発表年:1982年
ez的ジャンル:アーバン系メロウ・ソウル
気分は... :修行が足りん!
今週初めに紹介したWebster Lewisつながりで、彼がプロデュースしたMichael Wycoffの人気作『Love Conquers All』(1982年)を紹介します。このアルバムも今年に入って再発されたので入手しやすくなっています。
Michael Wycoffは1956年カリフォルニア生まれのソウル・シンガー。
シンガーのイメージが強いですが、元々はセッション・ピアニストとして鳴らしており、若い頃からNatalie Cole、D.J. Rogers、Phoebe Snow等のセッションに参加していたようです。1976年には本ブログでも紹介したStevie Wonderの名作『Songs In The Key Of Life』に参加しているそうです(恥ずかしながら、全然知りませんでした)。
1978年にマイナー・レーベルで「Do The Camel Hamp」というシングルをリリースした後、1979年にRCAとの契約に成功します。こうしてRCAでデビュー・アルバム『Come To My World』(1980年)、2nd『Love Conquers All』(1982年)、3rd『On The Line』(1983年)という3枚の作品を残しています。
しかし、『On The Line』からのシングル「Tell Me Love」がR&Bチャートの第23位になった程度のヒットにしか恵まれず、次第にMichael Wycoffの名は音楽シーンから忘れ去られてしまいます。
それが90年代に入り突如再評価されるようになります。本ブログでも紹介した女性デュオZhaneの大ヒット・デビュー・シングル「Hey Mr. D.J.」で『Love Conquers All』収録の「Looking Up To You」がサンプリングされていたのです。その直後にフリーソウル・シーンでも「Looking Up To You」が人気曲となり、Michael Wycoffの名はソウル・マニア以外にも知られる存在となりました。
僕もZhane「Hey Mr. D.J.」〜フリーソウル経由で本CDを購入した次第です。その後CDが廃盤となり、入手困難な状況が長く続いていましたが、めだたく今回再発され入手しやすい環境となりました。
プロデュースは前述の通り、Webster Lewisが担当し、David T. Walker(g)、EW&FのAl McKay(g)、Nathan Watts(b)、James Gadson(ds)、Fred Wesley(tb)等の腕利きミュージシャンがバックを固めています。また、「Can We Be Friends」ではEvelyn "Champagne" Kingとデュエットしています。
中身はアーバン・メロウが中心ですが、80年代ならではのファンク・ナンバーもあり、80年代の男性ソウル・シンガー・ブームの先駆け的な作品として楽しめると思います。
その後のKashif、Freddie Jacksonの活躍を考えると、登場するのが数年早過ぎたのかも?
全曲紹介しときやす。
「Still Got the Magic (Sweet Delight) 」
80年代らしいアーバンな雰囲気のミディアム・ファンク。80年代サウンド好きの方にとっては、Webster Lewisプロデュースだし、このタイプがもう1曲ぐらい欲しいかもしれませんね。
「Looking Up to You」
前述のMichael Wycoff再評価のきっかけを作った人気曲。Zhane「Hey Mr. D.J.」を90年代クラシックに押し上げた極上のメロウ・トラックは一度聴いたら忘れられないですよね。
この曲のソングライティングはLeon Ware & Zane Greyという強力タッグです。“ミスターメロウネス”Leon Wareは皆さんご存知だと思いますが、もう一人のZane GreyもLen Ron HanksとのコンビGrey & Hanksとして、LTD、Tavares、Norman Connors、Breakwater等に楽曲提供しています。
「Love Is So Easy」
ヴォーカリストMichael Wycoffを堪能するには、この正統派ソウル・バラードあたりもいいのでは?
「Can We Be Friends」
レーベル・メイトEvelyn "Champagne" Kingとデュエット曲。当時Kashifプロデュースの「Love Come Down」が大ヒットしていたEvelyn Kingですから、なかなか聴きものなのでは?
「Diamond Real」
このディスコ・テイストのダンス・チューンは、A Taste Of Honeyとの競作曲です。A Taste Of Honeyヴァージョンは、アルバム『Ladies Of The Eighties』(1982年)に収録されています。 両者を聴き比べてみるのも面白いのでは?
「Love Conquers All」
男性ソウル・シンガーMichael Wycoffの魅力が最も溢れているのはビター・スウィートなこのタイトル曲かも?
「Take This Chance Again」
「Looking Up to You」に次いで好きな作品がこのWebster Lewis作品です。Rockie Robbins「You and Me」あたりに通じるアーバン・メロウな味わいがたまりませんなぁ。
「It's Over」
僕の持っているCDのライナーノーツによると、Michael Wycoffの敬愛するヴォーカリストとしてDonny Hathawayの名が挙がっていましたが、確かにこの荘厳なバラードを聴くと納得できますね。
本作を気に入った方は、Webster Lewisがプロデュースしたもう1枚『On The Line』(1983年)もどうぞ!きっとリアルタイム派の方は、本作『Love Conquers All』以上に思い入れがあるのでは?
ありがとうございます。
「Dancin'」や「You Fooled Me」はいいですねぇ!
ぜひCD化して欲しいです。