録音年:1962年
ez的ジャンル:ジャズ・ギター見本市系ライブ
気分は... :満員御礼
今回はジャズ・ギターの第一人者Wes Montgomeryの紹介です。
Wes Montgomery(1925-68年)と言えば、親指ピッキング、オクターヴ奏法等ジャズ・ギターの道を切り開いた唯一無二のジャズ・ギタリストですね。
以前にWynton Kelly Trioとの共演というかたちで『Smokin' At The Half Note』(1965年)を紹介しましたが、Wes Montgomery単独名義でのアルバムを紹介するのが今回が初めてとなります。
Wesの代表作と言えば、『Incredible Jazz Guitar』(1960年)か『Full House』(1962年)のどちらかだと思いますが、今回は『Full House』をセレクト。
本アルバムは、1962年6月25日にバークレーにあるコーヒーハウスThe Tuzbo Houseでのライブ録音です。ライブ会場が"壺ハウス"というのが日本人にはウケますね(笑)
メンバーは、Wes Montgomery(g)、Johnny Griffin(ts)、Wynton Kelly(p)、Paul Chambers(b)、Jimmy Cobb(ds)という5人。当時Miles Davisのリズム・セクションを務めていた3人に、僚友Griffinを加えた編成になっています。前述の『Smokin' At The Half Note』もWesとKelly、Chambers、Cobbの共演というかたちでしたね。
かねてから、レコード会社もWes本人もライブ・アルバムの制作を熱望しており、そのメンバーとして、同じLionel Hampton楽団出身のGriffin、1961年に『Bags Meets Wes!』(Milt JacksonとWes Montgomeryの共演アルバム)のレコーディングで一緒だったKellyあたりに白羽の矢が立ったようですね。
そんな中で、Miles Davisのツアーでカリフォルニアに居たKelly、Chambers、CobbとGriffinが一堂に会する好機を得て、Wes自身が段取りし、レコーディングの場としてセッティングされたのがThe Tuzbo Houseでのライブとなった模様です。
Wesと4人のメンバーの相性はバッチリで、人選の妙で勝負有り!といった感じの白熱ライブとなっています。
ちなみにアルバム・タイトルには、ライブの満員御礼とポーカーのフルハウス(Wes & GriffinのペアとKelly、Chambers、Cobbのスリー・カード)という2つの意味があるらしいです。
全曲紹介しときやす。
「Full House」
タイトル曲はWes のオリジナル。軽快に飛び跳ねるジャズ・ワルツに仕上がっています。ラテン・フレイヴァーのイントロに続き、印象的なテーマが演奏され、Wes、Griffin、Kellyのソロへと突入します。Wesがシングル・トーン〜オクターブ奏法でキメてくれた後に、Griffinのハイテンションなテナーで盛り上げ、最後にKellyのピアノがしっかりまとめてくれます。
「I've Grown Accustomed to Her Face」
ミュージカル『My Fair Lady』の挿入歌(Frederick Loewe/Alan Jay Lerner作品)。Wes、Chambers、Cobbの3人で優しくロマンティックな演奏を聴かせてくれます。Wesの包み込むようなギターに耳を傾けましょう。
「Blue 'N' Boogle」
Dizzy Gillespie/Frank Paparelliによるスタンダード。Miles Davisの演奏(アルバム『Walkin'』収録)も有名ですよね。ここではスピード感あふれるスリリングな演奏を聴かせてくれます。WesもKellyもハイ・スピードで一気に駆け抜けていきます。さらに後半のテナー&ドラム、ギター&ドラム、ピアノ&ドラムの白熱した掛け合いで大盛り上がりです。
「Cariba」
この曲はWesのオリジナル。タイトルは「カリブ」のことを言っているのでしょうね。ラテン・テイストの陽気なファンキー・ジャズに仕上がっています。個人的にはアルバムで一番のお気に入りです。基本的にこの手の小洒落たラテンものに弱いんですよね(笑)Chambersのベースがなかなか目立っています。
「Come Rain or Come Shine」
ミュージカル『St.Louis Woman』挿入歌(Johnny Mercer/Harold Arlen作品)。本ブログではBill Evans Trio『Portrait In Jazz』、Dinah Washington『Dinah Jams』でも紹介しているので、お馴染みのスタンダードですよね。
本バージョンは、軽やかなアップのりの演奏が繰り広げられています。Wesのソロを堪能するには、技の見本市のようなギター・プレイを披露してくれる本曲が最適なのでは?
「S.O.S.」
最後はWesのオリジナル。「Cariba」と並ぶ僕のお気に入りです。ハイ・スピードでファンキーな演奏はカッチョ良いですね。WesのギターとGriffinのテナーの絡みがサイコーですね。もし、壺ハウスでこんなエキサイティングな演奏を聴いたら、卒倒しちゃいそうですね。
CDはボーナス・トラックとして、「Cariba」、「Come Rain or Come Shine」、「S.O.S.」の別トラックと「Born to Be Blue」(Mel Torme/Robert Wells作品)が収められています。
個人的には、『Incredible Jazz Guitar』(1960年)、『Full House』(1962年)、『Smokin' At The Half Note』(1965年)といった代表作に加えて、CTIに移籍した晩年の作品『A Day In The Life』(1967年)も好きですね。イージー・リスニング・ジャズということで、ジャズ評論家やコアなジャズ・ファンから批判の的となるアルバムですが、僕はその親しみやすさに魅力を感じます。
次にWesを紹介する時は『A Day In The Life』にしますね。