2007年10月14日

Caetano Veloso『Caetano』

MPBを代表するアーティストCaetano Velosoの80年代の絶好調ぶりを示す1枚☆Caetano Veloso『Caetano』
Caetano (José)
発表年:1987年
ez的ジャンル:進化形MPB
気分は... :常に先を見据えて...

今回はMPB(Musica Popular Brasileira)を代表するアーティストCaetano Velosoです。

Caetano Velosoは1942年ブラジルのバイーア生まれのシンガーソングライター。1960年代後半にGilberto Gilと共にボサノヴァと英米ロックにインスパイアされた新たな音楽のムーブメントであるトロピカリズモを先導し、Gilや妹Maria BethaniaGal Costaらと共にブラジル・ポピュラー・ミュージックの歴史に新たなページを加えました。

当時のブラジル軍事政権からは、その革命的な存在が危険分子と見なされ、逮捕、拘束された後に国外退去を命じらます。結果として、イギリスへの亡命を余儀なくされました(1972年にブラジルへ帰国)。

帰国後はコンスタントに作品を発表し続け、1980年代後半にはワールド・ミュージックの流れとも符合したのか、その人気が世界的に広がりトップ・アーティストとして再び大きな注目を集めるようになりました。

今回紹介するのはそんな1980年代のCaetano Velosoの絶好調ぶりを聴ける1枚『Caetano』(1987年)です。

どうしてもブラジル音楽と言うと、ボッサやブラジリアン・グルーヴといった表現で語られるオシャレな音楽をイメージしがちだと思います。実際僕自身もそういった音楽が大好きですし、そういった音楽を探している傾向が強いのは事実です。

でも、一方でそれがブラジル音楽の真髄かと言えば、それは少し違うような気がします。その意味ではCaetano Velosoという人のキャリアを追いかけると、ブラジル音楽の進化の流れというものが見えてくるように思えます。なんて言いながら、僕もCaetano Velosoのキャリアを全然フォローしきれていないのですが(笑)

本作は僕が最初に聴いたCaetano Velosoの作品です。
盛り上がりつつあったワールド・ミュージックへの興味や、Arto Lindsay率いるAmbitious Loversへの興味から本作へ辿り着いた記憶があります。

初めて本作を聴いた印象は、それ程オシャレではないけど、とてもブラジルらしさに溢れた味わい深いシンガーソングライターのアルバムというカンジでしたかね。また、かつては映画監督を目指し、地元新聞に映画コラムを書いていたCaetano Velosoの映画フリークぶりが反映された作品というのも本作の特徴としてよく語られています。

ブラジル音楽好きの人にとっては本作からバンドにCarlinhos Brownが加わっているのも注目ですね。

オススメ曲を紹介しときやす。

「Jose」
サウダージ感覚の静かで内省的な序曲。

「Eu Sou Neguinha?」
本曲はArto Lindsayへ捧げられています。前半は哀愁MPBというカンジですが、後半からArtoのグループAmbitious Loversを彷彿させるアヴァンギャルドなテイストが加わってきます。次作『Estrangeiro』(1989年)でCaetanoとArto Lindsay(Ambitious Lovers)は本格コラボすることになりますが、本曲はその伏線と言えるのかもしれませんね。

また、本作の裏ジャケに1本のカセット・テープが写っていますが、そのテープの中身は当時まだ未発表だったAmbitious Loversの人気曲「Copy Me」のデモ・テープなのだとか。

「Noite de Hotel」
本作の特徴の1つに映像感覚の音楽表現ということがよく言われますが、「ホテルの夜」と題された本作はそんな雰囲気たっぷりな1曲ですね。

「Depois Que O Ile Passar」
バイーアの伝統的アフリカ系ブラジリアン・パーカッション集団Ile Aiyeについて歌ったもの。パーカッション好きの僕としては、バイーアならではのパーカッシヴ・サウンドが楽しめるのがいいですね。

「Valsa de Uma Cidade」
サンバ・カンサゥンの名曲カヴァー。リオの街を讃える叙情感たっぷりのサウダージな1曲。

「"Vamo" Comer」
Luis Melodiaがゲスト参加している陽気で軽快な1曲。とてもワールド・ミュージック的なものを感じる曲ですね。「さぁ、食べよう」というタイトルは当時のCaetanoの様々な音楽の要素を貪欲に取り入れようとする制作意欲の高さを反映している気もします。

「Guilietta Masina」
タイトルはイタリア映画界の巨匠であった故Federico Fellini監督の妻であった女優Guilietta Masinaのことです。シネマティックかつエレガントな仕上がりがグッドです。

「O Ciume」
叙情感たっぷりのシンガーソングライターらしい1曲ですね。グッと胸に染み入りますな。妹Maria BethaniaもGal Costaとのデュエットというかたちでカヴァーしています。

「Fera Ferida」
ブラジルの国民的歌手Roberto Carlosの名曲カヴァー。サッカー好きの方のために書いておくと、元セレソンのロベカルとは勿論別人です(笑)曲自体が名曲だと思いますが、そこにCaetanoが新たな息吹を加えて、実に瑞々しく感動的な仕上がりになっていると思います。

「Ia Omim Bum」
Caetanoの愛妻Paula Lavigneに捧げられたインスト曲。

Caetano Velosoは実に多作な人ですが、僕が持っているのはCD5〜6枚程度。まだまだ未聴の名盤が数多くあるので、ぜひ聴いてみたいですね。
posted by ez at 00:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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