発表年:1986年
ez的ジャンル:リベンジ系シンセ・ファンク
気分は... :友を頼りにするのも悪くはない!
今回はリアルタイムで80年代洋楽を聴いていた人ならば、懐かしい名前のClub Nouveauの1stアルバム『Life, Love & Pain』です。
何と言っても、1986年の全米No.1ヒット「Lean on Me」(ご存知Bill Withersの名曲カヴァー)の印象が強いですよね。
また、後の人気プロデュース・チームFoster & McElroy(Denzil Foster、Thomas McElroy)が在籍していたグループとして知られています。特に、Tony! Toni! Tone!、En Vogueの諸作のプロデュースが彼らの名声を高めましたね。
プロデュースのみならず1989年にはFoster McElroy名義で『FM2』というアルバムを発表したり、1991年にはThe Nation Funktasiaという謎のユニットを結成してP-Funk魂に溢れたアルバム『In Search of the Last Trump of Funk』を発表しています。特に『In Search of the Last Trump of Funk』は、よく聴いた記憶がありますね。
さらにClub Nouveauを語るうえで欠かせないのが、Foster & McElroyと並ぶもう一人の重要人物Jay King存在です。
Jay Kingは元々はTimex Social Clubの大ヒット曲「Rumors」(1986年)の仕掛け人でした。この曲のデモ・テープを聴き、“絶対ヒットする!”と確信したJay Kingは、自らの私財を売るなどしてレコーディング費用を工面します・そして、メンバーをスタジオへ呼んで「Rumors」を録音しました。さらにお金を工面してレコードのプレスまで面倒みます。
さらにはプロモーション要員まで自ら資金で雇います。長い時間がかかりましたが、苦労が報われようやく「Rumors」はブレイクしました(全米で70万枚以上の売上)。しかし、彼らのヒットに目を付けてアプローチしてきた辣腕プロモーション・マンにグループを横取りされて、グループは他のレコード会社と契約を結んでしまいました。
こうして「Rumors」をヒットさせるために、全財産をつぎ込んだJay KingとTimex Social Clubは後味の悪いかたちで袂を分かちます。
そんなJay Kingがリベンジを誓ってFoster、McElroyらと結成したグループこそがClub Nouveauなのです。
Jay KingとTimex Social Clubをめぐる物語も踏まえて聴くと、さらに興味深く聴けるアルバムが本作『Life, Love & Pain』だと思います。
全米ポップ・チャート中心に聴いていた人にとっては、“「Lean on Me」のみの一発屋!”のイメージかもしれませんが、本作からはそれ以外にも「Jealousy」、「Why You Treat Me So Bad」、「Situation #9」という3曲のR&BチャートTop10ヒットが生まれています。
その意味ではアルバム全体を通して、聴きどころが多いアルバムだと思います。
“この手のサウンド古臭い!”なんて言っているうちに、時代は1回転してしまったかもしれませんよ(笑)
全曲紹介しときヤス。
「Jealousy」
全米R&Bチャート第8位となったシングル・ヒット曲。先に述べたように、Timex Social Clubを横取りされたJay Kingによるアンサー・ソングです。
♪もし僕が助けたならば、そのことは一生の借りになるだろうと、彼らは言った♪しかし、今では俺のことをナイフで脅す始末さ...♪といった内容の歌詞です。まさにジェラシー出まくりの1曲ですね。
サウンドは80年代らしいシンセ・サウンドが印象的な打ち込みファンクです。このチープなピコピコ感こそが80年代ファンクの魅力の1つなのでは?と思います。イントロでLalo Schifrin「Mission:Impossible」のテーマが引用されているのも好きですね。Lost Boyz「Lifestyles Of The Rich And Shameless」でサンプリングされています。
「Why You Treat Me So Bad」
「Lean on Me」に続く本作のハイライト。シングルとして全米R&Bチャート第2位となりました。哀愁感漂うミッド・テンポのファンク・チューンです。
この曲はリアルタイムで聴いた方以上に若いリスナーの方がサンプリング・ネタとして認知度が高いかもしれませんね。Cuete「I Feel For You」、Luniz「I Got Five On It」、Jennifer Lopez feat. Nas「I'm Gonna Be Alright」 、Puff Daddy feat. R. Kelly「Satisfy You」、Jessica Simpson「Irresistible」等でサンプリングされています。
「Lean on Me」
全米ポップ・チャート第1位、R&Bチャート第2位となったグループ最大のヒット曲。オリジナルは前述の通りBill Withers。オリジナルも1972年にポップ・チャート、R&Bチャート共に第1位となる大ヒットでした(アルバム『Still Bill』収録)。
ここではGo-Goスタイルに少しレゲエ・スタイルを取り入れた、この時代らしい仕上がりになっています。80年代後半はChuck Brown、Trouble Funk、E.U.等のGo-Goアーティストが盛り上がっていましたからね。ちなみに僕はE.U.が好きで本当は本ブログで紹介したいのですが、Amazonでの扱いがないので保留状態のままです。残念!
Timex Social Clubで煮え湯を飲まされたJay Kingの心情を踏まて、♪Lean on me, when you're not strong♪And I'll be your friend ♪I'll help you carry on♪なんて歌詞を聴くと、涙ナシには聴けません。
でも、この歌詞はJay Kingの心情のみならず、心に傷を負ったり、人生に悩む全ての方に勇気を与えてくれる名曲だと思います。ただし、そういった状況の時はClub NouveauよりもBill Withersのオリジナルを聴いた方がいいと思いますが(笑)
「Promises, Promises」
重心の低いビートがいい感じのファンク・チューン。シングル曲以外ならばこの曲が一番好きですね。Foster & McElroyの才能の片鱗を垣間見れる1曲なのでは?
「Situation #9」
この曲も全米R&Bチャート第4位となったヒット曲です。華やかさと哀愁ムードが同居するエレクトリック・ファンクに仕上がっています。
「Heavy on My Mind」
この頃のJam & Lewis風ですね。オリエンタル・テイストの仕上がりが印象的です。
「Let Me Go」
アルバム唯一のスロウ・チューン。なかなかしっとりと感動的な仕上がりとなっています。女性ボーカルがなかなかキュートで胸キュンになります。
「Pump It up (Reprise) 」
「Lean on Me」のリプライズです。くよくよしていても仕方がない。元気出さないとね!
このエントリーを書いていて思い出したのですが、Con Funk ShunのMichael Cooperの1stソロ『Love Is Such a Funny Game』 (1987年)をプロデュースしていたのも、Jay King、Denzil Foster、Thomas McElroyの3人でした。ちなみにJay KingとMichael Cooperは家が向かい同士の知り合いだったようですね。正直、B級アルバムなのですが何故か好きでLP、CD共によく聴きました。Amazonで扱っていたので、そのうち紹介しますね。