発表年:1972年
ez的ジャンル:シカゴ系スウィート・ソウル
気分は... :甘いもの大好き!
今回はシカゴ・ソウルを代表するグループChi-Litesの紹介です。
グループは1959年に2つのヴォーカル・グループが合体してHi-Litesとして活動を始め、1964年にレコード会社を移籍する際に、シカゴの灯を意味するChi-Litesというグループ名に変更しました。
1968年のBrunswickレコードとの契約を転機に、グループは成功を収めるようになります。1969年の「Give It Away」のヒットを皮切りに、「Have You Seen Her」(全米R&Bチャート第1位、全米ポップチャート第3位)、「Oh Girl」(全米R&Bチャート第1位、全米ポップチャート第1位)をはじめとするヒット曲を次々と発表しました。若いリスナーの方にはBeyonce「Crazy In Love」のサンプリング・ネタ「Are You My Woman (Tell Me So)」(全米R&Bチャート第8位)あたりも有名ですね。
順調な活動を続けたグループですが、脱税問題のゴタゴタなどが重なり、中心メンバーのEugene Recordが1976年にグループを脱退すると、グループも下降線を辿りました。なお、Eugene Recordは2005年に死去しています。
今回は「Have You Seen Her」、「Oh Girl」という2大名曲のうち、「Oh Girl」を収録したアルバム『A Lonely Man』(1972年)を紹介します。R&Bアルバム・チャート第1位、ポップ・アルバム・チャート第5位となり、チャート・アクション的には最も成功したアルバムといえます。
僕の場合、Chi-Litesの2大名曲「Have You Seen Her」、「Oh Girl」を知ったのは、いずれもカヴァーでした。「Oh Girl」は実力派ソウル・シンガーGlenn Jonesのカヴァー(1987年のアルバム『Glenn Jones』収録)、そして「Have You Seen Her」は一世を風靡した(?)M.C. Hammerのカヴァー(1990年のアルバム『Please Hammer Don't Hurt 'Em』収録)で知りました。
これらの大ヒット曲に代表されるように、Chi-Litesといえば大甘のスウィート・ソウルというイメージですよね。僕もそんなイメージだし、そういった曲をこのグループには欲しています。ただし、それはグループの1つの側面であり、軽快なアップ・チューンもChi-Litesの魅力であると気付かせてくれたのがBeyonce「Crazy In Love」だったかもしれませんね。
Beyonceのエントリーでも書きましたが、一時期Chi-Litesを知らない「Crazy In Love」大好きの若い子たちに「Are You My Woman」を聴かせて、“マジっ!”、“大ウケ!”みたいな反応を楽しんでいる時期がありました(笑)
その意味では、案外いろんな楽しみ方ができるグループかもしれませんね。
とにかく聴き終わると、ロマンティック&幸せモードになるアルバムだと思います。
全曲紹介しときヤス。
「Oh Girl」
前述のグループ最大のヒット曲。甘茶ソウル好きには文句なしの王道スロウですね。僕の場合、Glenn Jonesのカヴァーを先に聴いてしまったので、その印象がどうしても強いのですが、やはりこのオリジナルは味がありますね(Glenn Jonesのカヴァーも好きですが)。ハーモニカの懐かしい響きとスウィートなコーラスのバランスがサイコーですね。
「Living in the Footsteps of Another Man」
名アレンジャーTom Tom Washington(Tom Tom 84)のアレンジが冴えまくっている軽快かつドリーミーなミッド・チューン。人によっては「Oh Girl」以上にハマるのでは?と思わせる完璧な出来栄えですね。僕も今の気分ならばアルバムで一番好きかも?Pasadenasがカヴァーしています。
「Love Is」
この曲も甘茶好きにはたまらない極上スロウ。魅惑のファルセットを聴いているうちに、トロトロに溶けてしまいそうです(笑)
「Being in Love」
爽快なこの曲も込み上げ感一杯のアレンジが魅力のミドル・チューン。なんか聴いているだけでハッピー・モードになってきますね。
「A Lonely Man」
タイトル曲も極上スロウ。ライナーノーツに“「Have You Seen Her」の二匹目の●●狙い”みたいなことが書いてありましたが、僕的にはそれで全然OKというカンジですね。
「Man and the Woman (Boy and the Girl) 」
これはTemptations「My Girl」を70年代風に味付けしたような楽曲ですね。歪んだギターの音色が異質で逆に面白いです。
「Ain't Too Much of Nothin'」
アルバムで一番地味な存在な曲かな?粒揃いの楽曲のなかで分が悪いだけで、全然イケてるスロウです。
「Inner City Blues (Make Me Wanna Holler)」
Marvin Gayeの大名曲カヴァー(アルバム『What's Going On』収録)。オリジナルが好きな人は気に入ると思います。でも、全体的にハッピー・ムードが漂うなかで、シリアス・ムードのこの曲はかなり異質な印象を受けますね。
「The Coldest Days Of My Life」
イントロで波音が聞こえてくるロマンティック・ムード満点の美しすぎるスロウ。ストリングス・アレンジとエコーのかかったヴォーカルが独特の雰囲気を醸し出してくれます。日本盤CDにはボーナス・トラックとしてR&Bチャート第8位となったシングル・ヴァージョンも収録されています。
今回久々に1枚通して聴いてみて、「Oh Girl」だけではない捨て曲ナシの充実アルバムだということを再認識しました。オリジナル・アルバムは本作のみで、あとはベスト盤で済ませていたのですが、他のオリジナル・アルバムにもトライしてみたくなりました。