発表年:1978年
ez的ジャンル:アメリカン・プログレ・ハード・ロック
気分は... :これは素直に好き!
若い洋楽リスナーの方はピンと来ないかもしれませんが、
1970年代後半から1980年代にかけて、アメリカで人気を博した売れ筋のポップなロックは“産業ロック(商業ロック)”と呼ばれていました。
Journey、Styx、Foreigner、Toto、Boston、REO Speedwagon、Asiaあたりが典型と言えるでしょう。
元々は雑誌『ロッキング・オン』創刊者でロック評論家の渋谷陽一氏が使い始めた言葉です。人によって、この言葉の解釈はかなり異なると思いますが、「ロック本来の批判精神を忘れて、“売れること”を主目的に制作されたロック」と僕は解釈していました。
渋谷氏がこの言葉を使い始めた1970年代後半はパンク/ニューウェイヴが台頭してきた時期と重なります。
パンク/ニューウェイヴは決して、ヒットチャートの上位に決して顔を出すことはありませんでしたが、そのラディカルなスタンスは音楽シーンにインパクトを与え、若者たちから確実に大きな支持を得たといえます。そうしたパンク/ニューウェイヴの動きと対比するように、ヒットチャート上位に名を連ねる売れ筋ロックを表した言葉が“産業ロック”という言葉だったのではと思います。
当時僕自身はパンク/ニューウェイヴも好きだったし、ヒットチャートも良く聴いていたので“産業ロック”もそれなりに好きだった、という状況でしたかね。
まぁ、Journey、Styx、Asiaなどのグループは昔から何が良いのか、さっぱりわかりませんでしたが(笑)
でもって現在の僕の気分はと言えば、当時聴いていたパンク/ニューウェイヴは今でも聴きたくなるけど、当時の“産業ロック”は積極的には聴く気にならないというのが本音ですね。
ただし、幾つかの例外もあって、今でも積極的に聴きたいと思うグループが2グループだけあります。それが以前に紹介したTotoと今日紹介するBostonです。
ということで、本日は産業ロック嫌いの僕が珍しく紹介する産業ロック、Boston『Don't Look Back』(1978年)です。
BostonはリーダーのTom Scholz(key、g、b)を中心としたロック・グループ。実態はTom Scholzのソロ・プロジェクトと説明した方が適切かもしれませんね。
幼少の頃からクラシックを学び、マサチューセッツ工科大学を卒業したTom Scholzは、ポラロイド社の研究スタッフとして働きながら、たった一人でデモ・テープを作り、それをベースに制作されたデビュー・アルバム『Boston』(1976年)もBrad Delpのボーカル以外は殆どScholzが一人で楽器を担当した。
そして、デビュー後のライブ活動のために、初めてバンド・メンバーが集められ、Tom ScholzにBrad Delp(vo)、Barry Goudreau(g)、Fran Sheehan (b)、Sib Hashian (ds)の4名を加えた5人組バンドの体裁を整えました。
結果として、デビュー・アルバム『Boston』はシングル「More Than A Feeling」(全米チャート第5位)と共に大ヒット(全米アルバム・チャート第3位)を記録し、評論家からも絶賛され、一躍アメリカン・ロックのトップ・グループに躍り出ることになります。
そして、その大ヒット・デビュー作の2年後に発表されたのが今日紹介する2ndアルバム『Don't Look Back』です。
本作も全米アルバム・チャート第1位となると同時に、「Don't Look Back」(全米チャート第4位)等のシングル・ヒットを生みました。
デビュー・アルバム『Boston』と比較するとインパクトは小さかったのかもしれませんが、個人的には『Boston』以上に『Don't Look Back』を愛聴しています。後追いで聴いた『Boston』よりも、リアルタイムで聴けた『Don't Look Back』に愛着があるのかもしれませんね。
Bostonの魅力は、大味な印象が強いアメリカン・ロックを緻密な作品に昇華させた点にあるように思います。メロディ、ボーカル&ハーモニー、ギター・オーケストレーション等々、何度聴いても飽きがこない作りなんですよね。
ラーメンでいえば、産業ロックは“こってり系”ラーメンだと思います。
こってり味なんだけれども、意外と繊細でスープも全部飲めちゃうというがBostonやTotoなのに対して、僕が苦手なJourney、Styx、Asiaは味のくどさと脂っぽさで、あまりスープを飲む気がしないという印象ですかね。
*もし、Journey、Styx、Asiaファンの方が読んでいたらゴメンナサイ。ラーメンの好みと同じで、あくまで僕個人の好みの話なのでお許しください。
本作では各メンバーも一応楽器をプレイしています(笑)
まぁ、Scholzからガチガチの指示があったのでしょうが。
全曲紹介しときやす。
「Don't Look Back」
タイトル曲はBostonらしい、メロディアスで、スペイシーで、ハードなノリのいいロック・チューン。アルバムからの1stシングルとして全米チャート第4位となりました。
リアルタイムで聴いていた頃は、このタイトル曲のイントロを聴いただけで、アドレナリンが出まくっていたような気がします。厚みのあるギター・オーケストレーションとBrad Delpのハイトーン・ボーカルがいいですね。厚みあるけど、展開の巧さでくどくさせないのが職人Scholzの技だと思いますね。
「The Journey」
前の「Don't Look Back」と次の「It's Easy」の橋渡しのようなインスト。各種エフェクトによる幻想的な世界を聴かせてくれます。
「It's Easy」
「Don't Look Back」と同タイプのノリのいいナンバー。こちらの方が少しアコースティックなテイストですかね。
「A Man I'll Never Be」
個人的にはアルバムというかBostonの楽曲の中で一番のお気に入りですね。同意見の方は結構多いのではと思います。3rdシングルとしてシングルカットもされました。全米チャートでは第31位止まりでしたが、日本では洋楽Top10系の番組でかなり上位にランクされていたような記憶があります。
まさに美メロのロック・バラッドですね。アコースティックな味わいとハードなエレクトリック・ギターのバランス感覚がサイコーですね。ノー・シンセサイザーということでハモンド・オルガンが活躍しています(笑)情感たっぷりのBrad Delpのボーカルもサイコーです。
僕がこの手のロック・バラッドにこれだけ愛着を持つのはかなり珍しいですね。それくらいの名曲だと思います。
「Feelin' Satisfied」
アルバムからの2ndシングル(全米チャート第46位)。この曲あたりを聴いていると初期Doobie Brothersとの共通点も感じますね。初期Doobiesがプログレ・ハードを演奏すると、こんな感じになっていたのでは?
「Party」
これは正統派“産業ロック”???僕には少しくどく、もたれ気味ですが大目に見ましょう(笑)
「Used To Bad News」
この曲もかなりのお気に入り。スペイシーなテイストの中にも、アコースティックな味わいが織り交ぜられているのが好きですね。そして、後半のハモンド・オルガンとギターの絡みがかなりカッチョ良いですよね。
「Don't Be Afraid」
この曲も正統派“産業ロック”なのですが、メリハリのある展開なので飽きがこないゴキゲンな1曲だと思います。Barry Goudreauのワウワウ・ギターが目立っていますね。
本作の後、3rdアルバム『Third Stage』が発表されるまでには8年の歳月を要することになります。長いブランクにも関わらず『Third Stage』およびシングル「Amanda」は共に全米No.1となり健在ぶりを示しました。
ちなみにその頃僕の興味は既にロックではなくブラック・ミュージックへ移行しており、個人的には全く聴こうともしませんでしたが(笑)
その後も『Walk On』(1994年)、『Corporate America』(2002年)と8年周期でアルバムを出し、“次作は2010年か”と期待されていたファンの方も多かったと思うのですが、ボーカルのBrad Delpが今年の3月に死去してしまいましたね。今後どうなってしまうのですかね?
ボストン! 1st とともに、このアルバムは良く聴きました。アコースティックとエレクトリックのギター・コンビネーションは爽快でした。ハイトーンのハモもイカしてました♪
ありがとうございます。
>産業ロック、AOR … 未だに良くわかりませんが(笑)
そうですね。
でも、その分各々が勝手な解釈ができるので面白いのかもしれませんね。
僕などはAORをかなり拡大解釈しているように思います(笑)
Bostonはエヴァーグリーン的な魅力を持ったグループですね。
産業ロックに対しては結構手厳しい評価の僕ですが、
Bostonの1st、2ndはミーハー的に好きですね。
“こってり”のようで“あっさり”というあたりがツボかもしれません。