発表年:1997年
ez的ジャンル:タブ系オルタナ・ロック
気分は... :やっぱり危険な香りがいいですな...
結構バタバタしていて2日間更新をサボってしまいました。
Bobby Gillespie率いるPrimal Screamの3回目の登場です。
『Riot City Blues』(2006年)以来2年ぶりの新作『Beautiful Future』のリリースが間近のPrimal Scream。45歳になったBobby Gillespieが今でもヘロヘロの悪ガキしているのは嬉しいのですが、個人的には『Screamadelica』(1991年)、『Vanishing Point』(1997年)、『Xtrmntr』(2000年)、『Evil Heat』(2002年)の4枚が好きですね。
これまで『Screamadelica』、『Evil Heat』の2枚を紹介してきましたが、今回はダビーなアルバム『Vanishing Point』の紹介です。
70年代前半のStonesのように南部ロックへ接近した『Give Out But Don't Give Up』(1994年)は、ヒットしたもののファンの間でも賛否両論が巻き起こりましたね。個人的には70年代前半のStonesやスワンプ・ロックも好きなので、それなりに気に入りましたが、確かにPrimal Screamでなければ創れないサウンドではありませんでしたね。
その意味ではダブの要素を大きく取り入れた本作『Vanishing Point』は、本来のPrimal Screamが戻ってきた感じがしましたよね。
全編に渡るダブの影響が話題になるアルバムですが、僕にとってダブの導入云々はあまり重要ではなく、危険な香りのPrimal Screamが戻ってきたのが嬉しかったですね。
このグループ(というかBobby Gillespie)には"ヘロへロだけど刺激的!"なものを期待しているので、そういった魅力が堪能できるアルバムになっていると思います。
本作から元Stone Rosesの"Mani"ことGary Mounfield(b)と元 Jazz ButcherのPaul Mulreany(ds)がメンバーに加わっています。特にManiの加入は話題でしたね。
他にレゲエ界の大物Augustus Pablo、元Young DisciplesのMarco Nelson、Sex Pistolsのオリジナル・メンバーGlen Matlock等がゲスト参加しています。
本作に関連する2本の映画があります。
最初の1本は、Richard C. Sarafian監督、Barry Newman主演によるアメリカン・ニューシネマ『Vanishing Point』(1971年)です。警察の制止を振り切りデンバー〜カリフォルニアを平均時速200kmの猛スピードで暴走する男を描いています。
この映画からスピード、セックス、暴走といったイメージを受けたBobby Gillespieは、アルバム・タイトルをスバリ『Vanishing Point』とし、1stシングルは映画の主人公の名前をタイトルにした「Kowalski」となりました。
バニシング・ポイント
もう1本は、Danny Boyle監督、Ewan McGregor主演のイギリス映画『Trainspotting(トレイン・スポッティング)』(1996年)です。スコットランドを舞台にヘロイン中毒の若者達の日常を描き、当時若者から大きく支持された映画でしたね。映画と同時にサントラも人気になりました。このサントラへの提供曲「Trainspotting」が本作にも収録されています。
トレインスポッティング 特別編
アルバムと一緒にこれら2本の映画を鑑賞すると、さらに楽しさが増すと思います。
オススメ曲を紹介しときやす。
「Burning Wheel」
サイケ感覚のダビー・チューン。この曲を聴いて、『Screamadelica』のPrimal Screamが戻ってきたと思いましたね。アルバムからの3rdシングルにもなりました。
「Get Duffy」
ダブのフィルターを通過してきた叙情的なインスト。かなり映画のサントラっぽい仕上がりですね。
「Kowalski」
アルバムからの1stシングルとして、UKシングル・チャート第8位のヒットとなりました。前述のようにタイトルは映画『Vanishing Point』の主人公の名前からつけたものです。その映画『Vanishing Point』からラジオDJの声をサンプリングして使っています。
本作のダビーな雰囲気が最も顕著な1曲です。この危うさこそがBobby GillespieやPrimal Screamらしさだと思います。ファンも納得の1曲です。Maniのベースも強力です!
「Star」
アルバムからの2ndシングル。Augustus Pabloのメロディカがフィーチャーされたダウナーな1曲。ほのぼのとしたメロディカ+へヴィーなダブ・サウンド+Memphis Hornsメンバーによる泥臭いホーンというゴッタ煮が結構いい味出しています。この虚しいチル感覚がいいですね。1999年に死去したPabloのメロディカの音色が胸に染みてきます。
「If They Move, Kill 'Em」
個人的には一番のお気に入り曲はインストです。こういうトリップ感覚の曲に弱いんですよね。
「Stuka」
この曲もかなりダビーですね。その意味ではかなり聴きものと言えるかもしれません。トランス状態になりたい方向けの仕上がり。
「Medication」
「Stuka」から一転してストレートなロック・チューン。この曲は『Give Out But Don't Give Up』の流れですね。アルバム全体がコレだと飽きるけど、1曲だけならカッチョ良いですな。Glen Matlockがベースで参加。
「Motorhead」
ヘヴィメタル・グループMotorheadのカヴァーをするというのは意外ですね。エッジの効いたガレージ・ロックをデジタルに仕上げた感じです。
「Trainspotting」
前述の映画『Trainspotting』への提供曲。Andy Weatherallがプロデュースしています。トリップ・ホップ・テイストのダビーなインストです。
「Long Life」
Gillespieのヘロヘロ・ヴォーカルが虚しく響くダビーな1曲。全然長い人生を送れる気になれない雰囲気です(笑)
本作を購入したい方は7月に紙ジャケ仕様のものが発売される予定なので、そちらを待つのも手かもしれません。
また、姉妹アルバムとして本作のリミックス・アルバム『Echo Dek』があります。Adrian Sherwoodがリミキサーを手掛けた、この全編ダブのアルバムも当時話題になりましたね。ご興味のある方はどうぞ!
Echo Dek