発表年:1995年
ez的ジャンル:Hip-Hopフレイヴァー・ジャズ
気分は... :蟹江君残念!
昨日のグラミーは多少拍子抜けしましたね。
最後の最優秀アルバムは誰もがAmy Winehouseか!Kanye Westか!と固唾を呑んでいたのに、Herbie Hancockの名が呼ばれるとは...なんか変な空気が漂っていましたよね。
Herbie Hancockが受賞したことは彼の実績・実力を考えれば喜ばしいことですが...それでもねぇ。特別Kanye Westに肩入れするつもりはありませんが、あれは蟹江さんを選んであげても良かった気がしますね。グラミーの保守体質を再認識させられました。
ということで、今回はHerbieの最優秀アルバム受賞を記念してジャズ作品を取り上げたいと思います。
ということで、Courtney Pine『Modern Day Jazz Stories』(1995年)です。
Courtney Pineは1964年ロンドンのジャマイカ地区生まれのジャズ・サックス奏者(実際はフルート、クラリネット、キーボード等様々な楽器を演奏するマルチ・プレイヤー)。
デビュー・アルバム『Journey to The Urge Within』(1986年)の頃はJohn Coltrane等から影響を受けた正統派ジャズ・ミュージシャンとして評価されていましたが、その後レゲエ、ヒップ・ホップ、アシッド・ジャズ、ドラムン・ベースなど幅広いジャンルの要素を取り入れた独自のジャズ・ワールドを展開します。また、20人編成のビッグ・バンドJazz Worriersを率いたりもしました。
こうしてイギリスのジャズ/クラブ・ジャズ・シーンの第一人者として絶大な支持を集め、2000年には大英帝国勲章を授与されるほど、イギリスでは認められているジャズ・ミュージシャンです。
Courtney Pineが交流してきたSoulU Soul、Aswad、Carrol Thompson、4Hero、Roni Size、Attica Blues、Pressure Drop等のミュージシャンの名前を見るだけで、彼がジャズ・ミュージシャンの枠に収まらないイノベーターであることがわかりますよね。
彼のイノベーターとしての活動は、ロンドンのジャマイカ地区で育ったジャマイカ系イギリス人としてのアイデンティティも影響しているのでしょうが、グラウンド・ビート、アシッド・ジャズ、ヒップ・ホップ、ドラムン・ベースといった新しいクラブ・ミュージックが盛り上った時期と、うまくリンクした印象もありますよね。
僕がCourtney Pineの名前を初めて知ったのは、2ndアルバム『Destiny's Song』 (1988年)の時だったと思います。彼の写真が縦横7×5の35枚並んだジャケが印象的でしたね。ただし、この時はジャケを眺めておしまいになり、音を聴くことはありませんでした(笑)
実際に音を聴いたのは、AswadプロデュースでCarrol Thompsonのヴォーカルでフィーチャーした「I'm Still Waiting」 (Diana Rossのカヴァー)だったと思います。
そして、今回紹介するのは、Dj Pogoを迎えてHip-Hop的アプローチにチャレンジした1995年のアルバム『Modern Day Jazz Stories』(1995年)です。
本作におけるメンバーは、Courtney Pine(fl、ss、ts)、Eddie Henderson(tp)、Geri Allen(p、org)、Mark Whitfield(g)、Charnett Moffett(b)、Ronnie Burrage(ds、per)、Cassandra Wilson(vo)、Dj Pogo (Turntables)。Cassandra Wilsonの参加が目を引きますね。
1995年時点でJazzとHip-Hopの融合自体は、Hip-Hopからのアプローチとしては珍しくないことでしたし、Jazzサイドからのアプローチも帝王Miles Davisをはじめ、Branford MarsalisのBuckshot LeFonqueやGreg Osbyなどが既に作品をリリースしていました。
これらの諸作品は、ジャズ色の強いHip-Hopという感じで、あくまでHip-Hopファンが聴く作品という印象が強かったですね。一方、本作『Modern Day Jazz Stories』におけるCourtney Pineのアプローチは、あくまでジャズにHip-Hopのフレイヴァーを加えたという感じで、あくまでリスナーはジャズ/クラブ・ジャズ好きの方という気がします。
特に、Cassandra Wilsonがヴォーカルをとる「Don't 'Xplain」、「I've Known Rivers」の2曲は絶品ですよ!
オススメ曲を紹介しときやす。
「The 37th Chamber」
本作を象徴する1曲なのでは?ソウルフルなCourtneyの演奏に、違和感なくDj Pogoのターンテーブルが絡んできます。バンドの一部としてターンテーブル、が目立ちすぎることなく溶け込んでいるのがグッドですね。全体的にゆったりとして、焦らず、騒がずって感じが好きです。
「Don't 'Xplain」
Cassandra WilsonをフィーチャーしたBillie Holidayのカヴァー。やはり、この曲の主役はCassandraの感動的なヴォーカルですね。いつ聴いても、このクールな低音ヴォーカルは魅力的です。特にCourtneyのハイトーンなサックスとのコントラストが好きですね。この1曲だけでも本作を購入して良かったと思います。
「Dah Blessing」
この曲なんかは殆ど正統派ジャズですよね。そんなに奇をてらわなくても勝負できるとことが、この人の強みかもしれませんね。じっくりCourtneyのサックスに耳を傾けましょう。
「In the Garden of Eden (Thinking Inside of You)」
エキゾチックかつアーシーな香りがする演奏ですね。途中でドラムン・ベース的なリズムが挿入されているあたりが楽しいですね。
「Creation Stepper」
10分を超える大作ですが、なかなか聴き応えがあって飽きない1曲ですね。純粋にJazzとして聴くならば、Courtneyの演奏が冴え渡り、他メンバーの演奏も堪能できるこの曲が一番楽しいかも?特にスピリチュアル・ジャズ好きの人は気に入る1曲だと思います。CourtneyのJazz魂に触れることができます。
「Absolution」
この曲ではCourtneyのフルートも堪能できます。フリーキーで情熱的な演奏の1曲ですね。
「Each One (Must) Teach One」
この曲はクラブ・ジャズ好きの方向けの1曲なのでは?ほんのりラテン・フレイヴァーな演奏です。
「Unknown Warrior (Song Fo My Forefathers)」
叙情ムードたっぷり...なんて思っていると、徐々にテンションが高まりフリーキーな世界へ...
「I've Known Rivers」
「Don't 'Xplain」同様Cassandra WilsonをフィーチャーしたGary Bartzのカヴァー。この曲も文句のつけようがないほど絶品です。
CourtneyがGary Bartzをカヴァーするのってエラく納得ですね。Gary Bartzのアフリカ回帰したスピリチュアル・ジャズは、Courtneyとの相性ばっちりだと思います。
本曲は4Hero、Pressure Dropによるリミックスもありますね。Pressure Dropは、何度か本ブログで紹介しようとしたことがあるのですが、Amazonでジャケが見つからず毎回断念しています。何とか紹介したいと思います。
「Prince Of Peace」
タイトルからしてPharoah Sandersのアノ曲のカヴァー!と思いきや同名異曲でした。でも、エキサイティングな演奏でいいですね。なお本曲はUK盤のみの収録みたいです。
グラミーと言えば、Aretha FranklinやQuincy Jonesが貫禄たっぷりの体型になっていたのに驚きました。あとはPrince殿下が無事プレゼンターを務めることができるのかヒヤヒヤで観ていました(笑)噂のMJはついに登場しませんでしたね。登場すれば、もう少し盛り上がったと思うのですが。