発表年:1994年
ez的ジャンル:神業系Hip-Hop
気分は... :神様、仏様、Primo様...
今回はDJ Premier(Primo)ファン必聴の1枚!Jeru The Damaja『The Sun Rises In The East』(1994年)の紹介です。
Jeru The DamajaはN.Y.ブルックリン出身のラッパー。Gang Starr Foundationの一員として、Gang Starrの3rdアルバム『Daily Operation』(1992年)収録曲「I'm the Man」へ参加して注目を集めます。
その後1993年にDJ Premierプロデュースの大傑作シングル「Come Clean」をを足掛かりにソロ契約を結ぶと、DJ Premier全曲プロデュースによるデビュー・アルバム『The Sun Rises in the East』(1994年)をリリースし、Hip-Hopシーンに大きなインパクトを与えました。続く2nd『Wrath of the Math』(1996年)も全曲DJ Premierがプロデュースしています。
その後DJ Premierの元を離れて、3rd『Heroz4Hire』(1999年)、4th『Divine Design』(2003年)、5th『Still Rising』(2007年)といったアルバムをリリースします。
本作『The Sun Rises In The East』は、以前に紹介したGroup Home『Livin' Proof』(1995年)と並んでPrimo大先生のベストワークの呼び声が高い1枚ですね。
個人的には、Group Home『Livin' Proof』の方が好みなのですが、Primo先生の偉業を称えるという観点で言えば、『The Sun Rises In The East』のインパクトの方が大きいかもしれませんね。本来ハードコア度が高い作品は苦手なのですが、『The Sun Rises In The East』には、そんなものを超越した凄みを感じます。
特にPrimo先生の偉大さを決定付けた「Come Clean」には圧倒されましたね。これだけシンプルな作りで、こんなにもインパクトがあるトラックなんて今まで聴いたことがなく、逆に最初は戸惑いましたね(笑)
Gang Starr自身の4thアルバム『Hard to Earn』(1994年)も含めて、この頃のPrimoはノリにノッていたって感じでしたね。
主役のJeru自身のラップもスキルフルで、Primoのトラックに負けない存在感を示しているところが、アルバムを魅力的なものにしていますよね。
「Come Clean」をはじめ、「D. Original」、「You Can't Stop the Prophet」、「Da Bitches」といったクラシックが並びますが、それ以外の曲も含めて密度の濃い1枚に仕上がっていると思います。
炎に包まれたワールド・トレード・センターが写っているジャケが、今眺めると何とも皮肉ですね。
オススメ曲を紹介しときやす。
「D. Original」
まずはクラシック1発目。ピアノの不協和音のダークなループが実に印象的です。これに絡むJeruのラップがまたヤバそうでいい感じですな。ジャケの不穏な雰囲気がぴったりな1曲。
「Mental Stamina」
Gang Starr Foundationの一員Afu-Raが参加しています。この疾走感が好きですね。Roy Ayers「Sensitize」ネタ。
「Da Bichez」
クラシック2発目。ダークな雰囲気が漂うアルバムの中で、軽やかでキャッチーなトラックが逆に印象的ですね。Crusaders「Whispering Pines」、Mary Jane Girls「All Night Long」ネタ。
「You Can't Stop the Prophet」
クラシック3発目。僕の想像するJeru The Damajaのイメージに最も近いダークでデンジャラスな曲。Jeruのフロウも冴え渡っている気がします。Crusaders「Chain Reaction」、Lou Donaldson「Ode To Billy Joe」ネタ。Pete RockによるRemixも話題になりましたね。
「Ain't the Devil Happy」
♪ア・ア・ア・アハハハァ〜♪Primoの声ネタ・スクラッチが印象的ですよね(Wu-Tang Clan「Tearz」ネタ)。Pleasure「Bouncy Lady」、Lee Oskar「Our Road」等もサンプリングしています。
「My Mind Spray」
定番Bob James「Nautilus」ネタによる不穏な雰囲気のトラックがカッチョ良いですな。PrimoはGroup Home「Inna Citi Life」でも「Nautilus」を使っているので聴き比べも楽しいのでは?
「Come Clean」
間違いなくアルバムのハイライトと言える問答不要の最強クラシック。Shelly Manne「Infinity」ネタの水が滴るような打楽器音のループで、これだけシンプルかつインパクトのあるトラックを作ってしまうなんて...まさにPrimo先生が神の領域に踏み込んだ1曲ですね。Onyx「Throw Ya Gunz」ネタの♪Uh-oh!! heads up, cause were droppin some shit♪のフレーズも印象的です。ドラムはFunk, Inc.「Kool Is Back」ネタ。
こんなシンプルなトラックで勝負できたのも、存在感のあるJeruのラップがあったからこそなんでしょうね。
「Jungle Music」
純粋な個人的嗜好で言えば、ヴァイヴの音色のループが気持ち良いこの曲が一番好きです。Jungle Brothers「Straight Out The Jungle」の♪in the J-U-N-G-L-E♪というフレーズ部分をPrimo先生がスクラッチしているのも僕好みです。
Primoに興味がある方にとっては、Group Home『Livin' Proof』(1995年)と共にマスト・アイテムですね。さらに興味がある方は、「Ya Playin' Yaself」、「Me or the Papes」、「One Day」、「The Frustrated Nigga」収録の2nd『Wrath of the Math』(1996年)もどうぞ!