発表年:1966年
ez的ジャンル:ダダイズム&インプロ系ブルース・ロック
気分は... :個性的な三色クリームはいかが?
久々にEric Clapton絡みの作品を!ということでCreamのデビュー・アルバム『Fresh Cream』です。
Creamの紹介は2ndアルバム『Disraeli Gears』に続き2回目となります。
Eric Clapton(g)、Jack Bruce(b)、Ginger Baker(ds)という3人で結成された伝説のUKロックのスーパートリオCream。そのデビュー・アルバムが本作『Fresh Cream』です。
グループ結成の経緯は、本作のプロデューサーであり、後にRSOレコードを設立することになるRobert Stigwoodが、経済的破綻の危機から脱するために、以前マネジメントしていたGraham Bond OrganizationとJohn Mayall & Bluesbreakersという2つのバンドからメンバーを集めてグループを作ったという打算的なものだったみたいですね。
ということで、元Graham Bond OrganizationのGinger BakerがClapton(元John Mayall & Bluesbreakers)を誘い、ClaptonがJack Bruce(GBOとBluesbreakersの両方に在籍)の参加を熱望し、結成されたのがCreamです。この時のClaptonはGinger BakerとJack Bruceが犬猿の仲だということを見抜けないKYさんだったようです(笑)
当初Claptonはシカゴ・ブルースの重鎮Buddy Guyとそのバック・バンド的なブルース・バンドを志向していたようですが、時代の波に沿ったダダイズム的感覚とインプロをセールス・ポイントとしたグループとしてデビューしました。
このデビュー・アルバム『Fresh Cream』は傑作の誉れ高い2nd『Disraeli Gears』、3rdアルバム『Wheels of Fire』といったアルバムと比較すると、一般的には評価が低いですよね。商業的には明らかに『Disraeli Gears』、『Wheels of Fire』の後塵を拝しますが、内容的にはなかなかのものだと思います。
個人的には第1位『Disraeli Gears』、第2位『Fresh Cream』、第3位『Wheels of Fire』というカンジですかね。『Disraeli Gears』がサイケなパワー・ロックを楽しむアルバムだとすれば、本作は新たなブルース・ロックの息吹を堪能するアルバムだと思います。
『Fresh Cream』は、確かに『Disraeli Gears』、『Wheels of Fire』のような圧倒的なパワフルさは欠けるかもしれませんが、逆に新しい音楽を生み出そうとしている手探り感が魅力的な作品だと思います。
本作のインパクトを考えるならば、同じ1966年に発表された『Bluesbreakers With Eric Clapton』と聴き比べるのが一番わかりやすいと思います。『Bluesbreakers With Eric Clapton』もブルースとロックが融合した瞬間を捉えた名盤として評価が高いですが、そんな名盤と比較しても『Fresh Cream』は別次元のニュー・ロックという気がします。
正直、昔はそれ程好きではなかったのですが、最近かなり好きになってきました。その分、『Wheels of Fire』は滅多に聴きたいと思わなくなりましたね(笑)
なお、今日CDではオリジナル全10曲にデビュー・シングル「Wrapping Paper」、2ndシングル「I Feel Free」、それに「The Coffee Song」を加えた全13曲という構成になっています。今回もこの全13曲構成を前提にご紹介したいと思います。
内訳はカヴァー&トラッドが5曲、Jack Bruce作品が5曲、Ginger Baker作品が2曲、その他1曲ということでClaptonは1曲も書いていません。このあたりのバランスもなかなか興味深いですね。
全曲紹介しときやす。
「I Feel Free」
2ndシングルでUKチャート第11位となりました。「I'm So Glad」と並ぶ僕のお気に入り。イントロのカッチョ良さだけでノックアウトされてしまいマス。Creamならではのスピード感と独特のモワモワ・コーラスがクセになる1曲。Jack Bruce/Pete Brown作品。
数年前に日産自動車TIIDAのCMに使われていたので、それで記憶している人も多いのでは?ただし、あれはオリジナルにえらく忠実なカヴァーです。
「N.S.U.」
Jack Bruce作品。Ginger Bakerの例のドコドコ・ドラムとJack Bruceのボーカルの聴いていると、子供の時に歌っていた鬼ごっこの歌を思い出してしまうのは僕だけしょうか(笑)
「Sleepy Time Time」
オリジナルの中では一番この曲がオーソドックスなブルース・ロックですね。Claptonの“ウーマン・トーン”を堪能しましょう。Jack Bruce/Janet Godfrey作品。
「Dreaming」
Jack Bruce作品。Cream(というかJack Bruce)独特の浮遊感のあるボーカルがストレンジな雰囲気を醸し出しています。
「Sweet Wine」
Ginger Baker/Janet Godfrey作品。中盤以降の演奏がなかなかいいですね。
「Spoonful」
Willie Dixonのブルース・カヴァー。ライブでもお馴染みですね。ブルース・ロック好きにはたまらない1曲ですね。きっとClaptonはこの手の曲をもっとやりたかったのでしょうね。
「Cat's Squirrel」
邦題「猫とリス」というタイトルがプリティなトラッド・ナンバー(インスト)。デビュー・シングル「Wrapping Paper」のB面にもなりました。「Wrapping Paper」がかなりポップな仕上がりだったので、もう1曲はこのようなブルース・ロックらしいものを持ってきたのかもしれませんね。Jack Bruceのブルース・ハープがリスっぽいです(笑)
「Four Until Late」
Claptonが唯一リード・ボーカルをとっているのがRobert Johnsonのカヴァーというのがらしいです。アルバム中で一番リラックス・ムードの仕上がりですね。
「Rollin' and Tumblin'」
大御所Muddy Watersのブルース・カヴァー。このエキサイティングな演奏はCreamならではのものですね。かなりインパクトがあると思います。Jack Bruceのブルース・ハープがかなりカッチョ良いです!
「I'm So Glad」
アルバムで一番好きな曲がこのSkip Jamesのブルース・カヴァー。この約4分間の演奏の中にCreamの魅力が凝縮されている気がします。古典的なブルースをここまでカッチョ良く仕上げてしまうのはさすがですね。
「Toad」
Ginger Baker作品。僕がCreamで一番好きなナンバー「Swlabr」に通じるカッチョ良さを持っていますね。Creamの演奏(というかGinger Bakerのドラム)の凄まじさを魅せつけてくれます。「いやな奴」という邦題も印象に残ります。。
「The Coffee Song」
この曲はCDのみのボーナス・トラックです。後のHeads、Hands & FeetのメンバーTony Colton/Ray Smithの作品。Creamらしいダダイズム的な雰囲気を醸し出してくれる1曲です。
「Wrapping Paper」
記念すべきCreamのデビュー・シングル(Jack Bruce/Pete Brown作品)。このグループらしからぬ(?)ポップ・チューン。何でこんな曲をシングルにしたんですかね?まさに包装紙のように破って捨ててしまいそうな僕にはかなり退屈な1曲です。
Clapton好きでCreamを聴く僕ですが、聴くたびにグループを牽引していたのはJack Bruceであり、ド迫力の演奏を支えていたのはGinger Bakerということを再認識させられます。