2007年11月15日

Bob Dylan『Bringing It All Back Home』

Dylanが初めてエレクトリック・スタイルを示した作品☆Bob Dylan『Bringing It All Back Home』
Bringing It All Back Home
発表年:1965年
ez的ジャンル:元祖フォーク・ロック
気分は... :全ては故郷に持ち帰る...

偉大なるロック詩人Bob Dylanの4回目の登場デス。

『Highway 61 Revisited』(1965年)、『Hard Rain』(1976年)『The Basement Tapes』(1975年)に続く4枚目は、最初のフォーク・ロック作品『Bringing It All Back Home』(1965年)です。

ファンの方はご存知の通り、1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルでBob DylanPaul Betterfield's Bluse Bandを従えて登場し、初めてエレクトリック・サウンドをライブで披露したところ、コアなフォーク・ファンから大ブーイングを浴び、わずか3曲でステージを降りてしまいます。

この伝説となったステージで、Dylanのみならずロック全体が新たなステージへと足を踏み入れることとなります。そんな地殻変動のスタート地点となったアルバムが本作『Bringing It All Back Home』(1965年)です。

ジャケ好きの僕としては、本作のジャケは数あるDylan作品の中でもかなりお気に入りの1枚です。フォトグラファーDaniel Kramerによる幻想的な写真が、新たな境地に入ったDylanを象徴しているように思えます。Dylanの後ろに写っている女性は、DylanのマネージャーAlbert Grossmanの妻Sallyです。

オリジナルLPで言うA面がエレクトリック・サウンドを初めて導入したフォーク・ロック、B面が従来のフォーク・スタイルといった構成になっています。その意味で本作は最初のフォーク・ロック作品と呼ばれています。

この新スタイルと旧スタイルの共存というあたりがポピュラー音楽史としては重要なのかもしれませんね。でも、そんな大袈裟に考えなくても、純粋に粒揃いのDylan作品が並んでいるアルバムとして聴いても十分楽しめる作品だと思います。

「Subterranean Homesick Blues」「She Belongs to Me」「Maggie's Farm」「Mr. Tambourine Man」「It's All Over Now, Baby Blue」等々名曲がぎっしり詰まっています。

全曲紹介しときヤス。

「Subterranean Homesick Blues」
エレクトリック・スタイルのDylanに出会える最初の曲がコレです。PVを観ると一発で好きになっちゃいますよね。紙に書かれた歌詞をDylanが次々とめくっていくという単純なものですが、いつもこのPVを観ると“Dylanってラッパーじゃん!”って思えてきます。

Dylanのシングルとして初の全米Top40入りしました。ちなみにChuck Berry「Too Much Monkey Business」のリフを借用しています。Harry NilssonやRed Hot Chili Peppers等多数のアーティストがカヴァーしていますね。

「She Belongs to Me」
Dylanの最初の奥方Saraについて歌ったもの。そして、歌詞の中で語りかけている相手はかつての恋人Joan Baezという恋の三角関係の歌(?)。Dylanの世に広く紹介するのに一役買ったBaezにとって、Dylanのエレクトリック化は複雑な思いだったでしょうね。

Grateful DeadLeon Russell、Harry Connick, Jr.、Ricky Nelson等がカヴァーしています。

「Maggie's Farm」
♪働くのはいやだ〜♪と歌うこの労働階級ソングは、Dylanのエレクトリック化を象徴するナンバーです。この曲と言えば、先に述べた1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルのオープニング・ナンバーとして有名ですね。本ブログではDylanのロック魂が剥き出しになった音楽巡礼ライブ『Hard Rain』(1976年)のバージョンを以前に紹介しました。Rage Against the Machine、Grateful Dead等がカヴァーしています。

「Love Minus Zero/No Limit」
個人的にはアルバムで一番好きな曲かも?♪She knows there's no success like failure♪And that failure's no success at all♪う〜ん深いなぁ。失敗なくして成功はない!でも本物の成功をつかまないとねぇ。今の僕にはズシリと響きます。Walker Brothersがカヴァーしていました。

「Outlaw Blues」
♪Don't ask me nothin' about nothin',I just might tell you the truth(何もないことについて何も聞かないで。本当のことしか言えないのだから)♪という歌詞が深いですな。

「On the Road Again」
「Bob Dylan's 115th Dream」
この2曲あたりはエレクトリック・スタイルをスムーズに消化しているDylanの姿が窺えますね。特にリラックスした雰囲気のDylanが快調に飛ばしてくれる「Bob Dylan's 115th Dream」がいいですね。

「Mr. Tambourine Man」
ここからは従来のフォーク・スタイルに戻っています。本曲はThe Byrdsの大ヒットでお馴染みの名曲ですね。Byrdsのエントリーでも書きましたが、昔はどうもこのDylanのオリジナルが好きになれませんでした。どう考えてもBeatles風のサウンド、3声ハーモニーで仕上げたByrdsヴァージョンが数段上に聴こえてしまいましたね。それが今ではこのオリジナルが味わい深く感じるのだから、僕もオヤジになったのかな(笑)

「It's Alright, Ma (I'm Only Bleeding) 」
Dylanらしい強烈なメッセージを感じる曲ですね。♪それでいいんだ。おっかさん〜♪て訳してしまうと興醒めかもしれませんが(笑)映画『Easy Rider』のサントラにおけるRoger McGuinnのカヴァーが有名ですね。

「It's All Over Now, Baby Blue」
先に述べた1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルで、大ブーイングを浴びてステージを降りた後、ステージへ再び戻ったDylanがアコースティック・ギターを抱えて歌った曲として有名ですよね。そう考えると♪全部終わったんだ♪というメッセージは強烈ですよね。

この曲もThe Byrds、Them(Van Morrisonをフィーチャー)、The 13th Floor Elevators、Grateful Dead、Marianne Faithfull、Bryan Ferry、Echo & the Bunnymen、Hole、Matthew Sweet & Susanna Hoffs等多数のアーティストがカヴァーしていますね。

本作で新たな方向性に確信を持ったDylanは、さらにエレクトリック・スタイルを推し進めた次作『Highway 61 Revisited』(1965年)でフォーク・ロックのスタイルを確立することとなります。
posted by ez at 00:02| Comment(6) | TrackBack(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
そう言えば先月出たDylanの3枚組アルバムのプロモで面白いキャンペーンやってましたね。
ezさんの言われるとおりめちゃシブイ「Subterranean Homesick Blues」のPVをネタに誰かにメッセージを送れるというもの。
知ってたらスイマセン!↓
http://www.dylanmessaging.com/home
Posted by Kaz at 2007年11月17日 15:20
☆Kazさん

ありがとうございます。

>プロモで面白いキャンペーンやってましたね。

知りませんでした。面白そうですね。
こういう企画や発想大好きです!

それにしても、40年以上前のPVが今でもインパクトを持つというのが凄いですね。単純なものですが、テロップで歌詞を流すよりも、よりリアルに歌詞が伝わってくる気がします。
Posted by ez at 2007年11月18日 09:13
最近は毎日拝見させてもらってます。
しつこくコメントしてスイマセン・・!
PVと言えば近頃はMTVも観ないし、何が流行っているかサッパリ分からないんだけど、昔(20年程前)は色んなMTV番組やってましたよね。
「Best Hit USA」なんかはMustだけど、さらにチェックしてたのがPeter Barakanの「Popper's MTV」とTVK(テレビ神奈川)の「SONY Music TV」だったなあ。「SONY〜」はMCが入らずひたすらPV垂れ流しで良かったっす!
で、いま想い返すと好きなPVトップ3は、Dylanのコレと「Godley&Creme/Cry」「Elvis Costello/I Wanna Be Loved」かなあ。
(今の気分で・・)
・・長文ゴメンナサイ。
Posted by Kaz at 2007年11月20日 01:28
☆Kazさん

ありがとうございます。

>昔(20年程前)は色んなMTV番組やってましたよね。

TVKといえば、僕の場合は「ファンキートマト(ファントマ)」が大好きでした。
あの番組のせいで現在のような洋楽好きになったのかもしれません(笑)。
植田芳暁&シャーリー富岡によるユルユル&テキトーな司会もサイコーでした。
Kazさんはご覧になっていましたか?

>「Godley&Creme/Cry」「Elvis Costello/I Wanna Be Loved」かなあ。

僕も両方好きでしたよ。「Cry」は力作ですね。
「I Wanna Be Loved」は曲自体が大好きでした。

80年代のPVで言えば、最近INXSのPVをYouTubeでよく観ています。
Posted by ez at 2007年11月20日 23:03
おお、ファントマと聞いてついついまたコメントしてしまいました!
実は恥ずかしながら当時は親がうるさくテレビはほとんど観てないんです・・(深夜除く)。
でもファントマはたまに観てました。
<植田芳暁&シャーリー富岡>のノリは好きでしたね(電リク!)。音楽以外でもサーフィン情報とかやってましたよね!?確か・・。(発見)↓
http://www.hipland.co.jp/shirley/photo/funtoma2.html

INXS!懐かしい!「Shabooh Shoobah」〜「Kick」あたりまでは聴いてたかなぁ。ロックなんだけどリズムやギターカッティングが黒かったですよね。PV&曲では「What You Need」がFavouriteですかね。
ところで、奇しくもヴォーカルのMichael Hutchenceは10年前の今日(11/22)に自殺してしまったんですよね・・・。
当時はちょっとショックでした(合掌)。



Posted by Kaz at 2007年11月22日 01:57
Kazさん

ありがとうございます。

>でもファントマはたまに観てました。
>音楽以外でもサーフィン情報とかやってましたよね!?

本当に名番組でしたね!
天気予報ならぬ波予報をやっていた番組なんて他に無かったと思います。

>Michael Hutchenceは10年前の今日(11/22)に自殺してしまったんですよね・・・。

今日が命日なんて全然意識していませんでした。
武道館の来日公演へ行き、「What You Need」で大盛り上がりしていたことが思い出されます。
Posted by ez at 2007年11月22日 23:32
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