発表年:1999年
ez的ジャンル:運命の子系女性R&Bグループ
気分は... :汝、誘惑に屈することなかれ!
"「デスチャ」"の愛称でお馴染みの女性R&BグループDestiny's Childの紹介です。
21世紀に入ってから最も人気のあった女性R&Bグループかもしれませんね。
Destiny's Childは、Beyonce(Beyonce Knowles)を中心にLaTavia(LaTavia Roberson)、Kelly(Kelly Rowland)、LeToya(LeToya Luckett)の4人で結成されたグループ。4人全員1981年生まれであり、結成当時はみんなまだ小学生だったんですね。聖書から引用したグループ名を命名したのは、Beyonceの父親でありグループのマネジャーでもあったMathew Knowlesです。
Christina AguileraやTLCのツアーの前座を経験した後、1998年にシングル「No, No, No」(Wyclef Jeanプロデュース)でデビュー。その後2005年の解散まで人気女性R&Bグループとして多くのヒット曲と絶大な人気を誇りました。その後、リーダーのBeyonceがソロでも大成功を収めたことは皆さんご存知だと思いマス。
こうしたポップ・アイコン的なR&Bアーティストの作品って、一定年齢以上のコアなR&Bファン(特に男性)からは敬遠されがちですよね。僕もある時期そうでしたが、5〜6年前あたりから反省して聴くようになりました。これが案外悪くないし、若い女性との会話もはずむし、変な先入観を持たずに聴くと良いことが沢山あると思います(笑)
デスチャの場合、日本でもお馴染みのタイトル曲を含む3rdアルバム『Survivor』(2001年)やラスト・アルバムとなった『Destiny Fulfilled』(2004年)あたりの印象も強いですが、個人的には今日紹介する『The Writing's On The Wall』(1999年)がベストの作品だと思います。
前述のデビュー・シングル「No, No, No」が全米ポップ・チャート第3位、R&Bチャート第1位の大ヒットとなったものの、デビュー・アルバム『Destiny's Child』(1998年)は全米アルバム・チャート第67位と振るわず、起死回生を狙って制作されたのが本作『The Writing's On The Wall』です。
アルバム・タイトルは「モーセの十戒」をモチーフにしたものであり、"汝、誘惑に屈することなかれ!"といった彼女たちの戒律(?)と関連づけられているのだそうです。
そうしたコンセプトに基づき、その後のデスチャやBeyonceのイメージを形成する、男性に屈しない強い女性像が描かれているのが印象的です。この強い女性像こそが多くの女性から支持を得たのでしょうね。
サウンド面では、TLC「No Scrubs」の大ヒットで注目されつつあったプロデューサーKevin "She'kspere" Briggsの抜擢がポイントだと思いマス(全16曲中5曲をプロデュース)。刺激的なスピード感とエレガントさが同居するバロック調サウンドは、最強グループを目指したデスチャのイメージと見事にハマった気がします。
それ以外にRodney "Darkchild" Jerkins、Missy Elliott/Timbaland、Dwayne Wiggins(Tony! Toni! Tone!)、Daryl Simmons等がプロデューサーとして参加しています。そんな顔ぶれに混じって、当時17歳のBeyonceも数曲でプロデュースも手掛けています。次作『Survivor』でプロデューサーとしての手腕を大々的に発揮するBeyonceですが、その才能の片鱗を既に見せています。
結果として、「Bills, Bills, Bills」、「Bug A Boo」、「Say My Name」、「Jumpin, Jumpin」という4曲のヒット・シングルが生まれ、アルバムも全米アルバム・チャート第5位のヒットとなりました。
21世紀の女性R&Bグループの方向を示した重要アルバムとして見逃せない作品だと思いマス。
オススメ曲を紹介しときやす。
「So Good」
She'kspereプロデュース曲。She'kspereらしいトラックがいいですね。ヴォーカルのプロダクションがなかなか面白くて好きです。今聴くと♪ソ〜ソ〜♪グッグッグッグ〜♪の部分で、思わずポーズをとるエドはるみの姿を思い浮かべてしまいます(笑)
「Bills, Bills, Bills」
She'kspereプロデュースによるアルバムからの1stシングル。全米ポップ・チャートNo.1の大ヒット曲。一世風靡したバロック調のShe'kspereサウンド、男性に屈しない強い女性を描いた歌詞と、その後の女性R&Bの流れを作り、デスチャのイメージを確立した重要曲ですね。
「Bug A Boo」
アルバムからの2ndシングルとして全米R&Bチャート第1位となりました(ポップ・チャートでは最高位33位)。Toto「Child's Anthem」をサンプリングしたドラマティックなトラックが印象的ですね。She'kspereプロデュース。
「Temptation」
Tony! Toni! Tone!のDwayne Wigginsプロデュース。かなり好きな1曲。ティーンズ・グループとは思えない、お色気たっぷり誘惑しまくりの美メロ・スロウです。
「Now That She's Gone」
Ken "K-Fam" Fambro/Donnie "D-Major" Boyntonプロデュース。アップものに注目しがちですが、こういったじっくり聴かせる曲もいいですよね。恋に揺れる10代の女の子らしい雰囲気ですが、最後に"あなたとはお終いよ"とバッサリ切り捨てるあたりがデスチャらしいかも(笑)
「Hey Ladies」
She'kspereプロデュースのアップ・チューン。リズム・トラックがなかなかカッチョ良いと思いマス。どうしても本作はShe'kspere絡みの曲が目立ってしまいますね。
「If You Leave」
男性R&BグループNextをフィーチャー。合コン・モードといった感じ...なわけないですね(笑)
「Jumpin, Jumpin」
アルバムからの4thシングルとして全米ポップ・チャート第3位のヒットとなりました。僕の中では「Bills, Bills, Bills」と並びデスチャのイメージを強く印象付けた1曲ですね。Missy Elliott/Timbalandあたりのプロデュースと錯覚しそうなチキチキ・サウンドをバックに、たたみかけるヴォーカルで迫ってきます。夜遊びモードの女の子たちは積極的ですな(笑)実際にはBeyonce自身がプロデュースに参加しています。リミックスにはBow Wow、Jermaine Dupri、Da Brat等がフィーチャーされています。
「Say My Name」
Rodney "Darkchild" Jerkinsプロデュースの人気曲。アルバムからの3rdシングルとして全米ポップ・チャート、R&Bチャート共に第1位となり、2001年のグラミーでもBest R&B Performance、Best R&B Songの2冠に輝きました。Rodney Jerkinsらしい哀愁トラックでBeyonceの魅力をうまく引き出していると思います。
「She Can't Love You」
元カレの新しい恋人に対して"彼女の愛が私の愛に勝てるわけがないわ!"と歌う哀愁モードのスロウ。女性は強し、怖しですな(笑)She'kspereプロデュース。
「Stay」
胸キュン・スロウがお好きな方にオススメ。Beyonceが感動的なヴォーカルを聴かせてくれます。Daryl Simmonsプロデュース。
「Sweet Sixteen」
Dwayne Wigginsプロデュースの2曲目。トニーズ系のナチュラルな仕上がりです。彼女たちに"まだ16歳なの"なんて歌われてもねぇ...(笑)Diana Ross「Theme From Mahogany (Do You Know Where You're Going To)」ネタ。
「Get on the Bus」
インターナショナル盤のボーナス・トラック。Missy Elliott/Timbalandプロデュース(Timbalandはラップでも参加)。元々はHalle Berry主演の映画『Why Do Fools Fall in Love』(1998年)のサントラ収録曲です。
商業的な大成功を収めたデスチャですが、それと逆行するようにグループ内部ではゴタゴタ続きに。Beyonceばかりが脚光を浴びることに不満を持ったLaTaviaとLeToyaが本作を最後にグループを脱退し、新たにMichelle(Michelle Williams)とFarrah(Farrah Franklin)の2人が加入します。しかし、生活態度に問題アリのFarrahは数ヶ月でグループを脱退してしまい、その後はBeyonce、Kelly、Michelleの3人体制となります。
こうしたゴタゴタを糧に一回り大きく成長し、制作面も含めて自らの才能に対する自信を深めていくBeyonceに凄みを感じますね。そのあたりが1stソロ『Dangerously In Love』(2003年)に反映されていると思います
ありがとうございます。
この頃からBeyonceに注目していたなんて、さすがけんさんですね。
僕はまだまだBeyonceを甘く見ていました(笑)笑顔なしに前を見据えるBeyonceの表情は、10代とは思えない迫力がありますね。