2023年07月16日

Pedro Martins『Radio Misterio』

Kurt Rosenwinkel、Thundercat、Eric Clapton参加☆Pedro Martins『Radio Misterio』

発表年:2023年
ez的ジャンル:ブラジル新世代系ジャズ/メロウ・ポップ
気分は... :心こそ心迷はす心なれ・・・

ブラジルもの新作からPedro Martins『Radio Misterio』です。

Pedro Martinsは1993年ブラジル連邦直轄区ガマ生まれのギタリスト、シンガー、ソングライター、マルチ・インストゥルメンタリスト。

これまで『Sonhando alto』(2013年)、『Vox』(2019年)といったソロ・アルバムや、Daniel Santiago & Pedro Martins『Simbiose』(2016年)、Michael Pipoquinha & Pedro Martins『Cumplicidade』(2020年)といった共同名義のアルバムをリリースしています。

また、Louis ColeとのユニットKNOWERの活動で知られる女性シンガーGenevieve ArtadiとのユニットExpensive Magnetsとしても作品をリリースしています。Genevieve Artadiは私生活のパートナーでもあります。

Pedro Martinsの名が大きくクローズ・アップされるようになったのは、現代ジャズ・ギターの皇帝Kurt Rosenwinkel『Caipi』(2017年)からだと思います。同作にPedroはプレイヤーとして参加するのみならず、共同プロデューサーも務めました。Kurt Rosenwinkelは本作でもPedroと共にメイン・プロデュースを務めます。

ちなみKurt RosenwinkelとPedroは、この後Eric Clapton主催のクロスロード・ギター・フェスティヴァルに参加し、その演奏は『Eric Clapton's Crossroads Guitar Festival 2019』(2020年)に収録されています。

また、Thundercat『It Is What It Is』(2020年)へのPedroの参加は当時意外にも感じましたが、Genevieve Artadiの影響でL.A.にも拠点を置くようになり、Genevieveを介してThundercatなどL.A.のミュージシャンたちとの交流を深めていった模様です。

さて最新作『Radio Misterio』ですが、国内盤ライナーノーツに当ブログでも紹介したFrederico Heliodoro『The Weight Of The News』(2023年)との共通性が指摘されていました。『The Weight Of The News』には、PedroやKurt Rosenwinkelも参加しています。

Frederico Heliodoro『The Weight Of The News』(2023年)


確かに、ジャズ×ブラジル×ロックをクロスオーヴァーさせたメロウ・ポップという点で両者に共通点を見出すことができます。Frederico Heliodoro『The Weight Of The News』の記事で、僕は“ブラジル音楽好きよりも、Louis ColeThundercat好きの人にフィットするアルバム”と書きましたが、同じ言葉が本作にも当てはまるのではないかと思います。

さて、本作『Radio Misterio』のレコーディングにはPedro Martins(vo、g、key、p、b、ds、per)以下、Thundercat(b、vo、808 per)、DOMi & JD BeckJD Beck(ds)、Omar Hakim(ds)、Daryl Johns(b)、Chris Fishman(p)、Kurt Rosenwinkel(syn)、Eric Clapton(g)が参加しています。

ちなみにDaryl Johnsは、StingThe Rolling Stonesの作品で知られるあのDaryl Johnsとは別人の若手ジャズ・ベーシストです。Omar Hakim(ds)が参加しているので、あのDaryl Johnsと勘違いする人も多いかもしれませんね。

メイン・プロデュースは前述のようにPedro MartinsKurt Rosenwinkel

さらにGenevieve ArtadiPedro MirandaDaryl JohnsChris Fishmanがプロデュースで参加している曲もあります。

楽曲はすべてPedroのオリジナルです(共作含む)。

多彩なゲストが参加している印象を受けるかもしれませんが、半数のトラックはPedroがすべての演奏を手掛けています。その意味では、彼のマルチ・インストゥルメンタリストとしての才を楽しむアルバムとなっています。すべてヴォーカル入りですが、あえてヴォーカルを奥に引っ込めてサウンドの方が目立つようなミックスになっているのも印象的です。

Pedro Martinsのメロウ・ポップ・ワールドをご堪能あれ!

全曲紹介しときやす。

「Nada Vai Ser Em Vao」
Pedroがすべての演奏を手掛けたオープニング。今ジャズ感覚のポップ・ロックはThundercat好きであれば気に入るはず。
https://www.youtube.com/watch?v=S_pkPvbCByE

「Juvenew」
このトラックもPedroがすべての演奏を手掛けています。レゲエ調のリラックスしたメロウ・ポップ。甘く切ない雰囲気がラヴァーズ好きの人にオススメです。
https://www.youtube.com/watch?v=OBiP-mMCtj4

「Isn't It Strange」
Thundercatと注目のZ世代ミュージシャンJD Beckをフィーチャー。近年のThundercat作品とシンクロする今ジャズ・フィーリング調のメロウ・ソウルに仕上がっています。Thundercatのベース、JD Beckのドラムの組み合わせはかなり強力で惹きつけられます。
https://www.youtube.com/watch?v=hlULBv3hduA

「Amor Fantasma」
このトラックもPedroがすべての演奏を手掛けています。バカンス・モードながらも少しミステリアスなメロウ・チューン。夢か現か・・・といった雰囲気が好きです。
https://www.youtube.com/watch?v=GnH2ASZFQ_k

「Liberdade」
Omar Hakimをフィーチャー。Omar Hakimの推進力のドラミングがリードするメロウ・ポップ。本作らしいクロスオーヴァー感覚を楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=ZG7Gb417Amk

「Vou Descobrir」
このトラックもPedroがすべての演奏を手掛けています。ポップでメロウながらもどこか寂しさを感じるのがブラジル人アーティストらしさかもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=eSgZhuZLcEI

「Estrela Do Rock n' Roll Do Planalto Central」
タイトルからしてロックンロールしているのかなと思いきや、今ジャズ調のクロスオーヴァーな仕上がりとなっています。
https://www.youtube.com/watch?v=iRMMUDbxQrE

「Ha De Haver」
Chris Fishmanをフィーチャー。Chris Fishmanのピアノをはじめ、アルバムの中で最もジャズな演奏かもしれません。Pedroのドラミングが躍動します。
https://www.youtube.com/watch?v=TipAdCOKFQU

「Polos」
Chris FishmanとDaryl Johnsをフィーチャー。本作らしさを最も象徴するような今ジャズ感覚のポップ・ロック。それこそThundercatのアルバムに収録されているような雰囲気のトラックです。
https://www.youtube.com/watch?v=0CqvXXHUjCQ

「Kaya Noite」
Kurt Rosenwinkelをフィーチャー。ここでのKurtはギターではなくシンセでの参加です。ジェントル&ドリーミーなメロウ・チューンに癒されます。
https://www.youtube.com/watch?v=kRQHCV5OfPM

「Radiocenter(dedicated to Toninho Maya)」
このトラックもPedroがすべての演奏を手掛けています。これは今ジャズらしい雰囲気の仕上がりです。少しミニマルな感じも印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=teeFcssjP04

「Nao Leve A Mal」
Eric Claptonをフィーチャー。哀愁メロウ・ロックにClaptonのギター・ソロが加わりますが、ど派手な演奏ではなく控えめなのが逆にいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=2ahF5FRb1Lk

「A Very Well Mr. Yo」
このトラックもPedroがすべての演奏を手掛けています。60年代ポップを今ジャズ流のポップ・センスで再現したような雰囲気です。
https://www.youtube.com/watch?v=3UyBkHGHrjs

「No Final Da Festa」
Chris Fishmanをフィーチャー。アルバムのエンディングに相応しいメロウ・チューン。余韻に浸りながらアルバムは幕を閉じます。
https://www.youtube.com/watch?v=2ahF5FRb1Lk

Pedro Martinsの他作品もチェックを!

『Vox』(2019年)


Expensive Magnets『Expensive Magnets』(2019年)
posted by ez at 00:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 2020年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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