録音年:1968年
ez的ジャンル:個性派ジャズ・ピアノ・トリオ
気分は... :くよくよするな!
今回はジャズを枠には収まらないクリエイティブなピアニストKeith Jarrettの紹介です。
Keith Jarrettは1945年ペンシルバニア生まれ。3歳からピアノを始め、バークリー音楽院に学んだ後、1965年にArt BlakeyのJazz Messengersに入団し、ます。その翌年にテナーサックス奏者Charles Lloydのカルテットに参加し、注目を浴びるようになります。
1968年に初リーダー作『Life Between The Exist Signs』を発表し、1969年にCharles Lloydのグループを退団すると、エレクトリック時代に突入したMiles Davisのグループに参加し、『Miles Davis At Fillmore』、『Live Evil』、『Get Up With It』等の作品にその演奏を残しています。
その後、ECMレーベルへ活躍の場を移すと、『Facing You』(1971年)、『Solo Concerts』(1973年)、『The Koln Concert』(1975年)といったピアノ・ソロ作品でその名声を確立します。
80年代に入ると、 Gary Peacock(b)、Jack DeJohnette(ds)と共にThe Standards Trioを結成、名トリオとして20年以上にわたって活動しています。また、ジャズの枠に収まらず、クラシック作品なども数多く残していますね。
と書いていますが、僕も詳しい部分は全然知りません。
Return To Foreverのエントリーでも書きましたが、ロック少年だった中学生・高校生の頃、聴いてもいないくせにジャズ・ピアニストと言えば、Chick Corea、Keith Jarrett、Herbie Hancockの3人の名前が思い浮かびました。
僕がこれらのピアニスト/キーボード奏者の作品をきちんと聴くようになったのはCD時代になってから。コレクション枚数でいうと、ダントツでHerbie Hancock、続いてChick Corea(殆どがReturn To Foreverですが)、そしてKeith Jarrettは今回紹介する『Somewhere Before』1枚しか持っていません。
実はこの3人の中で唯一Keith Jarrettだけは学生時代にLP(『The Koln Concert』)を購入したことがありました。ピアノ・ソロという点に惹かれて購入しましたが、何か近寄り難い雰囲気があって当時の僕にはこのクリエイティビティを理解することができませんでした。
その影響でCD時代になっても無意識にKeith Jarrettの作品を避けていたのかもしれません。
そんな僕が唯一持っているKeith JarrettのCDが『Somewhere Before』(1968年)です。
HollywoodのShelly's Manne-Holeでのライブ録音です。
僕がこの作品を購入した理由はたった1つ、大好きなBob Dylanの名曲「My Back Pages」が収録されていたためです。
という1曲狙いで購入した作品だったのですが、聴いてビックリ!
アルバム全体を通じて、『The Koln Concert』の近寄り難い印象を払拭してくれるような、聴きやすさがありますね。
メンバーはKeith Jarrett(p)、Charlie Haden(b)、Paul Motian(ds)というメンバー。
コアなジャズ・ファンの方が、この聴きやすさをどのように評価するのかは不明ですが、僕のような永遠のジャズ初心者にとっては打って付けの作品かもしれません。
「My Back Pages」、「Dedicated to You」以外はKeith Jarrettのオリジナルです。
全曲紹介しときやす。
「My Back Pages」
僕が一番好きなDylan作品のカヴァー。Bob Dylanのオリジナルは1964年発表の『Another Side Of Bob Dylan』に収録されています。あとはオリジナル以上に本ブログでも紹介したByrdsのカヴァー(『Younger Than Yesterday』)が人気があるかもしれませんね。
Byrdsのカヴァーが好きな人は、このソウルフルかつロック・テイストの演奏も気に入るのではと思います。メロディの美しさと温もりを感じるJarrettのピアノがたまりません。聴いているとサビ部分は思わず、♪Ah, but I was so much older then〜♪I'm younger than that now〜♪と歌ってしまいますね。イントロのHadenのベース・ソロも印象的です。
「Pretty Ballad」
「My Back Pages」に劣らぬくらい好きなのがこの演奏。このリリシズム溢れる美しさはBill Evansに通じるものがありますね。わび・さびがありますな。
「Moving Soon」
「Pretty Ballad」の美しさから一転、フリーフォームの前衛的な演奏に圧倒されます。
「Somewhere Before」
ジャケ写真のイメージがピッタリのラグライム風の演奏が実に雰囲気があっていいですね。古き良き時代の香りが漂います。
「New Rag」
スインギーで軽快な演奏ですね。Hadenのベースがえらくカッチョ良いですね。後半の盛り上がり方がゴキゲンです!
「A Moment for Tears」
「Pretty Ballad」同様の静寂と美しさを持った1曲。タイトルの通り、涙なしには聴けない感動的な演奏ですね。
「Pout's Over (And the Day's Not Through) 」
「My Back Pages」と同タイプのロック・テイストの演奏を聴かせてくれます。僕が知らないだけかもしれませんが、ジャズ・ロックとも違うこうしたロック的な演奏のジャズって、あまりない気がします。
「Dedicated to You」
Sammy Cahn/Saul Chaplin/Hy Zaret作品。Jarrettの美しいタッチにうっとりします。心に落ち着きを取り戻すことができまる演奏ですね。
「Old Rag」
最期はノリノリのラグ・タイム風の演奏です。それまで席に座ってとしたら、思わず立ち上がって手拍子したくなる気分ですね!
本作には、今回使っている1920年代風の雰囲気たっぷりのジャケ以外に、ピアノを弾くJarrettの写真を使ったジャケもありますね。僕が持っているのは前者なのですが、どちらがオリジナルなのか僕も知りません。でも、断然こっちの方がいいですな。