダークネスらしいブルージーなダーク感がたまわない1曲。土臭さと呪術的なミステリアス感の混ざり具合がいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=PB1HK-rlVig
「Crazy He Calls Me」
Carl Sigman/Sidney Keith Russell作。しっとりとした中の気怠さが絶妙なブルージー・バラード。この味わいはCassandraに出せないものかもしれませんね。ストリングスによる演出も効果的です。
https://www.youtube.com/watch?v=o0S5NDXdDhE
「You Go to My Head」
Haven Gillespie/J. Fred Coots作。それまでの3曲とサウンドの質感が異なるのが印象的です。オーセンティックさとコンテンポラリー感を併せ持つモダンなサウンドをバックに、Cassandraが優しく歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=ayBMyOe-rdE
「All of Me」
Gerald Marks/Seymour Simons作のスタンダード。プリンセス・オブ・ダークネスらしく哀愁ムードたっぷりで歌い上げます。地を這うような低音ヴォーカルが哀愁モードによくフィットします。
https://www.youtube.com/watch?v=PsPT7KZrNYo
「The Way You Look Tonight」
Dorothy Fields/Jerome Kern作。個人的にはアルバムで一番のお気に入り。アルバムで最もロマンティックなラブ・バラードに仕上がっています。優しさに包まれたCassandraの低音ヴォーカルも悪くありませんよ。
https://www.youtube.com/watch?v=yBcijYD7778
「Good Morning Heartache」
Dan Fisher/Ervin Drake/Irene Higginbotham作。前述のJose James『Yesterday I Had The Blues』でもオープニングを飾った曲であるため、僕の中でBillie Holidayの歌というイメージが強い曲です。そのJose Jamesヴァージョンもインパクトがありましたが、情熱的なCassandraヴァージョンも迫力満点です。
https://www.youtube.com/watch?v=-gbZiBQZ1zU
Cassandraヴァージョンとは対照的なJose Jamesヴァージョンとの聴き比べも楽しいのでは?
Jose James「Good Morning Heartache」
https://www.youtube.com/watch?v=14MykpfXuXg
当ブログではJose Jamesの他にJill Scottのカヴァーも紹介済みです。
「What a Little Moonlight Can Do」
Harry M. Woods作。当ブログではJose Jamesのカヴァーも紹介済みです。「The Way You Look Tonight」と並ぶ僕のお気に入り。ロマンティックなラブ・バラードを抜群の表現力で優しく歌い上げます。美しいストリングス・アレンジもグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=ExLPqNTgo8k
「These Foolish Things」
Eric Maschwitz/Jack Strachey作。さり気なさが魅力のビューティフル・バラード。オーセンティックな雰囲気ですが、逆にCassandraの貫禄を感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=P892Yw0jc9Y
「Strange Fruit」
邦題「奇妙な果実」。Billieの代表的なレパートリーとしてお馴染みですね。1939年、Lewis Allanによって書かれた当時のアメリカ南部の人種差別による黒人リンチの光景を描いた歌です。Cassandraは『New Moon Daughter』(1995年)でも本曲をカヴァーしています。当ブログではJose Jamesのカヴァーも紹介済みです。これはもうCassandraにハマりすぎの楽曲ですよね。まさにプリンセス・オブ・ダークネスの本領発揮の1曲に仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=YyNtFAMMsuA
「I'll Be Seeing You」
Irving Kahal/Sammy Fain作。当ブログではMark Murphyのカヴァーも紹介済みです。美しくもミステリアスなバッキングが印象的なバラードをCassandraがしっとり歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=x3RZ1pYLxdI
「Last Song (For Lester)」
Cassandra Wilson/Jon Cowherd/Kevin Breit/Martyn Casey/Robby Marshall/Thomas Wydler作。唯一のオリジナル曲。Billie Holidayの盟友であった偉大なジャズ・ミュージシャンLester Youngの葬儀で彼女が歌おうとして遺族から断られたエピソードに基づき書かれた曲。プリンセス・オブ・ダークネスらしいブルージーな雰囲気で締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=aKPPWkEU6GY
Cassandra Wilsonの過去記事もご参照下さい。
『Point Of View』(1986年)

『Days Aweigh』(1987年)

『Jumpworld』(1990年)

『Blue Light 'Til Dawn』(1993年)

『New Moon Daughter』(1995年)
Jacky Terrasson & Cassandra Wilson『Rendezvous』(1997年)
『Traveling Miles』(1999年)

『Belly Of The Sun』(2002年)

『Glamoured』(2003年)

『Another Country』(2012年)