発表年:1991年
ez的ジャンル:Acid House系ドラッギー・ロック
気分は... :太陽よりも高く...
僕はいつ頃からRockの新譜をあまり聴かなくなったのだろう?
僕が洋楽を本格的に聴くようになったのは中学生からだ。中学・高校時代の僕の音楽の中心はRockだった。そして、大学生になってからR&B/Soulにハマるようになった。それでも、RockとR&B/Soulの割合は半々ぐらいだったかなぁ。社会人になると、Hip-HopやHouseという新たな音楽ジャンルが加わり、ワールド・ミュージックの流れでレゲエやアフリカ、南米、アジアの音楽も聴くようになった。さらに20代後半から急にJazzに目覚めてしまい...今ではRockの新譜を購入することは年10枚にも満たない。
と言うことで、僕のRock離れが進みはじめたのは90年代に入ってからだと思う。きっとそのキッカケを作ったのがPrimal Scream『Screamadelica』だ。これは『Screamadelica』が退屈なアルバムという意味ではない。あまりにこのアルバムのインパクトが強く、それ以降他のRockアルバムに物足りなさを感じるようになったのだ。特に、UKロックに限って言えば、1997年にRadiohead『OK Computer』が出るまでかなり空白期間が長かった気がするなぁ。
『Screamadelica』は、Primal Screamの3rdアルバムであり、1stではメランコリックなサイケ・ネオアコ、2ndではガレージ・ロックを披露した彼らが、当時のAcid Houseムーブメントを取り入れた問題作であり、ロック・カルチャーとダンス・カルチャーの融合を見事に提示してみせた。リーダーのBobby Gillespieには、60年代のロックスターに共通するものを感じるよねぇ。
オススメ曲を紹介しときやす。
「Movin' On Up」
スワンプ&ゴスペル&ドラッギーという陶酔ナンバー。Rolling Stonesのプロデューサーとして有名なJimmy Millerがプロダクション、ミックスで参加している。うまく表現できないけど、この土臭いトリップ感を初めて聴いた時に多少戸惑った記憶がある。
「Slip Inside This House」
60年代後半に活躍した元祖サイケ・ロック・グループ13th Floor Elevatorsの代表曲のカバー。見事に60年代サイケ・ロックをアシッド・ハウスとして甦えらせている。
ちなみに13th Floor Elevatorsというグループ名には、存在しない13階へ行くトリップできる音楽という意味が込められている。その意味では、Primal Screamによるこのカバーも確実に13階へ辿り着くことであろう。
「Don't Fight It, Feel It」
もはやRocKの曲とは呼べない完全なトリップ・ミュージック。Acid Houseムーブメントの中心人物Andrew Weatherallのプロデュース曲。ヤバさと高揚感が同居してる。
「Higher Than The Sun」
こちらもUKテクノ/ハウスの重鎮The Orb(Alex Paterson)のプロデュースによる、とってもダビーかつサイケな曲。当時のアシッド・カルチャーを象徴する1曲だと思いマス。太陽よりも高い所へ...でもそこへ行ってどうなるのだろう。
「Come Together」
「Loaded」
Andrew Weatherallプロデュースによるアルバムを代表するグルーヴィーかつアーシーかつドラッギーな2曲。「Come Together」は、「Movin' On Up」同様にゴスペル・フィーリング溢れる女性コーラス隊がハッピーな高揚感を高めてくれる。そのハッピーさと裏腹に儚さも感じる不思議な曲。「Loaded」はスワンプなダブ・ナンバー。僕がこのアルバムで一番ハマったのはこの「Loaded」だったなぁ。ホント、キケンな曲でした。
年齢を重ねるに従い、音楽に安らぎや心地良さあるいはメロウネスを求めることが多くなり、そうした気分とRockがミスマッチを起こしやすいが、こんな刺激的なRockならばこれからも聴き続けるであろう。そんなRockアルバムの出現を期待したい。