2008年02月18日

John Coltrane『Impressions』

単なる寄せ集めではない、絶妙の曲構成が魅力の1枚☆John Coltrane『Impressions』
Impressions
録音年:1961年、62年、63年
ez的ジャンル:幕の内弁当風Coltrane
気分は... :動と静のバランス

ジャズの求道者John Coltraneの5回目の登場です。
これまで紹介したのは下記の4枚。

 『Ballads』(1962年)
 『My Favorite Things』(1960年)
 『Blue Train』(1957年)
 『Kulu Se Mama』(1965年)

今回は『Impressions』(1961年、62年、63年)です。
当時のことはよく知りませんが、リリース当時はかなり人気の作品だったようですね。

本作『Impressions』は、「India」「Impressions」が名盤『Live at the Village Vanguard』と同時期(1961年11月)のライブ録音、「Up 'Gainst the Wall」が人気作『Ballads』と同時期セッション(1962年9月)の録音、「After the Rain」が1963年の録音という異なる時期の録音を1枚にまとめた作品です。

このように書くと寄せ集め作品集のようなマイナスのイメージを持たれそうですが、この構成がなかなか絶妙だと思います。コンビネーション抜群の幕の内弁当に出会ったような感じでしょうか(笑)

本作のメインは、「India」「Impressions」という14分前後のVillage Vanguardでのライブ録音2曲であり、その意味では『Live at the Village Vanguard』の姉妹盤という位置づけになるのかもしれません。

1961年11月のVillage Vanguardでのライブは、『Live at the Village Vanguard』を中心に『Impressions』『The Other Village Vanguard Tapes』『Trane's Mode』という4枚に収録され、その後録音順に整理されたボックス・セット『The Complete 1961 Village Vanguard Recordings』が発売されています。

王道を行くならば、『Live at the Village Vanguard』から入った上で他の3枚に展開するか、しっかり『The Complete 1961 Village Vanguard Recordings』をゲッチュするということなのでしょうけど、個人的には『Impressions』から入るというのもアリかなと思います。

その理由は、「India」「Impressions」というVillage Vanguardでのライブ録音2曲と、その間に挟まれる「Up 'Gainst the Wall」「After the Rain」という小品2曲のコントラストがあまりに見事なためです。言い方が悪いですが、箸休めのような小品2曲の配置が絶妙であり、それ故にVillage Vanguardの2曲に凄味が増すという効果を生んでいると思います。

メンバーは録音年ごとに異なりますが、整理するとJohn Coltrane(ts、ss)、Eric Dolphy(b-cl)、McCoy Tyner(p)、Jimmy Garrison(b)、Reggie Workman(b)、Elvin Jones(ds)、Roy Haynes(ds)というメンツになります。

4曲共にColtraneのオリジナルです。

全曲紹介しときヤス。

「India」
John Coltrane(ss)、Eric Dolphy(b-cl)、McCoy Tyner(p)、Jimmy Garrison(b)、Reggie Workman(b)、Elvin Jones(ds)というダブル・ベースを従えたVillage Vanguardでのライブ。

この時期東洋思想にもご執心だったColtraneが、Beatlesファンにはお馴染みのインド人シタール奏者Ravi Shankar(最近のリスナーにはNorah Jonesのお父さんと説明する方がピンと来るのかな?)あたりから受けた影響が顕著に表れた1曲です。

フェード・インで入ってくるElvinのドラムとGarrisonとWorkmanのダブル・ベースに続き、Coltraneのソプラノ、Dolphyのバスクラが加わります。それに続き、インド象のような悲鳴を上げるColtraneのソロ、続いてColtraneに負けじとインド象で唸りまくるDolphyのソロが続き、再びColtraneの雄叫びで締めくくるという流れになっています。

最初はとっつき辛い演奏かもしれませんが、東洋思想、インド音楽あたりを意識して聴き重ねるうちに、なかなか楽しめるようになると思います。

「Up 'Gainst the Wall」
John Coltrane(ts)、Jimmy Garrison(b)、Elvin Jones(ds)によるピアノレスの演奏。『Ballads』と同時期セッションですが、『Ballads』に収録するには、ブルージーでシブすぎて雰囲気が違うってカンジですよね。

「Impressions」
John Coltrane(ts)、McCoy Tyner(p)、Jimmy Garrison(b)、Elvin Jones(ds)という最強カルテットによるVillage Vanguardでの演奏。最初から最後までColtraneのソロって感じでColtraneの演奏を堪能できる1曲ですね。Tyner、Garrison、Elvinによるバッキングもサイコーで、演奏全体のカッチョ良い疾走感を支えています。

「After the Rain」
John Coltrane(ts)、McCoy Tyner(p)、Jimmy Garrison(b)、Roy Haynes(ds)というメンツでの録音。麻薬療養中だったElvinに代わり、Roy Haynesがドラムを務めています。『Ballads』あたりに収録されていてもピッタリなひたすら美しくリリカルな演奏を堪能できます。ある意味本作のハイライトと言ってもいいくらいの絶品だと思います。

最近のCDにはボーナス・トラックとしてスウェーデン民謡のスタンダード曲「Dear Old Stockholm」が収録されていますが、上記4曲の構成が絶妙と思っている僕にとっては、不要なボーナス・トラックのように思えます。
posted by ez at 03:49| Comment(2) | TrackBack(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
書かれてることにほとんど共感します。
私はこのアルバムを通じてコルトレーンを好きになったようなものなので、
アルバムとしての良さはよくわかります。
Villageのライヴを聴きたいのならコンプリート盤を聴けばいいわけで。
ライヴの2曲の後にある2曲の小品がいいですよね。そして全体の流れがいい。
「Dear Old〜」は私も余計だと思います。
Posted by kofn at 2008年02月18日 14:04
☆kofnさん

ありがとうございます。

僕のような永遠のジャズ初心者にとっては、
長尺ライブ+小品の組み合わせが丁度良い感じですね。

東洋風あり、ブルースあり、モードあり、バラードありと、
録音年の違いを逆手にとったバラエティ感も好きです。
Posted by ez at 2008年02月18日 23:35
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