発表年:2008年
ez的ジャンル:パリ発ジャジーHip-Hop
気分は... :トレビア〜ン!
今回はアナログ盤を通じて既に絶大な人気を誇るHip-Hopプロデューサー・ユニットJazz Liberatorzのデビュー・アルバム『Clin d'oeil』(2008年)です。
ジャジーHip-Hopファンの間では、早くも2008年のベスト・アルバムとの呼び声も挙がるほどの話題作ですね。
Jazz Liberatorzは、パリで結成されたDJ Damage、Dusty、Madhiの3人からなるプロデューサー・ユニット。3人は90年代から活動しているようですね。
まず、2003年にAloe Blacc(Emanon)をフィーチャーした1stシングル「What's Real」をリリースします。その後、Wild Child(Lootpack)とのコラボ・シングル「After Party」(2004年)、Declaimeをフィーチャーした2ndシングル「Music Makes The World Go Round」(2004年)、女性ラッパーT-Loveをフィーチャーした3rdシングル「Force Be With You」(2005年)、元PharcydeのメンバーFatlipをフィーチャーした4thシングル「Backpackers」(2006年)、本アルバムにも収録されている5thシングル「Ease My Mind」(2007年)といったアナログ盤をコンスタントにリリースし、ジャジーHip-Hopファンのハートをガッチリ掴みました。
そして、満を持してリリースするデビュー・アルバムが『Clin d'oeil』です。
元PharcydeのFat Lip & Tre Hadson(Slimkid)、MaspykeのTableek、Crown City RockersのRaashan Ahmad、Lone CatalystsのJ Sands、Brand NubianのSadat X、実力派女性MCのApani B Fly、Black MoonやBoot Camp Clikで活躍したBuckshot、本ブログでアルバム『Soon Come...』を紹介したAsheru等USからのゲストMC陣も充実しています。
僕の中でフレンチHip-Hopと言えば、90年代前半に聴いたMC Solaarあたりを思い出してしまいます。MC Solaarの作品もジャジーなHip-Hopでしたが、Acid Jazz感覚のスタイリッシュな雰囲気が強調されていた気がします。それに対して、Jazz Liberatorzはもっと真正面からジャズにアプローチしている印象を受けますね。
モノクロのジャケをそのまま音にしたようなモノトーンなHip-Hopって感じがします。ちなみにジャケは1970年代の黒人ジャズ・レーベルBlack Jazz Recordsを模したものです。
ジャジーHip-Hop好きの方にとって、マストな1枚と言えるのでは?
全曲紹介しときやす。
「Clin d'oeil」
イントロ的なオープニング...といっても7分以上もありますが(笑)エレピが気持ち良い浮遊感のある前半とパーカッシヴな展開の後半のコントラストがいいですね。次々と有名ジャズ・ミュージシャン達の名前が読み上げられるのを追っていくのも楽しいですね。
「Easy My Mind」
前述の5thシングル。元PharcydeのFat Lip & Tre Hadson(Slimkid)とLAのアングラシーンで活動するMCのOmniをフィーチャー。スピリチュアルな雰囲気の歌モノのメロウ・チューンに仕上がっています。フルートの音色が印象的ですね。アルバムで一番のお気に入り曲です。
「I'm Hip Hop」
Asheruをフィーチャー。 Asheru & Blue Black Of The Unspoken Heard『Soon Come...』(2001年)でかなり完成されたジャジーHip-Hopを聴かせてくれたAsheruですから、Jazz Liberatorzとの相性もバッチリなのでしょうね。 巧みなフロウで軽やかにキメてくれます。
「When The Clock Tics」
J Sandsをフィーチャー。「Easy My Mind」と並ぶお気に入り曲です。以前紹介したPat D & Lady Paradox『Kind Of Peace』あたりに通じるピアノ・ネタの至極のトラックを聴かせてくれます。
「Genius At Work」
Fat Lipと3rdシングル「Force Be With You」にも参加していたT Loveをフィーチャー。跳ね上がる雰囲気のトラックがいい感じです。ヴァイヴの音色がオシャレですね。
「Indonesia」
アルバムからのニューシングルがこの曲。Tableekをフィーチャーした浮遊感たっぷりのミステリアス・チューン。モノトーンな雰囲気の曲が並ぶなかで、この曲だけはハッキリ色がついていますね。しかも、非日常的な色使いって感じがします。
「The Process」
Apani B Flyをフィーチャー。エレガントな雰囲気がいいですね。ヨーロピアン・フレイヴァーな感じがいいですね。
「The Return」
Sadat Xをフィーチャー。僕の中でBrand Nubianは懐かしさしかないんですが、頑張っていますな。この曲はUS産Hip-Hopのテイストに近い気がします。
「U Do」
女性MCのStacy Eppsをフィーチャー。ジャジーHip-Hop好きは安心して聴けるメロウ・チューン。
「Cool Down」
Raashan Ahmadをフィーチャー。タイトルの通り、淡々とクール・ダウンしていく感じです。
「Take A Time」
Buckshotをフィーチャー。70年代クロスオーヴァー・フレイヴァーの浮遊感が好きです。
「Vacation」
J Liveをフィーチャー。このトラックはエレガントですね。シンプルだけど品格が高い感じが好きです。
「Speak The Language」
Lizz Fieldsをフィーチャーした歌モノです。ドラムン・ベース風のリズム・トラックを取り入れたアルバムの中では異質な1曲に仕上がっています。
「Qidar」
Soul Clanをフィーチャー。女性コーラスがキャッチーな渋めのメロウ・チューンに仕上がっています。
「Outro (Let Them Eat Steak) 」
Hip-Hopファンというよりクラブ・ジャズ好きの方向けのアウトロでアルバムは幕を閉じます。
本ブログで紹介したKero One、Pat D & Lady Paradox等がお好きな方には、ぜひオススメ致します。
Hubert Lawsネタのフルートの音色が印象的ですね。アルバムで一番のお気に入り曲です。
突然恐れ入ります。記事拝見しました。私もこのアルバムでは最も秀逸な曲だと思っております。このネタ感とラップのキレがマッチしていて、最高ですね。元ネタを知りたく、探していましたら記事拝見しました。hubert lawsとのことですが、なんという曲なのでしょうか?教えていただけたら幸いです。
ありがとうございます。
Jazz Liberatorz「Easy My Mind」、コメント頂いて久しぶりに聴きましたが、改めて秀逸なトラックだなと実感しました。
さて、本トラックのフルートですが、確かにHubert Lawsネタって書いてありましたね。自分で書いておきながら約9年前の記事なので全く記憶がありません(泣)
改めて所有CDのクレジットを確認してみると、本トラックのフルートはプレイヤーによる生音でした。何を勘違いしたのか今となっては思い出せませんが、いずれにしても僕の事実誤認だと思います。記事も修正しておきました。趣味のブログで昔の記事を改めて精査することないので、誤りを訂正する良き機会となりました。ありがとうございました。