発表年:1973年
ez的ジャンル:Isleysファンク時代の幕開け
気分は... :3+3=∞
The Isley Brothersの7回目の登場です。
R&Bグループでは最多の登場回数になります。
これまで下記の6枚を紹介しました(エントリー順)。
『Between The Sheets』(1983年)
『The Heat Is On』(1975年)
『Baby Makin' Music』(2006年)
『The Isleys Live』(1973年)
『Winner Takes All』(1979年)
『Givin' It Back』(1971年)
今回紹介するのはIsleys70年代黄金期の1枚『3+3』(1973年)です。
アルバム・タイトルの通り、本作よりErnie Isley、Marvin Isley、Chris Jasperの楽器隊3名が正式にメンバーに加わり、O'Kelly Isley、Rudolph Isley、Roland Isleyのヴォーカル隊と合わせて「3+3」体制となりました。「3+3」体制は『Between The Sheets』(1983年)まで続き、ファンク・グループとして不動の地位を築いていきます。
基本的にIsleysはどの作品も好きですが、やはり「3+3」時代こそがIsleysの黄金期ですよね。
特に70年代の作品はどれも甲乙つけがたい名盤ばかりだと思います。
その中でも本作『3+3』は、『The Heat Is On』あたりと並び支持の高い1枚なのでは?
「3+3」体制の第1弾となる記念碑的作品でもあり、メンバーの意気込みと自信が伝わってくる仕上がりだと思います。
実際には、「3+3」のメンバー6名にGeorge Moreland(ds)、Truman Thomas(org)が加わった「3+3(+2)」体制でレコーディングされています。
全9曲中5曲がオリジナル、4曲がカヴァー(全て白人アーティスト)という構成です。
オリジナル曲では、新生Isleysならではのサウンドに着目です。
本作以降ロック感覚のファンク・サウンドで独自のスタイルを構築していく彼らですが、演奏面でまず目立つのはErnieのギターですよね。ホーンレスということもありますが、ロック・グループか?と錯覚するほど派手にギターを弾きまくっています。
あと忘れてはいけないのがChris Jasperのキーボードです。それまでのピアノ主体の演奏に、エレピ、クラヴィネット、ムーグも加えて、サウンドの表情を豊かにしています。この貢献はかなり大きいのではと感じます。
カヴァー曲では、白人アーティストの楽曲を、まるでIsleysオリジナルのように聴かせてしまう変貌ぶりに注目です。
白人アーティストに積極的に接近しながらも最終的はIsleys流に仕上げてしまう様は、フレンチ、イタリアンの食材を使いながらも最後は完璧な和食に仕上げてしまう一流料理人のようですね。
全曲紹介しときやす。
「That Lady」
1964年にリリースした 「Who's That Lady」 のリメイク。アルバムからの1stシングルとして、全米ポップ・チャート第6位、同R&Bチャート第2位のヒットを記録しています。「If You Were There」、「The Highways Of My Life」と並ぶ本作のハイライトだと思います。
新生Isleysを象徴するド派手でセクシーなファンク・チューンに仕上がっています。バック・バンド隊の正式メンバー昇格を強烈に主張するかのようなErnieのギターが秀逸ですね。
DesiというR&Bアーティストがカヴァーしています。またBeastie Boys「A Year and a Day」のネタにもなっています。
「Don't Let Me Be Lonely Tonight」
James Taylorのカヴァー(アルバム『One Man Dog』収録)。前回紹介した『Givin' It Back』でも「Fire and Rain」を取り上げていましたね。Isleysならではの濃度の高いメロウ・ソウルに仕上げています。素朴なオリジナルも好きですが、濃厚なIsleysヴァージョンに愛着があります。Eric Claptonも本曲をカヴァーしていますが、Isleysヴァージョンがベースになっています。
「If You Were There」
シュガーベイブ「DOWN TOWN」にインスパイアを与えた曲と有名ですね。フリーソウル・クラシックとしても大人気でした。僕もこの曲が一番好きですね。Isleysらしからぬ爽快さが魅力です(笑)。そう言えば、Whamもカヴァーしていました!George Michaelってセンス良いのかも?
「You Walk Your Way」
アーシーでイナたいソウル・チューン。Chris Jasperのオルガンがいい味出しています。Mario「Nikes Fresh Out The Box」の元ネタ。
「Listen to the Music」
The Doobie Brothersの名曲カヴァー。ここでは人気曲「Work to Do」(『Brother, Brother, Brother』収録)に似た雰囲気でカヴァーしています。
「What It Comes Down To」
アルバムからの2ndシングルとして、R&Bチャート第5位となりました。「If You Were There」タイプのワウワウ・ギターが効いたライト・グルーヴに仕上がっています。でも、本曲をシングル・カットするならば、「If You Were There」をカットすれば良かったのに!と思う人は僕だけではないのでは?
「Sunshine (Go Away Today)」
フォークシンガーJonathan Edwardsのカヴァー。本作の中では語られることの少ない曲ですが、フォーク・ナンバーをIsleysのオリジナルとしか思えないように仕上げてしまうあたりはさすがだと思います。先に述べたChris Jasperの各種キーボード・サウンドがダークな雰囲気を醸し出していてグッドです。
「Summer Breeze」
Seals & Crofts1972年のヒット曲のカヴァー。このIsleysヴァージョンもシングル・カットされ、R&Bチャート第10位のヒットとなっています。Seals & Croftsのオリジナルはタイトル通りの爽やかな名曲だと思いますが、Isleysヴァージョンも彼ららしい濃い味付けでオリジナルとは異なる魅力に溢れています。
Isleysヴァージョンに触発されたカヴァー、サンプリングも多くあります。Main Ingredient、Nicki Richardsによるカヴァーは、Isleysヴァージョンを意識したものでしょうね。また、2pac「Confessions」、DJ Shadow「Midnight in a Perfect World」等のサンプリング・ネタにもなっています。Alicia Keys「Slow Down」でもフレーズが引用されていますね。
「The Highways Of My Life」
3+3時代のアルバムが好きな理由の1つが、「For the Love of You」、「At Your Best (You Are Love)」等に代表されるメロウネスたっぷりの絶品スロウが必ず収録されている点です。本曲はその先駆けとなった曲ですね。Ronaldのヴォーカルが絶品なのは勿論のこと、Chris Jasperの甘く切ないムーグの音色にうっとりですな。
本ブログでも紹介したBlack Sheep「Without A Doubt」をはじめ、Major Stress「More And More」、DJ Jazzy Jeff「The Definition」、Fantasia「Truth Is」、Mashonda「Lonely」等のサンプリング・ネタとしても有名な曲ですね。Marilyn Scott等のカヴァーもあります。
本作に限らず、70年代の「3+3」体制アルバムは外れナシだと思います。